「ダークナイト」(再見)
*完全ネタバレモードです。映画を未見の方は読まないことをオススメします。
なお、第1回めの(ネタバレでない)真っ当な感想は「映画館の入口に掲示してあった「これより先は一切の希望を捨てよ」」をご覧ください。
★ネタバレ警報発令中☆
米国本国とは違って、早々に興収ベストテンを下降中。このままでは上映打ち切りか、さもなくば遅い夜の回だけの上映になってしまうと思い、素早く2度目の鑑賞に行ってきた。
しかし、こういう場合の常として事前に確認しようと考えていた部分よりも、どうでもよい小ネタの方に目が行ってしまうのはしょうがないことなのでありましょうか(^^ゞ
以下、簡単に感想を羅列。
*2度目の方が最初から最後まで面白く見られた。
*香港のビルから飛び降りる場面は、やはり『攻殻機動隊』が元ネタであろう。
*最初見た時にも感じたが、ジョーカーのナース姿は……似合い過ぎ~ \(^o^)/ どうしても笑っちゃうのよ。
*バットマンのマスクは実は薄くて柔らかい(!o!)--というのは、主人公にアルフレッドが脱いで置いてあったマスクを渡す場面で初めて分かった。
となると、マスクを着けている時に背後から忍び寄って耳の部分をつまめば、プニッと潰れてしまうはず。や、やってみたいぞ
*デントのことを最初に「ホワイトナイト」と言っているのはゴードン警部補で他の人やメディアは言ってない?ようだ。で、バットマンのことをラストで「ダークナイト」と語るのも彼だから、そのような見方(物語)は彼の主観内のことになる。
*「死んで英雄となるか、生き長らえて悪に染まるか」というセリフはレストランの場面で既にデント自身が喋っていた。そうなるとこれはかなりの皮肉だ。
*第1回目では分からなかったのが、デントの持つコインのこと。他のブログの感想を読んでそうだったのかとようやく気づき(マヌケであります(^^ゞ)、今回再確認できた。
彼が持っていたコインは普通のものではなく、両面とも表というものである。だから裏表の賭けのポーズはみせかけだけで、本当は最初から自信をもって自分の決定をやりぬくつもりなのだ。恐らくは、コインは他者を自分のやり方に納得させる手段なのだろう。いかにも自信たっぷりの政治家タイプである。
で、護送される直前にそのコインをレイチェルに渡す。その時に初めて両面表なのが判明。→彼女がずっと持っていたが爆破に遭遇。→バットマンが現場で拾い、デントの病室にこっそり見舞いに行った時に置いてくる。その時、コインの片面は真っ黒に焼け焦げている。→目を覚ましたデントがコインを発見。
だから、トゥーフェイスは単なるコインの裏表ではなくて、「表」と「元は輝いていたが今は真っ黒になってしまった表」で決定していることになる。これもまた皮肉です。
*ラストで彼が投げたコインの結果は、バットマンについては裏(直ぐに銃で撃つ)→自分については表(額に押し当てた銃は撃たず)→ゴードンの息子は表?でエエんでしょうか。
*感想の大多数を占める「ジョーカーの方が主人公」という見方には私は組せませんねー。いや、それよりもジョーカーだけでなく皆さんどのキャラクターも応分によく役目を果たしていると思う。MTV映画賞だったら「アンサンブル演技賞」がぴったりというところだろう。
*これもまた初めて気づいたが、爆破事件後に主人公がレイチェルのことをアルフレッドに語った時に、最初に「彼女が自分を選んでいたという事実をデントにはとても告げられない」と言っている。
つまり、ここでは主人公が事実(と思い込んでいること)をデントに隠し、さらにアルフレッドが手紙を燃やして事実を彼に隠すという二重構造になっているのであった。
では、結末はこのような「他者の弱さへの思いやり」の延長なのだろうか。別の面から見たらこれは「情報操作」と言えなくもない。しばしばこの映画は表層の描写とメッセージが相反している場合があるので、色々と考えてみても作り手の意図はよく分からないのだ。
ゴードンは「バットマンは強い」とラストで語るが、私にはそうは思えない。バットマンは甲殻類のように堅い外殻(スーツ)で守っているが、その下の中身は柔らかく弱くて脆い。
(追記:下のコメントでのやりとりにあるように、バットマンとブルースが別人格に近く分裂しているのなら、ブルース個人が「思いやり」でやったことも、バットマンがやれば市民に対する「情報操作」になってしまうのではないか。それもまた、コワイことである……)
私が思うのは、自分は例えどんな真実を知ったとしても動じないほどの強さが欲しい、ということであるよ。
(《MESCALINE DRIVE》というブログからTBを頂いて色々と考えてみたことを書いてみました)
【関連リンク】
《映画批評 k.onoderaの日記》
遂にキターッ!感のある監督、H・レジャー共にバッサリ斬り捨てた感想です。
「彼はおそらく、演技中は本当に狂っていたのだろう」というのは、別の言い方をすれば「役者としては失格」ということかと……。だって、殺人者を演じるために人を殺してたらそれは役者とは言えないだろう、ってことですね。
ちなみに、精神科医の春日武彦は『シャイニング』でのJ・ニコルソンの演技を否定しています。ほとんどの人間は「狂気」など見たことないから、それがホンモノなんだかは分かりません。
一方、バットマンが911以降の強硬な米国政府と重なるのは同感です。あのような大規模な盗聴はまさに現在進行形で行われているようです(確か議会をちゃんと通して承認されたはず)。
《見物人の論理》
「正義」と「悪」をキイワードにした見事な分析です。感服いたしました<(_ _)>
ネタバレモードなので、最初の記事でなくこちらの「再見」の方からリンクさせていただきます。
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コメント
はじめまして。MESCALINE DRIVEで益体もないことを書き散らしているサテヒデオと申します。
こちらの記事で拙ブログに言及していただきまして恐縮しきりです。
バットマンが強いかどうかについては、これはバットマンは強いと断言します。寧ろ、バットマンと云う存在は強くなければならないのです。ブルース・ウェインの弱さをマスクとケープに隠し、不可知の恐怖を身に纏ったのがバットマンなのです。
と、以上のことは拙ブログの記事「信念を闇夜に照らして」にだらだらと書いていますので、ご笑覧ください。
投稿: サテヒデオ | 2008年8月29日 (金) 01時40分
わざわざコメント頂きありがとうございます。
実は前に最初にTB頂いた時に、そちらのブログにコメントさせていただこうと思ったのですが、なぜか二度、三度試みるも出来ず。結局あきらめてしまいました。(^^;
|ブルース・ウェインの弱さをマスクとケープに隠し、
彼の内部が崩壊した時には外側の外殻だけが生き残るのでしょうか? それもまたコワイ(>y<;)ような気が……。
まあ、でもこの映画は色々な見方がいかようにも出来て、そこが面白いですね。
これからもよろしくお願いします。
投稿: さわやか革命 | 2008年8月29日 (金) 22時35分
ご無沙汰しました。ご紹介いただきありがとうございます。分析などという大層なものではなく単なる感想を書いたつもりですが、ネタバレモードですかね、やっぱり(笑)。
投稿: 念仏の鉄 | 2008年8月31日 (日) 08時54分
おいで頂きどうもです。こちらこそご無沙汰です。
|ネタバレモードですかね
「ビミョー」というところでしょうか(^^;
でも、自分の最初の感想を読み返したら、結構ネタバレかもなどと思ってしまいました、トホホ。
また映画ネタの記事も読ませて下さい。
投稿: さわやか革命 | 2008年8月31日 (日) 11時07分
さわやか革命様
ご無沙汰しております。
当方の《MESCALINE DRIVE》ですが、今年に入って生意気にも独自ドメインを取得しました。おかげでリンクが途切れているところもあり、ご迷惑をおかけしております。
こちらの記事にもリンクをはっていただいていて大変光栄なのですけれども、上記のような事情がありましてリンクが機能していません。もしよろしければ恐縮ですがリンクのはりなおしをお願いいたします。
投稿: サテヒデオ | 2009年9月 4日 (金) 22時44分
ご連絡ありがとうございます。
リンク先修正しました。
また何かありましたらよろしくお願いしますm(_ _)m
投稿: さわやか革命 | 2009年9月 5日 (土) 07時47分