« アッコルドーネ(津田ホール)速報 | トップページ | アッコルドーネ「恋人たちのイタリア」:「ナンチャッテ古楽」か「生き生きとした演奏」か »

2008年5月20日 (火)

アッコルドーネ「歌と魔法」:「怪僧」ならぬ「快僧」あらわる

080520b
会場:王子ホール
2008年5月16日

アッコルドーネ(CDの表記はアコルドネ)はテノールのマルコ・ビーズリーと鍵盤のグイード・モリーニが中心のアンサンブル。
ビーズリーの歌は極めて甘美なハイ・テナーで思わずウット~リと聴いてしまうのであるが、一方外見の方はと写真を見れば思わずビックリ。容貌魁偉、まるで怪僧ラスプーチンではあ~りませんか(失敬m(_ _)m)。

その落差もまた楽しみな今回の公演(前にも来日してたとは知らず)、エンリコ・ガッティも一緒に来るとあってはもう何があっても絶対行かねばならんと、鼻息も荒く固く決意したのであ~る。

メンバーは鍵盤+ヴァイオリン2+テオルボ+バロックギター+リュート(←CDでは代わりにチェロだった)という、この人数で撥弦楽器三本とは珍しい(?)編成か。
で、実際にこの目で見たビーズリーは小柄なオヤヂで、メンバー中リュートのオヂサンと並んで一番小さいくらい。ちょっと拍子抜けした。
いやー、アンドレアス・ショルぐらいの長身の大男で会場をドワーッと圧倒するような感じだったらどうしようかと思ったが、全然そんなんではなかった。

プログラムの前半は17世紀イタリアの宮廷音楽から。
ビーズリーの歌唱は緩急自在で、演技や語りっぽい所もまぜて引きつけて楽しませるようなスタイルであった。やっぱり「怪僧」ではないのね。
三曲目モンテヴェルディの「苦悩はかくも快く」。この曲に至って甘美すぎる苦悩の歌に会場はくぎづけ。だが、さらにそれを上まわって甘~くかつ瑞々しいのはガッティの弦の音であった。
いよっ!この女殺し……ぢゃなかった、この聴衆殺し憎い、憎いネ~( ̄ー ̄)
ちょうど、座席の位置がガッティの方に間近く、音が直に聞こえてきたのもよかった。
もうこの甘×甘二重攻撃には降参だいっ(*^-^*)

また、オルガンの上にチェンバロを乗っけて弾き分けていたモリーニは、フレスコバルディの曲を独奏してビシッと決めてみせた。さらにマリーニの歌曲を挟んで、今度はビーズリーが引っ込んで楽器のみの合奏曲をやった。フォンターナのソナタだったが、ここでのガッティは一転して力強く先鋭なまでにストレートな演奏で、こんな面もあったのかと驚いてしまった。
単にCDではそういう面を感じ取れなかっただけなのか? とはいえ、こういうガッティもエエですなあ

CD『ラ・ベッラ・ノーヴァ』最初に収録されているステーファニの曲が前半最後。この時は出だしの演奏が始まってから、ビーズリーがさり気なく、かつウロウロと舞台の袖から登場するという趣向だった。

後半は一転して民謡・俗謡が中心。ヴァイオリンは登場せず撥弦楽器三人衆とモリーニが伴奏。特に三人衆はトリオ漫才が出来そうに外見がバラバラだが、三人寄れば文殊の知恵--じゃなかった、鉄壁の伴奏隊なのであった。
「カルビーノ娘に捧げる歌」はなんだか演歌っぽく(正しくは「カンツォーネっぽく」か)感じたのは私だけか? この路線で客席をひとしきり沸かせた後、「すてきな知らせ」で再びヴァイオリンの二人が復帰。
プログラム最終曲は直立不動で歌う、なんと18世紀末の革命歌。こういう曲が入ってくるのがいかにもお国柄かと思っちゃった。だってねえ、日本だったらソウル・フラワー・ユニオンがやってるような組み合わせだもんね。
ここではガッティを始め楽器隊一同もコーラス部分で歌声を披露したのであった。

アンコールはCDにも入ってる「ガラッチーノの唄」で、お魚が海でケンカする話だとかなんだとかかなり長く英語で解説をつけて(残念無念ながら私にはほとんど聞き取れず)から大仰でユーモラスに歌って大喝采。
次は一転、世界一有名なラブソングだけど歌われ方がちょっと--などとと前説で語って、チェンバロの伴奏のみでシンミリかつ切々と歌ったのがなんと「オー・ソレ・ミオ」であった。これまた大受け。

で、アンコールでさらに熱気は高まりも立ち上がって拍手する人も出たぐらい(少数だけど)。私も大満足であった。 \(^o^)/
ただし、パンフが売り切れてたこと以外は……(怒)


帰りは金曜の夜とあって、電車はほぼ満員。高架を通っている時に吊り革につかまりながら「今、大地震が起こったらどうなるだろう」などと考えてしまい、コテンと満員電車が転がり落ちる様子を想像して思わずギャ~と叫びたくなってしまった。(-o-;)
地震の被害に遭いたくなければ、普段は家から一歩も出ず、いざ地震が起こったら直に外に飛び出すしかない。あとエレベーターには絶対乗らない--なんて訳には行かないしなあ

【関連リンク】
《♯Credo》
同じプログラムの西宮公演での感想。

| |

« アッコルドーネ(津田ホール)速報 | トップページ | アッコルドーネ「恋人たちのイタリア」:「ナンチャッテ古楽」か「生き生きとした演奏」か »

コメント

あのモンテヴェルディは萌えポイントでしたねぇ~。
放送はもうひとつのほうの公演のようですが、どっちにしても「永久保存版」ですね。NHKの粋な計らいに涙するしかありません。

(私もあの魚の話が全然聞き取れませんでした。その方面の神は降臨しませんでしょうか。)

投稿: kimata | 2008年5月21日 (水) 22時23分

録画されてたのは「恋人たちのイタリア」ですね。宗教曲が中盤に歌われるプログラムです。
お魚の話はNHKが放映してくれればちゃんと字幕の訳が付くと思うんですが……。
でも、長過ぎてカットされちゃうかも(?_?;

投稿: さわやか革命 | 2008年5月22日 (木) 07時19分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アッコルドーネ「歌と魔法」:「怪僧」ならぬ「快僧」あらわる:

» アッコルドーネ@西宮 [♯Credo]
昨日の兵庫芸術文化センターのアッコルドーネ。いやぁ、いいっす。マルコ・ビズリー。西宮の小ホールもたいへん素敵な空間です。始まる前、会場内のノイズの反響を聴く限りでは、それほど響かないんじゃないかと思ったのだが、ポロロンとリュートが弾かれ、甘いビズリー....... [続きを読む]

受信: 2008年5月21日 (水) 22時20分

« アッコルドーネ(津田ホール)速報 | トップページ | アッコルドーネ「恋人たちのイタリア」:「ナンチャッテ古楽」か「生き生きとした演奏」か »