「ジャガーノート」:赤、青、赤、青、赤、青……
監督:リチャード・レスター
出演:リチャード・ハリス
イギリス1974年
*TV放映
だいぶ前に録画しておいたのだが、見るのが遅れてしまった(^^;)
これを見ようという気になったのは「週刊世界の美術」みたいな本(雑誌?)のマーク・ロスコの巻で、ロスコルームが登場する映画だと紹介されていたからである。
で、レンタル屋を探したけど全然ナシ。ビデオやDVDも当時入手不可だったが、TV放映でようやく見ることができた。
ただ、映画サイトの紹介を読むとどうも子供の頃にやはりTVで見たような気もするんだが……。それとも結末ネタバレのあらすじ紹介を読んでしまったのか? よく分からん。
内容は簡単に言えば「タイタニック」+爆弾パニックものである。
大西洋を航行中の豪華客船に爆弾を仕掛けたという脅迫状が届く。会社の方では被害を考えると犯人の言う通りに金を払った方がいいと考えるが、政府の方は「テロには屈しない」の方針をタテに交渉には応じないよう圧力をかけ、爆弾処理班を送り込む。
前半はそんな外側のゴタゴタと、事情を知らされていない船内の様子がいわゆる「グランドホテル」形式で描かれる。
後半に至って、処理班が乗船して船内の描写へと絞りこまれて緊張感が高まる。何せ、荒れた外海なんで空から乗船するのも一苦労。ここで既に死人が出てしまうのだ。
主人公は爆弾処理班のチーフ。肝心のロスコルーム(旧テート・ギャラリー?)は、爆弾が仕掛けられたという設定で、主人公が登場する導入部に登場するだけで、本筋には関係なし。そこで彼は軽口を叩きながら爆弾を処理する。その描写によって彼がプロだがいささか傲慢でクセのある人物だというのが明らかにされる。
もっとも、その時彼がロスコルームで行った行為をもう一度終盤で繰り返すのだが、観客はそこに至って二つの場面の落差をヒシと感じるわけである。
しかし、この作品の最も有名な場面は「赤か青か」の件だろう。爆破の期限が刻々と迫る中、主人公と犯人が無線を通して対決する--。両者の間の言葉では語られぬ葛藤が短いカットの切り返しで簡潔に描かれる。正に手に汗握るとはこのことだ。
そして、極めて皮肉な選択とその結果……お見事としか言いようがない。
その他、後半の虚無的な船内の雰囲気、船長の愛人の中年女性と接客係のオヂサン船員との奇妙な友情、爆弾処理過程のゾクゾクする恐怖、旧友の信頼と裏切りなど、単にエンタテインメントというだけでなく様々な要素がうまく一つになっている。
なんでも、これは当時の米国娯楽大作への対抗作として英国で作られた作品だそうだ。そのせいか当時の若手有望株?アンソニー・ホプキンス(若い!)やイアン・ホルム(あんまり今と変わってない)が出演。ダンディな船長さんはオマー・シャリフだ。
主役のリチャード・ハリスは後年「ハリポタ」の初代魔法学校校長役となった。今さらながらだが、ご冥福をお祈りします(-人-)
それにしても、1960年代後半から70年代のアクションものサスペンスものは傑作・佳作の宝の山ですな~。現在の作品なんか比べ物にならない。でも、レンタル屋にもあんまり無いしな。TV放映を待つしかないようで……(+_+)
←ロスコ・ルームの写真は手に入らず。
これはロスコ・チャペルです。
| 固定リンク | 0
コメント
懐かしいですな、「ジャガー・ノート」。大昔、名画座で見た記憶がありますが、今回のBSでの放映を観て、B級の傑作と再確認しました。
撮影時にはリチャード・ハリス以下の俳優たちが、常に酒飲んで酔っ払っていて、荒れた海に降ろされるシーンでは、みんなプカプカ浮かんでいるだけで、演技は何も出来なかった、と云う話を何処かで読みました。
投稿: Pilgrim | 2008年8月13日 (水) 01時14分
|海に降ろされるシーンでは、みんなプカプカ浮かんでいるだけ
「あー、この水が全部酒だったらなあ~、プカプカ」なんて浮いていたんでしょうか?
劇中でも、あんなに酒飲んで爆弾処理できるんかいっ!と突っ込みたくなる場面がありましたな(^O^)
投稿: さわやか革命 | 2008年8月13日 (水) 10時15分