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2008年6月14日 (土)

「靖国 YASUKUNI」:靖国は騒がし、されどじっちゃんは黙して語らず

080614
監督:李纓
日本・中国2007年

公開時に大きな騒ぎになったドキュメンタリー。私も公開一週間ぐらいして一度突撃をかけたが、混雑のため見事玉砕したのであった。
しかし、一か月半過ぎた今となっては、その日の最終の回ということもあるだろうが客もまばらであった。
結局あの騒ぎで一番得したのは興行側の宣伝部門だったのか。だーって、全国紙の第1面を飾ったんだから、広告費に換算したら大したモンよ。

実際に見てみると普通に「地味なドキュメンタリー映画」であった。左右どちらの過剰な思い入れをもって見ても、肩すかしだろう。
内容はだいたい二つに分かれていて、片方は終戦記念日の靖国神社の騒然かつハイな状態を淡々とカメラに収めたパート。特に取材されてるのはコイズミがこの日に参拝するってんで余計に大騒ぎになった年だ。

同じドキュメンタリーの『蟻の兵隊』でもかなりいい加減なコスプレ状態の旧日本軍の兵隊に扮したヤツが出てきたが、こちらでも同様。
なぜか、号令かけて制服姿で参拝する一団に周囲の人々が拍手したり、折角コイズミに賛意を示しに来たのに追い払われてしまったアメリカ人など、抗議に来てあっという間に撃退されてしまった若者--色んな人間が出てきて口アングリ状態で眺めてしまう。
この映画を批判する意見に、こんな状態を延々と流して何の意味があるのかというのがあったが、こういうのもドキュメンタリーの手法の一つであろう。

かように混沌としてハレ状態の靖国神社ではあるが、普段の日は静からしい。
確かに、目と鼻の先にあるイタリア文化会館にコンサートで行った時はフツーに盆踊りをやっていたぞヾ(^^)ゝヾ(^^)ゝコリャコリャ

もう一つのパートは、かつて靖国神社に奉納していた日本刀の鋳造を90歳の刀匠(とてもお元気!)がカメラの前で再現して見せる場面。
鉄の固まりから刀が作られる過程は極めて厳粛なものである。私は、神話学や民俗学における神と密接な繋がりを持つ古代の「鍛冶師」の姿を連想した。

もっとも、素のじっちゃんは穏やかでのほほんとした印象。
時折挟まれる監督によるインタビューでは彼は何を聞かれても「うーん」と言うばかりではかばかしい返答は返ってこない。これは別にはぐらかしているんじゃなくて、このじっちゃんは根っからの職人さんなんで、内部で靖国と刀と戦争の関わりについてとか普段考えてもいないし、言語化もしてないと見た。
おまけに訛りが強いんで時々喋る言葉もよく分からず、英語の字幕を思わず見ちゃったりして(^^;)

これは靖国合祀の取り下げを求める遺族達が強烈な眼差しをもって、明確に主張を述べるのとは対照的である(遺族の一人は仏教者)。

原初的な神と人間の交わりとしての宗教、そして近代から現代に至るまで宗教を利用する国家、それに関わる個々の人間の姿が浮かび上がる--観る者に様々な感慨を呼び起こすドキュメンタリーには間違いないだろう。
さらには公開中止騒動自体も「祭り」の延長だったかも。
監督が中国人でなかったらこんなに騒ぎにならなかったろう。でも、日本人じゃこういうテーマで作るヤツはいなかったろう。

ただ、さすがにちょっと長過ぎるんでもう少し編集して欲しかった。あと、インタビュワーは監督じゃなくて他の人にした方がいいんじゃないの~。

観ている間中、ポリ袋をガサガサしているオヤヂや、入れ代わり立ち代わり出たり入ったりしているカップルtoiletがいて参った。もしかして、どっかの破壊工作員か?


騒乱度:10点
言語聞き取り度:4点

【関連リンク】
《ミチの雑記帳》
「職人さん」については同感。この映画には珍しい?冷静な感想です。


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