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2008年9月11日 (木)

「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」:3K(コワい・キモい・カワユイ)

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会場:森美術館
2008年8月9日~11月3日

実は全然期待してなかった。平日の休みが取れたんで、今のうちに行っておこうかなと思い、急きょ六本木へ向かう。土日は混みそうだからいつも森美術館は平日に行くようにしているのだ。しかし、夏休み中だったので学生風の若い男女がかなり来ていた。(アクアリウムとセット券になってるし)

入場してすぐの場所にある鳥を扱った2点は不気味なだけで今一つピンとこなかったが、俄然面白くなったのが「つながったり分かれたり」という広いスペースを使ったインスタレーションだ。変な形の様々な人形が幾つも天井からぶらさがって不規則に回転したり上下したりしている。上下の時間は人形によってバラバラである。床にも動物と人間を思わせる人形が横たわって時折ヒクヒクとけいれんしたりする。
で、人形の形がグロテスクでユーモラスで不気味でヘンテコなのだ。この人形の動きは見てて笑っちゃうけど、全体的にはなんだかコワイ。しばらく眺めてても飽きない感じだ。一面からしか見られない展示だったけど、どうせなら四方から見られるようにして欲しかった。

その他のも、一見カワユイもの(ぬいぐるみとか)を反復的に使って、全く異なるイメージを感じさせる作品が多かった。
「槍」というのは、壁に小さくて変な形のぬいぐるみをぶら下げた槍が何十本も立てかけられている。ただ、一緒に小さな額に入ったスケッチらしきものもそれぞれくくり付けられていて、その絵がすべてテロや暴力らしきものを描いているのだ。なんだか邪悪で魔術的である(でも子供っぽい)。思わず一本一本子細に眺めてしまった。

それから「ふくらんだりしぼんだり」は純粋にバカバカしくて笑えた。人体の内臓や器官(足とか心臓とか)を思わせる巨大なクッションが床に散乱して置かれていて、一定の時間ごとに空気でふくらむようになっている。客が「あ、ありゃ胃だ」とか「眼だよねー」なんてワイワイ言って見ちゃうのだが、特に笑ったのが男性の某器官。完全にクタッとしているのが空気が入ってピンと立ち上がるのではあるが、なぜか途中で力尽きてクキッと折れてしまう。いやはや意地が悪い……(^o^;

しかしなんと言っても、一番キターッという感じだったのは「カジノ」という巨大インスタレーションであった。ヴェネチア・ビエンナーレにフランス代表で出品された作品の一部分を展示したものだとのこと。「ピノキオ」をモチーフにしていてピノキオが魚に飲みこまれて人間として生まれ変わる場面を表わしているらしい。部屋いっぱいに広がった一枚の布によって海面を表しているのだが、同時にそれは誕生の際の産道から大量に流れ出る血液をも暗示していて、色は真紅なのである。
そして、赤い布の下には奇妙な生物や、あるいは何かの破片(?)みたいなものが光ったり消えたりしながら潜んでいる。
最初静かだった布の海面に下から大量の空気が流れ込み、あたかもまるで本当に海水が押し寄せるように布がブワーッと動いて持ち上がっていく--見ていてその瞬間、決して言葉では表わすことのできない、大きく心を揺り動かす何ものかを感じた。久しく味わったことのない感動であった。

私は上からしか見なかったのだが、布と同じ床の椅子に座って見られるようにもなっていた。混んでなかったんでそっちからも見ればよかったと後から後悔した。
しかし、こんなに素晴らしい作品なのに全く見ないで通り過ぎていく人が多いのはなぜだっ(?_?)
なんでも、グロっぽい作品が多いのでアクアリウムのついでに入った客は拒否反応を示す人が結構いたとの噂らしい。

私は大いに気に入って、作者が来日して展示を作っていく過程のビデオもしっかり見てしまった。作品の印象とは違って、ご本人は気さくでユーモアのある細見のオバサン風の女性。
でも、カタログの見本とか一緒においてあったタッシェンから出ている作品集なんか見ると、もっとグロくてコワい作品が多いみたい。あと風刺的なトゲのあるヤツも。
今回の展覧会はとりわけカワユイ目なのを選んだのかなと思った。コワいのももっと見たかったぜい。
あと、サブタイトルの「聖と俗の使者たち」というのは全く見当外れのような気がした。作品の横の解説にも同意できないものがあったしなあ(-_-;)


若手を紹介するMAMプロジェクトは荒木珠奈という人であった。雰囲気がさわやかな大きなインスタレーションだったが、印象は違っても同系統のインスタということでちょっとメサジェの作品と、かぶっちゃった感があり、あの強烈さの後ではちょっと歩が悪かったのが残念。

【関連リンク】
《弐代目・青い日記帳》
「会場から逆走し退出される方を何人か見かけました」--確かに走って逃げてる人がいましたねー。何も逃げなくとも……

《choco rabbit blog》
「これぞ本家のグロカワ」--年季が入った筋金入りのグロカワでした。

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←雨っぽい中を展望台から国立新美を眺める。

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コメント

こんにちは。
TBありがとございます。

「カジノ」圧倒的に良かったですが
「ふくらんだりしぼんだり」も別の意味で
愉しめた作品でした。

現代アート小難しく捉えずとも
十分楽しむことできますよね。

投稿: Tak | 2008年9月13日 (土) 16時56分

毎度コメントありがとうございます。

全体的にイヂワルな部分と飄々としたユーモアが共存して楽しめたと感じました。
しかし、「ふくらんだり~」の部屋も見ないで通り過ぎていく人が……よっぽとイヤだったんでしょうね(^^?

投稿: さわやか革命 | 2008年9月14日 (日) 10時15分

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森美術館で開催中の 「アネット・メサジェ:聖と俗の使者たち」展に行って来ました。 六本木ヒルズの展望台(東京シティビュー)と森美術館の入館料が一緒になっているせいで、展覧会目的で美術館に足を運ばれたのではないであろう方々時折見かけます。それでも折角だからと一周しご覧になられるのが常。 ところが、今回の「アネット・メサジェ展」は様相が違います。 会場から逆走し退出される方を何人か見かけました。「美術館」だと思って入館したにも関わらず如何せんこれ↓ですから。無理もありません。 ... [続きを読む]

受信: 2008年9月13日 (土) 16時54分

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