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2008年10月

2008年10月28日 (火)

「Sweet and Gentle Baroque」:音空間にすっぽり入る

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リコーダー、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロによるバロック室内楽
会場:松明堂音楽ホール
2008年10月18日

こじんまりとしたホールで気の合った仲間とのアンサンブルを……という企画なんだろうか。安井敬、高田あずみ、福沢宏、副嶋恭子というメンツでヘンデル、テレマン、バッハなどの小品の演奏会があった。
有名な作曲家であっても(いや「だからこそ」か)、普段演奏されるのはドドーンとした大曲が多い。なかなかソナタなんかは生で聴く機会が却ってないんだよねー。ただ、場所のせいか満員御礼とならなかったのは残念であったよ(+_+)

四人の中で初めて聴くのはリコーダーの安井氏だ(多分)。色んなジャンルで活躍してCDも多数出しているもよう。
最初は四人揃ってヘンデルのトリオソナタ、それからテレマン。やはり普通のホールと違って音が生々しく別格の響きである。
前半最後は高田+副嶋コンビによるバッハのソナタであったが、客の方がちょっとエネルギー切れしている人が多かったようだ(^-^;

休憩を挟んではオトテールの曲を安井氏中心で演奏。プレリュードだけだったんで、もっと聞きた~いという感じだった。
弦二人+鍵盤によるルクレールのトリオ・ソナタは高田さんと福田氏の弦の音が非常に豊かかつダイレクトに聞こえてきてウットリとしてしまった。前の方に座ってたんで、完全に楽器の音の圏内にスッポリ入っているという気分。
なかなか生でルクレールを聴く機会はないので、シアワセ~(*^-^*)な時間であった。

最後は四人でバッハのオルガン曲のトリオ・ソナタを編曲したものを演奏。ロンドン・バロックのCDで弦だけのヴァージョンは愛聴してきたが、リコーダーが入るとまた違った印象だった。ここでは安井氏が大健闘で、客席も盛り上がりさかんな拍手が送られた。

というわけで、大変贅沢で満足なひとときが過ごせました
帰りはホールの向かい側のパン屋で買って帰った。最近は「えっ、これが有名店で人気のパン(?_?; ウソだろう」とか「昔はおいしかったのに……原料費高騰のせいかしらん」なんてパターンが多くてゲンナリだったが、ここは相変わらずおいしかったです。また次に来た時買おうっと(^^) ご近所でないのが残念無念よ。
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←会場の上のカフェにハロウィン・ツリーが--。おいしそうなメニューが並んでいてヨダレ状態です。
ここも入ってみたいがなかなか機会がない。

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家に帰ってロンドン・パロックによるルクレール盤を久々に引っ張り出して聴いてしまった→

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2008年10月26日 (日)

「宮廷画家ゴヤは見た」:そして、描いた!

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監督:ミロス・フォアマン
出演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド
米国・スペイン2006年

他の映画系ブログでも多くの人が触れているが、この邦題は「家政婦は見た!」みたいでいくらなんでもあんまりじゃないのさ~(原題は「ゴヤの幽霊」)と思いつつ見に行ってみた。そうしたら、まさにこのタイトル通りであった……。
意外だったのは、ハビエル・バルデムがゴヤ役ではなかったこと。そして、当然ゴヤの伝記映画だと思っていたら違っていたことである。

正直言って、ゴヤの絵というのは今まであまり興味を引かれたことはなかった。絵画では華々しい王侯貴族の肖像画に、あの「エロチシズム代表」みたいな『マハ』(「裸」と「着衣」の)、かと思えば『わが子を食らうサテュルヌス』みたいな暗い作品もあるし、さらに加えて社会を風刺したり陰惨な現実を描いた銅版画もある。どうも一定したイメージのないよくワカラン人間なのであった。

だが、この映画を見てようやくその一端が分かったような気がした。
中心人物はゴヤと絵のモデルとなっている娘イネス、そしてゴヤの知人である神父ロレンソの三人である。
バルデム演じるロレンソは極めて強烈な個性の人物で、狂信的な冷酷さで異端審問を復活させようとする。時は18世紀末、もはや啓蒙主義の時代なのにそんな事するかーっとビックリしてしまうが、後半では逆の立場に寝返ってサッパリと信仰を捨てて再登場する。
豹変した彼が演説する場面は非常に印象に残る。しかし実際のところは唱える名前が違うだけでやっていることは全く同じ。敵と見なした者をを冷酷に弾圧するのに変わりはないのだ。

このキャラクターの前ではゴヤはかすんで見えて狂言回しの役にしか見えないかも知れない。しかし画面のほとんどは、彼の描いた作品が忠実に再現された映像で占められている。国王一家、マドリードの街、庶民たち、対仏戦争での戦闘・略奪・強姦・虐殺、そして自画像……全ては画家がその眼で見たものである。とすれば、やはり主人公はゴヤに違いない。

もうひとつ、終盤の死刑場面もまた強烈だった。そもそも死刑の方法が「こんなのあったんか(?_?)」だし、それを見物する市民、笑いさざめく娼婦や軍人。野次馬の中に混じる人物たちの人間関係を考えると、皮肉極まりない。そして刑が終わった後はなんと死刑台に上って男女のカップルたちがダンスを踊るのだ……(\_\;
その描写は一貫して辛辣である。

激しく変転する時代の諸相をこのように眺めることができるのはゴヤのおかげである。彼はきっと名士の肖像も虐殺死体もただ純粋に記録者の眼をもって描いただけなのだろう。そう思って、王侯貴族の絵を見れば確かにその本性(高慢、愚かさなど)が透けて見えるようである。
もっとも、画集の解説には〈後代の批評がどうあれ、彼らは「大変上手に描いてくれた」と、いたくご満悦なのであった〉とある。ホントかーっ(!o!) なるほど、そうでなかったら売れっ子肖像画家にはならんわなあ

若い娘イネスの運命の変転については、見ている間は気がつかなかったが、冒頭のゴヤとの他愛ない会話に予兆が隠されていたのであった……恐ろし(>_<)

そのイネス役のN・ポートマンは役者としてあらためて上手いと思った。後半よりも特に前半の方で異端審問所で最初に質問されて受け答えしている場面である。戸惑いと不審と懸命さがない交ぜになっているような印象がよく出ていた。まあ、名子役として登場してきた人だから当然ですか--。ともかく、大きい声を出すと金切り声になってしまうようなお粗末な女優とは大違いなのであった。
ゴヤ役のS・スカルスガルドはどこかで見た顔だとずーっと考えていて思い出せず(^^; 調べてみるとラース・フォン・トリアー作品の常連だそうだが、それよりも『インソムニア』のオリジナル版で主役をやってたのを見ていたのだった。

ただ今、絶好調で出演作品続々公開中のH・バルデムはここでもノリノリ。複雑かつ、ある種イヤな奴を魅力的に演じている。宗教つながりで「今ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』をリメイクしたら絶対にオリバー・リードの役は彼しかいないだろうなあ」などと思ってしまった。もっとも、いくらリメイク・ブームでも『肉体の悪魔』をやろうという試みは絶対にないだろうが(^○^)
他にもカルロス4世、イネスの父、異端審問所の神父の面々や司教など個性豊かなオヤヂ連中が多数登場する。なにげに「オヤヂ萌え映画」なのであった。

考えさせられたのは、果たしてこれは近代以前の支配者がコロコロと変わる激動の時代だけの話だろうかということだ。
私のいる業界で実際にロレンソのような奴の話を聞いたことがある。直接会ったことはないが、まさしく途中で正反対の立場に乗り換えてかつての仲間を弾圧したというのである。そして、その事が間接的にでも関係あるかどうかは定かではないが、関係者に死人まで出てしまったそうだ。
恐らく、そいつの内部では全く矛盾はないのだろう。決して過去や特殊な時代・地域の話ではないのである。

それから死刑を見物するというのも現代のような娯楽のない時代には唯一の楽しみだったのかも知れないと想像する。「今日、死刑をやるぞ~ \(^o^)/」とか言われれば、私も当時に生まれていれば晴着を着て見に行っちゃう。そして「悪者」が死んだ死刑台の上でダンスしちゃうかもヽ(^^)/\(^^)、だって「悪者」がいなくなったんだよ。喜んで当然さ
だが、これも翻って考えれば現在でも形を変えて同じような事が行われているのかも知れない。罪状は違えどやはり「悪者」は存在し、そいつが罰を受けたらみんな死刑台の上で踊るに決まってるのだ。
ともあれ、久々に重量級の映画を見たという感じだった。満足よ(^^)v


主観点:9点
客観点:8点

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【関連リンク】
《描きたいアレコレ・やや甘口》
バルデムの濃ゆい「肖像画」がキョーレツです。
ところで「バルデム実は女に興味ない」説はどうなったんでしょうかね?

←この猫が「食ってやる!」という意欲満々な様子に笑っちゃいます。

【追記】
『肉体の悪魔』との関連をこちらの記事に書きました。

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2008年10月21日 (火)

「大貫妙子/ピュア・アコースティック2008」:ター坊の世界まで不景気風が?なんてイヤ~ッ

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会場:東京国際フォーラム
2008年10月16年

恒例の「ピュア・アコースティック」シリーズ公演である。
例の如く時間ギリギリにホールに駆け込むと、なんと(!o!)客席はガラガラで客がまばらに座っているだけ。頭の中が真っ白になったが、ハッと気づいてチケットを見ると「開場7時 開演7時30分」となっているではにゃあの
30分早く来てしまったのであった……_| ̄|○
それにつけても30分あれば山野楽器でCDを漁れたものを(火暴)ぐや゛じい゛~。

編成は弦楽4人+ピアノ+ウッドベース+ドラムであった。一番、直近のアルバムが「Boucles d’oreilles」だったんで、そのあたりの曲が中心だったようだ。
以前のコンサートでは大貫妙子が前半調子が出なくて--という事があったが、今回は最初から好調だったもよう。ただ、曲間のMCが何を喋っているのか分からなくって、客席の反応が今イチというパターンがあったのは残念であった。

これまた恒例のアンコール前のプレゼント・タイムは、不景気のせいでしょうか、めっきり人が少なくなって早く終わってしまったのは喜んでいいのやら悪いのやら。昔なんてプレゼント持った人が行列なしてて10分以上も待たされたのにのう(年寄りの愚痴風)。
そういや、客席も空席がチラホラあったのも意外。以前(インターネット販売が始まる前)は、満員御礼でチケットも入手できなかったのに……やはり不景気か

しかし、こうしてアコースティックものを聴いていると、やはりポップス・ヴァージョンというか電気楽器入れた演奏をどうしても聞きたくなってしまうのよ§^.^§
そういう要望を汲んでか1月にバンド形式で公演やるというチラシが入っていた。でもライヴハウスは一人だと行きにくいんだよねえ(′_`)トホホ
ホール公演の開催もプリーズよ

客席はやっぱり年齢高め。カップルは若い人もいたけど、一人客は30代以上中心か。特にサラリーマン風オヤヂやオバサンも多かった。
若い息子が杖付いた母親を連れて来てたのを見ると流れた歳月をヒシと感じるのであったよ(詠嘆風に終わる)

早く次のアルバムお願いします(^人^)


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2008年10月19日 (日)

「アヴァンギャルド・チャイナ」:中国芸術は爆発だっ!

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〈中国当代美術〉二十年
会場:国立新美術館
2008年8月20日~10月20日

文革後、中国は開放政策へと転じ、その結果海外の美術も一挙になだれ込んできたという。で、短期間のあいだに様々なムーヴメントが生じては消えていったらしい。この展覧会ではそれをイッキ紹介--ということで、インスタレーションあり、映像作品あり、パフォーマンスあり、油彩もあれば、美術史に言及した作品もあり。現代アートの全てが凝縮し、かつ爆発しているような展覧会であった。

一番印象的だったのは二つ。チラシにも使われている方力釣の絵画作品。銭湯の風景絵みたいな青空をバックにしたこの空虚さ・不気味さがたまりません。

それから13人の老人--と見せかけて、実は精巧な人形を乗せた車椅子が静かに動き回る「老人ホーム」(孫原+彭禹)。服装から老人たちが様々な国の人間であることがわかり。ある者はグッタリとし、またある者は缶コーヒーを握ってたり、イヤホンで音楽を聴いている。壁の脇で止まったまま動かない車椅子があれば、あちこち動き回って衝突を繰り返すのもある。見ていて飽きない。しかもホントに人形がよく出来ていて、それが無音で延々と走っているのは異様としか言いようがない。これはマジに一見の価値ありと断言しよう。
しかし、展示場所が病院のように真っ白い壁のスペースだから余計に寒々して見えるが、これが東京都庭園美術館みたいなアール・デコ調の邸宅だったらどうなるかね(^^;)
余計に不気味だったりして……

他に、様々な国の人々に「私は死にます」と言ってもらう映像作品は、スクリーンがデカ過ぎてよく把握できず。小さいモニターの方がよく分かるかも。あ、でもそうすると音声が混じってしまうか、ウムム。

チョー汚いトイレで蝿の群れに自分の体をたからせるパフォーマンスは見ているだけでもカンベン(>y<;)という感じ。
一方、一番若いアーティストが作った「ヒップ・ホップ広州」(そこら辺のオヂサンオバサンやニーチャンをつかまえて踊らせた映像)という脱力系作品もあった。

このように百花繚乱な作品群はなんとなく先カンブリア紀の変テコな生物群の出現--カンブリア爆発を思い起こさせるようだ。これから先もまだまだ何が出てくるか分からないぞ、という印象である。

だがしかし、いずれの作品にもシニカルな自己言及が見られる。それこそが極めて「現代」(当代?)的だと言えるだろう。


帰りは東京ミッドタウン地下のスーパーマーケットで買い物してみた。さすがに六本木はスーパーも違うのうと感心。

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2008年10月18日 (土)

若いお二人さんの写真公開

〈eiga.com〉のニュース経由で新たなる『スター・トレック』の写真が公開されたのを知る。
なんかやたらツルツルして若いなーと思ったら、まだアカデミーにいる頃の話らしい。それにしても、一番下の写真なんか高校の理科実験室みたい(^o^;;;;;
「ハイスクール・スタトレ」ですか……なんだかヤダなあ それでもファンは見に行くんじゃろか。

えっ、私σ(^-^;)ですか? 私はほら、あくまでもTNGのファンですから。

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2008年10月17日 (金)

「消えたフェルメールを探して 絵画探偵ハロルド・スミス」:人質ならぬ「絵質」のはなし

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監督:レベッカ・ドレイファス
出演:ハロルド&グレッグ・スミス父子
米国2005年

ボストンの美術館から1990年に盗まれたフェルメールの『合奏』の行方を追うドキュメンタリーである。上野のフェルメール展とタイミングを合わせて公開されたもよう。
探すのは保険会社などの代理人となって盗難絵画を探す専門家のハロルド・スミス。邦題では「絵画探偵」なんて勝手に付けられて、おまけにアイパッチなんぞ付けて山高帽?をかぶってるもんだからヒジョーに怪しい人物に思えるが、真っ当なカタギの方であります(アイパッチや帽子は皮膚病が原因とのこと)。

なんでも盗難にあった絵画としては最高額だそうだが、それをめぐる人々が二種類登場する。片方はスミス氏が訪問する「おれが連絡すれば絵は戻る」とか「盗んだヤツを知っている」と自称する闇の世界に足を突っ込んでいる本当にアヤシイ方々たちだ。
もう片方は「フェルメールLOVE~」な方々。伝記や小説を書いた作家、美術館の職員など。また、個人で美術館を作って『合奏』など名画を収集したイザベラ・スチュワート・ガードナーの生涯も紹介する。

私は美術市場のドロドロとした裏側が見られるのではないかと期待していったのだが、そういう面はあまり出てこなかった。
名作絵画を「人質」にして、窃盗団ならば高い金をふんだくろうという算段だし、政治団体なら国家側に対し優位に立つ手段とする。まあ、夢もなんにも無い、そういう生臭い話なのであった。
それに対してフェルメール萌えの人びとは口々にウットリと魅力を語り、この世界的文化遺産への暴挙に怒りを表明する。

えー、どうも私があまりフェルメールの作品に興味がないのに見に行ったのが、一番いけなかったようで……
後半少し眠気虫が出現する所があった。ふと周囲を見ると客のほとんどがモゾモゾ身体を動かしているのには笑ってしまった(^O^) みなさん、同じぐらいの時間に同じような状態になるようである

アップリンクは元々小さな映画館だが、それにしても男性客の数少な過ぎ! 3人ぐらいしかいなかったような。客のほとんどは老若女性であった。やっぱりフェルメールのファンは女が多いのかな?

アンコール・ロードショーの予告をやってたレス・ポールのドキュメンタリーも面白そうだった。見に行けばよかったと後悔(+_+)


フェルメール萌え度:10点
事件解明度:2点

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2008年10月14日 (火)

ヘンデル/オラトリオ「セメレ」:神の仲間入りはできなかった女

出演:チェチーリア・バルトリ 他
演 出:ロバート・カーセン
演奏:ウィリアム・クリスティ指揮チューリヒ歌劇場・シンティルラ管弦楽団
会場:チューリヒ歌劇場
2007年1月28日、2月2、4日
*TV放映

NHK-BSでやっていたので見てみた。録画しながら見始めたのだが、おもしろくてつい最後までそのまま見てしまったのである。
クリスティは客演指揮ということになるのでしょうか? 通奏低音のメンバーも最後のクレジットに名前が出ていたので外部から呼んだのかも知れない。

『セメレ』はオラトリオだから当然演奏会方式でやるものだろうが、この公演では完全にオペラの形式を取っていた。衣装の感じだと1940~50年代?欧州の王国の社交界が舞台となっているようである。元の話はギリシア神話で、話が進むうちにこの物語を扱ったモローの絵画を見たのを思い出した。
王女セメレは婚礼の席から婚約者を放っぽってジュピター(ゼウス)の元へ。嫉妬した妻ジュノーは陰謀をめぐらしセメレの妹に化けて接近し、彼女をそそのかしてジュピターの本当の姿を見せるよう懇願させるのであった。神の真の姿に触れた、セメレは雷に打たれてご臨終……

神話とは言え、非常に人間臭~い話である(まあ、ギリシャ神話はみんなそうですが)。それをコミカルな演出を加えて面白く見せていた。ヘンデルのいささか大仰な曲調とそれがうまく合っている。
特にジュノー&アイリスのコンビは漫才のよう。セメレ役のバルトリは体にシーツ巻きつけて愛の歌を歌ったり、ジュピターをベッドから蹴落としたりして笑いを誘っていた。歌唱の方も拍手喝采。舞台装置もあまりうるさくなくてよかった。

ラストはジュピター&ジュノー臨席の華やかな舞踏会となるが、そこで徳ある行いを称える歌がコーラスで歌われる。現代人の感覚だと「どこに徳があるの?」なんて思っちゃうのだが、皮肉で笑えるオチを付けてちゃんとシメていた。

今回は動作や演技が付いてるからいいけど、演奏会方式だと「ちょっと長過ぎです!ヘンデル先生(~o~)/」と言いたくなってしまうアリアもあって、当時の聴衆はどういう風に聴いてたのだろうなんて疑問を感じたのであった。

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2008年10月13日 (月)

今村泰典バロック リュート リサイタル:問答無用リュート一本勝負

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会場:近江楽堂
2008年10月10日

ヴァイスのリュート作品集の二枚目のCDが発売された記念のコンサート。
そのCDに収録された2曲の組曲が演奏された。組曲って言っても極めて長いもので、前半と後半一曲ずつで、普通のコンサートぐらいの長さになってしまうのであった。

当日は残暑がぶり返したような結構気温が高い日で、楽器のため?に演奏中は空調を停めてしまった会場はかなり暑かった(半袖半ズボンの人もいたぐらい) 真夏は冷房きき過ぎで寒かったこともあったし、近江楽堂は寒暖についてはガマンしなくてはならない場合が多くて参るのう(´Д`)
客は関係者やリュートマニアが多かったもよう。

演奏は余計なことは一切なくサクサクと進められた。当然、拍手も組曲の終わりに一回ずつだけ。まさにリュート一本勝負のコンサートであった。もちろん「一本」といっても大型のバロックリュートなんで弦の数はやたらと多い(^^;)

こうして聴いてみるとヴァイスの曲は硬派っぽいというか、問答無用というか、隙がなく構築されているというか……アンコールのバッハのリュート曲がロマ~ンティックに聞こえてしまったほどなのであった。
そのバッハがまたえらーく速い演奏なんでビックリ。舞曲としてのアクセントをつけながらも今まで他の人の録音などで聴いたものよりも破格の超速である。思わず終了後にハイッと手を上げて「今村先生、ホントに音を飛ばさずに弾いたんでしょうか(?_?;」なんて失礼な質問をしたくなってしまったぐらい。


ところで、14日の鈴木美登里+今村センセのコンサートはますます行けなくなる公算強し。泣けるのう……(T^T)クーッ

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2008年10月11日 (土)

オーケストラ・リベラ・クラシカ第22回公演:「寿司食いねえ」とヴィヴァルディは言った

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会場:浜離宮朝日ホール
2008年10月7日

鈴木(弟)秀美率いるOLCのコンサートは何年も前に一度だけ行ったことがある。どうにもモーツァルトが苦手であった私は、もしかしてオリジナル楽器専門のOLCの演奏でなら好きになれるかと思って聴きに行ったのであった。
が……やっぱりダメだった(x_x) 以後、古典派以降の音楽は守備範囲外と定め、聴くのをやめたのである。

しかし、今回はオール・ヴィヴァルディ・プログラムではないか! しかもチラシには運営が苦しい旨が書かれていて(「今年度からは主たるスポンサーがない状態になりました」……だそうな)こりゃ行かずにいられようかってなもん。
でも、古典派ってバロックより人気がありそうなんだけど、なぜ客が入らないんでしょか 謎である。

ヴィヴァルディというと最近は録音が幾つも出ててブームのようにも思えるが、いざ実際のコンサートとなると未だに『四季』が多い。特に協奏曲をまとめて聴く機会なぞなかなかない。
この日はもう一人のチェリストのE・バルサと共にチェロが中心の曲に加え、あとは『調和の霊感』も演奏するというプログラムであった。バッハなどで通奏低音を縁の下の力持ちモードでやっている時とは全然違って、ヒデミ氏はリラックスした印象。OLCではいつもこんな感じなのかしらん?

全体的に歯切れのいい鮮やかな、しかし大仰なところのないヴィヴァルディであった。歯切れがいい演奏というと、ベルリン古楽アカデミーのディスクが思い浮かぶが、あちらは重低音が無骨なまでにゴッゴッとくい込んでくるのに対して、OLCはあくまでも軽妙である。ホールの場所が築地市場のせいかも(^^;知れんが、きっぷのよい江戸っ子の寿司屋が仕入れたばかりのネタで寿司を握って出してくれたみたいであった。

ただ、2曲やった『チェロ協奏曲』というのは初めて聴いたのだが、なんだかバロックから逸脱しているような曲調。ヴィヴァルディがこんなのを書いていたとは知らずちょっと意外だった。
それから、途中でアンサンブルが乱れた部分があったそうなのだが、全然分からなかった(大汗) さすがド素人と私を呼んで下せえ(^^ゞ

いずれにしても今後も息長く活動できるよう願っております。バロックのプログラムをやってくれたらまた行きます。


ところで謎がもう一つ。近くに座っていた若い男性が開演直前に立ち上がってどこかへ消えてしまった。最初トイレに行ったのだと思い、こんな直前に行ったんじゃ演奏が始まってしまい中に入れてもらえなくなると確信したが、その後曲間になっても休憩時間になっても戻ってこず、結局最後まで二度と現れなかった。
ということは、考えられるのは壁際か後部の空いている席に移動したということだが、でもプログラムも座席前の床に置きっぱなしで行っちゃったんだよね……。一体これはどういうことなんでしょうか(^^?ハテ

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2008年10月 9日 (木)

遂にあの『西遊妖猿伝』が再開!

《▼CLick for Anti War》の「Boichiついにモーニングにも進出/まさかの『西遊妖猿伝』復活」で知った。

長生きしててヨカッタ \(^o^)/ 諸星先生、頼んますよ~
でも「西域」の次にまだ「天竺篇」とかあるんだろうなあ(-.-)

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2008年10月 8日 (水)

「閉店休業」の知らせ来たる

コンサートの企画制作会社であるアルケミスタからメールが届いて、しばらく「休業」するという内容のお知らせであった。もっとも、メールのタイトルには「閉店」という文字が入っている。
理由等は一切分からないが、近いうちの「復活」を願っております。

ところで、目白バ・ロック音楽祭はここが担当していたはずだが、来年度からはどうなるんでしょうかねえ……。

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「落下の王国」:退屈でキレイな絵本を眺めた

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監督:ターセム
出演:リー・ペイス、カティンカ・ウンタルー
インド・イギリス・アメリカ2006年

むかしむかし20世紀初め、まだ映画がサイレントだった時代--大怪我をして入院しているスタントマンが、同じ病院にやはり怪我で入院している5歳の女の子アレクサンドリアたんと知り合い、荒唐無稽なお話を聞かせるようになります。
毎日病室にやってきては、お話をせがむアレクサンドリアたん しかし、なんということでしょう(!o!)スタントマンには隠された企みがあったのです--といっても変態なロリコンぢゃないですよ(多分)。ロリコンなどということを想像した人はさっさとトーフの角に頭ぶつけて反省するがよろし( ̄ ^ ̄)

で、この手の話だと現実は暗く殺伐としているのに対し、虚構の物語の方は楽しかったり生き生きしてたり鮮烈だったりするのですが、この映画では虚構の方が詰まらないのはどうしたことでしょうか。
いえ、各地の美しくも珍奇な世界遺産をめぐってロケし、石岡瑛子の衣装が鮮やかな冒険譚……なんですけど、ストーリーが退屈極まりなく、躍動感も緊張感もなんにもないのはいかんともし難く。登場人物に全く興味が持てず、早く次の場面行かないかなー、なんて思っちゃいました。
なんだか、作り手の創造力が遺跡やら過去の建築に頼りっぱなしのように見えました。よっぽど、クセのある患者がいる病院の現実の方が面白い……と思っていると、虚構と現実が交わってくるにつれて現実も詰まらなくなってくるのはこれまた興醒めです。こんなんでは今時のお子ちゃまたちだったらポケモン映画の方が面白いと思うに違いありません。

観光案内の絵ハガキを次々と見せられたような気分でした。キレイだとは思っても終わってみるとなんにも心に残らず
よかったのは、アレクサンドリアたん役の子がプックリしてて美少女にはほど遠いけど、こまっしゃくれててカワイかったこと(*^-^*)
あと、オープニング・クレジットがスローモーションのモノクロで印象に残りましたが、前作の『ザ・セル』では現代アートをパクリまくっていた監督ですから、これもまたアンセル・アダムスとか戦前に活躍したモノクロの写真家作品を参考にしているのでしょうか? よい子は真似しちゃダメですよ


主観点:4点
客観点:5点

【関連リンク】
《我想一個人映画美的女人blog》
まさに「激しく同意」な感想です。

《パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ》
裏話や背景など。

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2008年10月 5日 (日)

「即興と装飾の時代~ローレ、バッサーノ、ロニーニョ」:ルネサンス期ヒット曲アレンジ合戦を楽しむ

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演奏:声楽アンサンブル ラ・フォンテヴェルデ
会場:杉並公会堂小ホール
2008年10月2日

ラ・フォンテヴェルデは鈴木美登里が中心?のアンサンブルで、主にルネサンス期のマドリガーレを歌うとのこと。他のメンバーもBCJなどでお馴染みの人ばかり。
今回はヴァイオリン、オルガン&ハープ、リコーダーも加わって、16世紀あたりを中心にディミニューションという曲の装飾法を原曲と対比しながら歌うという趣向である。

ジョスカン・デ・プレの「スカラメッラ」と、それをコンペールが装飾したものと続けての演奏から始まり、サブタイトルにあげられている作曲家やパレストリーナ、マレンツィオなどが続いた。
装飾された曲は声部の編成が異なったり、楽器だけの演奏だったり、うっかりすると原曲が分からないほどアレンジされてたり--とヴァラエティに富んでいる。
鈴木女史の「いつの時代にも、音楽の世界には「ヒット曲」というものがあり、それが様々に編曲されて歌い継がれています」という解説文の通りなのがよく分かりました(^^)
この時代の曲はそもそもコンサート自体が少ないので、そういう点でも聞けて嬉しかった。(ただし、次回のクリスマス・コンサートは都合で行けそうにないのが残念)
最初、アンサンブルがバラバラに聞こえたが、後半はまとまって完璧に近づいていったんでヨカッタ。

途中で2曲ウッチェリーニという人の曲をやったが、そこではリコーダーの古橋潤一が中心になって踊らんばかりの調子で吹きまくりコミカルかつ達者なところを聴かせてくれた。ぜひ、いつかレッド・プリーストのP・アダムスと一対一のガチンコ対決をお願いします。

観客は男女比7対3というところか。しかもオバサンが多数(\_\;
杉並公会堂は休日には行ったことあるが、平日は初めて。やはり、仕事終わってから荻窪まで行くのはキツイっすよ

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2008年10月 4日 (土)

レクチャー・コンサート「古楽への扉」:北区民の皆様に感謝、ですよ

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北とぴあ国際音楽祭プレ・イベント
演奏&お話:寺神戸亮ほか
会場:北とぴあ さくらホール
2008年9月27日

10月の北とぴあ国際音楽祭に先立ち、無料のレクチャー・コンサートがあった。往復葉書で申し込むという形式で、北とぴあはほぼ満員(二階席も人を入れてたかは不明)という盛況であった。

演奏家のメンツは寺神戸氏の他はガンバの福沢宏、鍵盤(&その他)の上尾直毅、歌手はソプラノの広瀬奈緒。ステージの上にはオルガン、チェンバロ、フォルテピアノ、モダンのピアノがズラリッと並ぶ偉容(^^;である。

冒頭にまずヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」を演奏。次いで寺神戸さんの古楽についての話が始まったが、シロート向け入門編レクチャーとしてはちと長過ぎ(^=^;;;;(他のメンバーにも事前に言われてたらしい)この間に眠気虫に取っ付かれてしまった人がいるかもよ。
その後はモンテヴェルディ、パーセルで声楽、ラモーではチェンバロ、マレでガンバ--と楽器や奏法ごとの解説を合間に入れて進んだ。

後半最初のコレッリの「ラ・フォリア」では上尾氏がチェンバロとバロックギターの「両刀弾き」という高等技術も披露。もちろん、鍵盤を弾きながらギターの方はジミヘンばりに歯で演奏したのであります……冗談なので信じないように(^O^)
上尾氏は「トルコ行進曲」をモダンとフォルテピアノの双方で引き比べて聴かせるというのも実演--と大活躍であった。これによって、最初の解説では理解しにくかった「当時の楽器の性能を最大限に引き出すように作曲家は曲を作った」というのがよ~く分かった。話だけだと「だって、それなら現在の性能のいい楽器で演奏すればもっとよくなるんでは?」という疑問がわいちゃうのであったが、実際に聴いてみてナットクであった。

広瀬奈緒は得意技?ヘンデル、パーセルに加えてハイドンのコミカルな「水夫の歌」もよかった。

その他、バッハなども演奏されたが、さすがに最後のモンテクレールのカンタータに至っては、いくら「これであなたも《古楽通》です」と言っても入門したばかりの聴衆にはマニア過ぎたのでは(?_?;
ただ、客は一貫してすごく静かだったのにはビックリ。有料コンサートでも雑音が多いことだってあるのに。皆さん「よーし、レクチャー受けちゃうぞー」という心構えで来てたのでしょうか?

アンコールは再びヘンデル。しかし、こうして聴いてみるとヘンデルって希代のメロディメーカーだったんだなーと思える。後期バロック世代で最もキャッチーなメロディを書く作曲家と言ってもいいかも。

それにしても正味2時間30分!しかもタダとは信じられねえ~ \(^o^)/ これもすべて北区民の皆様のありがたい税金のおかげですうm(_ _)mヘコヘコ 北区には足を向けて寝てませんっ


さて、本番の北とぴあ音楽祭だが、今年のハイドンは守備範囲外ということで恒例のオペラはパス。韓国勢のカメラータ・アンティカ・ソウルも聴いてみたかったが、連チャンになってしまうので残念ながら回避。残るは、鈴木美登里&今村泰典という豪華ペアによる「愛の魔法」を旧古河庭園で--という絶好プログラムでチケットもしっかりゲットしたのに、どうも仕事の都合で行けないかも~(+_+)トホホ
やっぱり平日昼間の2時からというのはあまりにキビシイのよ 号泣しちゃう。

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