「イースタン・プロミス」:倫敦の空の下、死体は流れる
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ヴィゴ・モーテンセン、ナオミ・ワッツ
イギリス・カナダ・アメリカ2007年
クロちゃんキタ━━━━(・∀・)━━━━ !!!!!と言いたくなる快作(怪作?)である。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に続くヴィゴ主演によるヴァイオレンスもの第二弾だ。
舞台はロンドン--ていうのがなかなか気づかなかった。ロシア系移民の多い一角らしいが、一体ここはどこの国でしょう(?_?)ってな街並みだ。
産婦人科の看護師のヒロインが、出産して死んでしまった若い母親の家族を、赤ん坊のために探そうとするが……知らずにたどり着いた先はコワ~いロシアン・マフィアの世界であった。
刺青がワルの履歴書代わりになるとか、ボルシチを食わせるレストランがマフィアの根城--というのはTVドラマの『クリミナル・マインド』でもちょうど最近やっていた。そっちは米国の話だが、どこの国でも問題になっているということなのか?
で、そこに出現するは一見温厚そうな老店主、そのボンクラそうな息子、そしてその運転手役の男である。
息子役のヴァンサン・カッセルはどうにもロシア人には見えないが、ボンクラ演技は天下一品と言わずばなるまい。また、父親はアーミン・ミューラー=スタールが演じていて、観客に対しては一貫して温厚な面しか出さないにも関わらず、ウラの冷酷な面も想像させる名演である。
そして主人公の運転手役のヴィゴはというと……私が一目見て思い出したのはモデル兼歌手(でいいのか)のグレース・ジョーンズの大昔のアルバム・ジャケットであった(^^;
アルマーニなんか着ちゃったりして、明らかに仕えているボンクラ息子よりとんがっていてキョーレツな印象。ナオミ・ワッツ扮するヒロインの目線がつい行ってしまうのも仕方なし。こりゃ、どうするよ~。
脚本を書いたのは『堕天使のパスポート』と同じ人で、こっちはトルコ不法移民を題材にしてアフリカ系移民の男が組織にしっぺ返しする話だった。とすると、同様にこれまた混沌とした悪のはびこる世界でなんとか善が生き残る物語であるか、または、最近流行った某マフィア系映画(名前出すとネタバレになってしまうんで封印)みたいな話だろう--となるはずなのだが、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』と同じく、脚本と実際の作品のイメージが著しく異なっているのだ。
親子、同胞、義理、裏切り、正義--等等、物語の中で語られることとは別に、ただ全てを覆い尽くすは不毛でザラついた暴力の感触なのである。これはやはり特異としか言いようがない。
その最たるものが話題騒然(^=^;サウナでの主人公の全裸フリ●ン格闘シーンだろうけど、タイルとナイフに素の肉体がぶつかる様相は、見ているだけでイテテテテ(>O<)
クロちゃんは雑誌のインタヴューで「どの取材でもみんな必ず全裸格闘シーンついて聞いてくるねえ」と冗談めかしつつも「『ボーン・アイデンティティー』みたいなアクションにはしたくなかった」と答えていた。
なるほど
ポジティヴな結末にも回収されないその暴力性こそが、この映画の隠れテーマかも知れない。『ボーン』シリーズだけでなく、例えばやはりマフィアと東欧から流出する「ブツ」について描いた『裏切りの闇で眠れ』(そういや、主人公が傍観者的でナゾなのも同じ)あたりと比べて見ていただければ、この異様な暴力描写の違いが分かるだろう。
それにつけても、この全編に横溢するホモ気は何よ(?_?; も、もしかして(-o-;)監督、年くって宗旨替えしたとか……いや、それとも最初から……(>_<;;; あまり深く考えないようにしよう。
ということで、クロちゃんにしては「前向き」とか「ハッピーエンド」とか「救いがある」とか、果ては「変態じゃない!」などという世評には惑わされず鑑賞することをオススメしたい。
次はどんな作品をを作ってくれるかな~。楽しみ楽しみ(^^)
主観点:9点
客観点:8点
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