「アメリカを売った男」:ベテラン二人に挟まれちゃ若いモンもキビシイのう
監督:ビリー・レイ
出演:クリス・クーパー、ライアン・フィリップ
米国2007年
主人公は下っ端の若きFBI捜査官。いきなり上司に呼ばれてナンジャラホイ?と行けば、ベテラン捜査官ハンセンの秘書役になってその男の監視をしろと言われる。
出世のチャンス、ヤッタネと意気込んだ主人公であったが、どうも実際のハンセンを観察しているとなんだか話が違うような……(?_?;
その男が長年に渡りソ連&ロシアのスパイだったことは実話であり、実際のニュース映像によって冒頭から明らかにされてしまっている。しかも、それは2001年というまだ記憶に新しい時期だ。
よって、ストーリーの中心はいかにその正体が暴かれたのか、ということと、ハンセンという不可解な男の人物像を描くことである。
不在時を見計らって部屋を家捜ししたり、自家用車を分解するところはドキドキしちゃう。事はスパイ問題なんで主人公はヨメさん(美人)にも明かせず、夫婦仲も危機状態。おまけにハンセンはカトリック同士ということで色々と宗教関係から家庭の問題まで口を突っ込んでくるし、上司からは「しっかりせい」と尻を叩かれるし、困ったもんだ。
そもそも、スパイ物というのは辛気くさいものだが、この作品もやはり非常に辛気くさい。
主人公のウツウツたる悩みはもちろんだが、ハンセンという男という存在自体がどうにも辛気くさいのだった。
結局、最後までこの男の二面性は解明されない。そのヌエ的な人物をクリス・クーパーを巧みに演じている。もう、彼の独壇場と言ってもいいくらいだ。もっとも、オスカー俳優としてはこんなのお茶の子サイサイなのかも知れん。
一方、彼に敵愾心を燃やす主人公の上司役にローラ・リニー。こちらもオスカー候補の常連である。額の辺りに長年の恨みと疲労が蓄積されている様子がまたうまい。
このようにベテラン役者二人に挟まれては主人公役のライアン・フィリップ、ちょっと歩が悪い。物語の役どころ同様、今ひとつパッとしない印象なのであった。
かくして辛気くさいまま作品は終了するのであった--
監督(兼脚本も)は『ニュースの天才』の人だと後から知った。どうもこういう年輩のベテランと若造が対立する話が好きなようだ。
字幕が一部意味不明の所があった。主人公が夜にL・リニーの上司の自宅へ行った時に、洗濯物を片付けながら「猫も飼えずに……」とか喋るのだが、そこのセリフの繋がりがよく分からなかった。それともボーッとしてたからかしらん。
本筋とは関係なく、同じキリスト教でもプロテスタントとカトリックではかなり違う様子が分かったのは興味深かった。
先日、ケーブルTVで『マイアミ・バイス』を見てたら、C・クーパーがあっという間に殺されてしまう役で出演していてビックリ。しかもギャングの情婦役にはジュリア・ロバーツまでも! いやはや、皆さんこういう下積み時代を経験して、今の地位があるんですなあ。(*_*;
主観点:7点
客観点:6点(地味でも辛気くさくてもいいという方にはオススメ)
【関連リンク】
《HODGE’S PARROT》
やはり宗教的背景の理解が必須のようです。
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