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2008年8月 3日 (日)

「告発のとき」:「怪物」の行方

080803
監督:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン
米国2007年

トミー・リー・ジョーンズが荒廃した社会の罪過に直面し、現代を嘆く年老いた男を演じる……と、なれば『ノーカントリー』をイヤでも思い出してしまう。おまけに、ジョシュ・ブローリンまでチョイ役で出ているし。

しかし、監督・脚本はポール・ハギスなんだよねえ(>y<;)
この人の前作の『クラッシュ』(この作品に感動した人はリンク先を読まない方が精神衛生上よろしいかと)は世評が非常に高かったが、私には全く評価できない映画だった。
だもんで、長いこと見に行くのを迷っていた。しかし内容紹介や他のブログを読んでやっと決意した次第である。

元・軍警察にいて今は退役した主人公が、イラクに派兵されていた息子が帰還中に基地から失踪したという知らせを受ける。優秀な捜査官であった彼は基地まで赴き、息子を自分で探そうとする。
『ノーカントリー』では舞台は1980年。得体の知れない殺し屋が「怪物」として社会を徘徊していた。彼の正体は元々政府に使われていた暗殺者(ヴェトナムか中南米あたりか?)ではないかと匂わされていた。
しかし、こちらの話は2003年に起こった実話が元になっていて、「怪物」は外部から来た正体不明の男ではなく、ごく身近な存在、むしろ内部に存在するということが最後に明らかになる。
もはや「怪物」は他者ではない。
かように衝撃的な事実を示して物語は終わる。救いのない話だ。

主役はこのような役柄ではハマリまくり他の追随を許さぬジョーンズに、脇を支えるのはスーザン・サランドン、お懐かしやジェイソン・パトリック(肉が付いてたんで最初誰か分からなかった(^^;)など。シャーリーズ・セロンもスッピンメイクで頑張っていた。
ただ、演出が悪いのか編集が悪いのか、途中もたついてる印象あり。いくらサスペンスや謎解きが主眼じゃないとはいえ、もう少し何とかして欲しかった。

それから、ほとんどの人が感想で言っていることだが邦題がヒドイ。誰が誰を告発してるって? 原題は旧約聖書から取られている。


さて、ついでにここで米国のニュース番組「デモクラシー・ナウ!」で放送されてた「冬の兵士」集会について紹介しよう。
同じタイトルの集会はヴェトナム戦争時にも開催されており、それにちなんだものとのことである。今年3月に行われたのは、イラク・アフガニスタンの帰還兵と現役兵が自ら行った、あるいは身近で目撃した戦争犯罪や不当な暴力行為について公の場で告白するものだった。

壇上に十人あまりの(元)兵士たちが並び、聴衆の前で一人ずつ証言していくという形式を取っていた。
その内容を聞いて意外に思ったのは、そのような暴力行為や人種差別的言動は将軍に至るまでの軍の上官たちが行っていることであり、それが下々の一兵士に影響を与えていると告発していることである。そして、彼らは一様にこのような無謀な作戦を立て遂行した軍、さらには国の政策までも批判していた。
つまり、これは若くて無知なDQN兵士が追い詰められてたまたま行った行為ではなく無謀な作戦や政策に内在しているものだというのだ。

イラク帰還兵の悲劇を扱った最近の映画やドラマの多くが、個人の「気の持ちよう」へと還元されていくのとは対照的である。
キャスターのエイミー・グッドマンが語ったことによると、この集会は主要メディアは新聞もTV(三大ネットワークもケーブルTVも)もほとんど黙殺したという。(ワシントン・ポスト紙が地方欄で報じただけらしい)
そのような現状にあってはハリウッド映画でこのような「告発」が描かれることは永遠に望めないだろう。

さて、放送の中で一番印象的だったのは冒頭に発言した若者である。一番喋りなれていないような様子でとつとつと話した。
彼は最初にシャツに付けていた勲章とリボンを引きちぎって捨てると、まさしく『告発のとき』の兵士のように現地で撮影した映像(初めて殺害したイラク人の死体や、八つ当たりでモスクの塔を砲撃している場面--実際に狙撃者がいない限り宗教施設や病院への攻撃は禁止されているとのこと)を説明しつつ見せた。
そして、「その時は何をしているのか全く自覚していなかった」と語り、イラク国民へ謝罪した後、最後に彼はこう述べたのである。「私はもう「怪物」ではない」と。


主観点:7点
客観点:7点(121分、長過ぎだー)

【関連リンク】
《好きな映画だけ見ていたい》
元の報道記事についても紹介されている。

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コメント

はじめまして。TBをありがとうございました。
また思いもかけず、関連リンクとしてご紹介いただき
ありがとうございます。

「冬の兵士集会」については初めて知りました。
戦争犯罪の多くが「追い詰められてたまたま行った行為ではなく
無謀な作戦や政策に内在している」ことを思わせる
現場からの声には真実味がありますね。
組織の末端にいちばんのしわ寄せが来る、というのは
軍隊でも同じなのかもしれませんね。

投稿: masktopia | 2008年8月 3日 (日) 16時55分

おお、わざわざおいで下さりコメントありがとうございます。m(_ _)m
この件はこれからも長く社会問題化していきそうですね。(暗い予感……)
実際の兵士たちの証言はなかなかに迫力がありました。

投稿: さわやか革命 | 2008年8月 4日 (月) 10時34分

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http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news5plus/1217658185/ [続きを読む]

受信: 2008年8月 3日 (日) 12時20分

» 告発のとき [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
 『真実を語る、勇気はあるか?』  コチラの「告発のとき」は、主演のトミー・リー・ジョーンズがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされるなどサスガの演技を見せる6/28公開となったPG-12指定の”アメリカが目を背けた衝撃作”なのですが、早速観て来ちゃいましたぁ〜...... [続きを読む]

受信: 2008年8月 3日 (日) 16時27分

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