キーファーとデミアン・ハーストの新刊
過日、東京オペラシティにてこの記事に書いた通り一時間以上時間が余ってしまったんで、ヒマつぶしに同じビル内をフラフラしていた。
で、アートギャラリー横のアートショップに入ったら、なんとアンゼルム・キーファーの画集がドーンと置いてあるじゃないですか。
それが、なんと金一万六千円ナリ! 判型はさほど大きく大きくはないのだが、すごく分厚くて重い。漬け物石にちょうどいいくらいだ(^o^; また、振り上げて人間の頭にぶつけたら凶器にも使えそう。
当然洋書なのだが、冒頭に解説と後ろの方に一問一答があるぐらいで、他のページは全て作品の図版ばっかり。初期から最新の2007年の展覧会作品までバッチリ収録されている。
冒頭のページにある、「メランコリア」に出てきてた変なガラスの立体や枯れた草木がぼんやりと煙ったような空間に展示してあるのが、なんだか面白そう。実際に見てみたいもんだ。
で、欲しくなってしまったが、ううう……値段高過ぎだー(T^T)クーッ それにたとえ金を捻出したとしても、こんな分厚い本を全部眺めるヒマはないだろう。
それから、デミアン・ハーストの作品集もいくつか飾ってあった。
最近、美術雑誌で紹介されていた記憶があるのが”New Religion”というヤツ(展覧会の図録かも)。
旧約・新訳聖書の様々なエピソードをサプリメントや食品の広告のような形式で表現したものである。冒頭にイエスの遺体の図版があって、槍で刺された傷口やら心臓のアップ写真を配置したレイアウトはまるで最新のカラー図解医学書のようだ。
また様々な聖者は錠剤で示され成分表示で○○パーセントなどと示されている。三位一体は立体的な円グラフを使い、矢印で「精霊33.3パーセント」なんて企業の売り上げグラフみたい。
「イエスの十字架上の死」に至っては「天然果汁100パーセント!」風のジュースの広告になっているのである。
それら全てが、洗練された色彩・レイアウト・デザインになっている。各作品を並べたページが途中にあるのだが、まるで企業の紹介パンフか製品カタログのようなのだ。
それをズラーッと眺めると天地創造からイエスの復活あたりまでひと目でわかる巨大広告のようでもある。
もし、これがもうちょっとごちゃごちゃしたデザインでケバい色彩だったら、まるで週末に新聞と一緒に入ってくるドラックストアの大判チラシのようになるだろう。「本日超格安!ペテロの否認がなんと2割引、ヨハネ大量入荷」なんて感じだ。
成分表やグラフで示された「聖者」や「奇跡」は極めて表層的でありながら同時に本質的である。表現形式は全くノイズのない洗練された統一性によるものだが、受け手に与えるイメージは多彩で内部で様々に輻輳することだろう。
かようにツルツルピカピカしてキレイで極めて冒涜的な作品集なのだ。
値段はいくらなのかなーと思って表紙を見てみると、7300円……(黙って棚に戻す)。
その後、バッハの『ヨハネ受難曲』公演を聴きながら、色々考えてしまった。
過去にラテン語の聖書を自国語に訳し、さらに印刷して本にするという最新メディアを使用したり、あるいは教会という最も身近なメディア(多数の人々が集まる)を通して音楽に乗せて常時これらの物語が伝えられてきたのなら、それが今パワーポイントによるプレゼンテーションやドラッグストアの広告チラシになったとしても何の不思議があるだろうか。
バッハの音楽は現在でも有効である。果たして数世紀後にはどのようなメディアが聖書を語っているのだろう。
ところで、今年日本に彼のあの有名な輪切り牛--じゃなくって、縦断牛?が来るというウワサを聞いたのだがホントかな。あの牛も、物議を醸した発表当時ならともかく今さらという感もあるが、でも来たらやっぱり見に行っちゃうよ(^^ゞ
--どうやら六本木の森美術館のもよう。(関連記事)
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コメント
そうそう、輪切り来るみたいなんですよねー!
私も楽しみですー。
投稿: スズキ(アトリエサード) | 2008年3月 9日 (日) 20時52分
断面の間を歩かせてくれるんでしょうかねえ。「進入禁止」のナワなんか張られたらイヤですよ、私は。
投稿: さわやか革命 | 2008年3月 9日 (日) 23時19分