アッコルドーネ「恋人たちのイタリア」:「ナンチャッテ古楽」か「生き生きとした演奏」か
アッコルドーネ2回目である。
先日の王子ホールの公演とはプログラムが違っているが、アンコールも入れると結果的にほとんどの曲目は重なったような。
違うのは真ん中に宗教曲が入っていること。前半はカッチーニを中心とした著名な作曲家の作品で、後半は民謡や世俗歌曲で構成していて、間にグランディのモテット、グレゴリオ聖歌(朗唱みたいな歌い方だった)、モンテヴェルディの「倫理的宗教的な森」から--と続く。でも、モンテヴェルディの曲はなんかノリというか調子がよくって全然宗教曲っぽくなかったぞ。
ビーズリーの声はちょっと高音の部分が枯れてたみたい。さすがに連チャンが響いたか、気候のせいだろうか。
後半部の「いのちなくして」は失恋男が酒場でクダまいているような歌で、特に撥弦楽器三人男の演奏が迫力あった。
それから、歌無しコーナーはモリーニのチェンバロ即興演奏が2曲。これがチト長かったですよ。
あと、第二ヴァイオリンのR・クローチェは、初日は眼鏡をかけていたがそのツルのデザインがすごーく変わっていた(まさしくイタリアン・モダン・デザインか?)けど、この日は何もなし--って、どーでもいいことですが。
ガッティはカッチーニの「かわいいアマリリ」での演奏が切々たる響きでよかった
アンコールは計5曲で最初がお魚のケンカの歌(さらにオーバーな感じが増量)、革命歌、続いて「オー・ソレ・ミオ」--はこの日は前説の話は省略で、チェンバロの側に椅子を持ってきて座って歌うという趣向だった。しかし、この曲のチェンバロの音はかなりロマンチック過ぎであるなあ。
こちらのプログラムの方がバラエティはあったものの、全体的には王子ホールの「歌と魔法」の方が客席がノリやすくってよかったと思う。後半の冒頭、畳み掛けるように聴かせる「タランテッラ」から始まって後は民謡俗謡のオンパレード。で、シメが革命歌の「高らかに打ち鳴らせ」となれば、乗らずにはいられようかヾ(^^#)ゝヾ(^^#)ゝアーコリャコリャってなもん。
アンコール曲では手拍子まで起こりかけたぐらいだぞ。
また、ビーズリーが女性のクローチェの所へ行って、歌いながらペッタリと肩に手を置くという「公然セクハラ」行為(^o^)に、隣のガッティが「めっ」と弓の先でビーズリーの手をつついてみせる、なんておふざけ場面も見られたし。
それから、楽器組の合奏曲も聴けたしねえ。折角、ガッティ+モリーニ来てたんだから、アッコルドーネ公演の半券所持者のみ対象のシークレット・ライヴとかやってくれればよかったのに~(T^T)
まあ、でもこの日にはNHKのカメラが入っていて、夏ごろに放送予定だとか。
ウ レ シ イ ッ(#^-^#) しかし1時間枠にカットされちゃうんだろうなあ。
《チェンバロ漫遊日記》を読んでたら彼らのことを「シャイで物静かな怪僧一座」と書いてあってビックリ。(この記事自体は新イタリア合奏団のことなんで注意)
そっかー、イタリア男でも色々なんですな……って当たり前か。
さて、《MedioLOG》での公演評。「グイード・モリーニの「アレンジ古楽」が炸裂」とあるが、「アレンジ古楽」というと筆頭はレッド・プリーストみたいな感じですかね。しかし、さすがに彼らよりはこちらは「正統派」なような……。
何をもって「アレンジ古楽」「ナンチャッテ古楽」と見なすか線引きは難しい。「楽譜通りに演奏しているもの」などと言ったら、中世音楽の演奏なんてほとんどアウトだろうし、ルネサンス期だって相当アヤシイ。
私がつかまされているのはまがい物なのか? それとも生き生きとした演奏なのだろうか。
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コメント
モンテヴェルディ以前の音楽には楽器の指定が無い訳ですから、全て何らかのアレンジを必要としますよね。特に世俗曲の場合、楽譜は即興演奏の叩き台みたいなものでしょう。アレンジの度合いが控え目ならオーセンティックと呼ばれるが、サービス精神を発揮すると「ナンチャッテ」と言われてしまう訳で…。
ミサやモテットで、鉦・太鼓に笛や喇叭でドンチャン騒ぎしてる演奏も含め(クレマンシックのことです)、僕は何でもアリだと思っています。
投稿: Pilgrim | 2008年5月28日 (水) 08時39分
うろ覚えの記憶ですが、以前ボストン・カメラータのジョエル・コーエンが来日した時に、インタヴュワーが「どうしてこの部分を二度繰り返して演奏したんですか」と質問したら「別に意味はない。そっちの方がノリがいいから」みたいな返事をされて絶句してました。
厳密な楽譜が残っているような時代でも、当時は適当にノリで変えて演奏していたかも知れませんねー。
まあ、実際に見てきた人間は誰もいないんだから確かめようもありません。(^O^)
投稿: さわやか革命 | 2008年5月29日 (木) 07時12分