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2008年12月20日 (土)

「ザ・フー:アメイジング・ジャーニー」:バンドに歴史あり

081220
監督:マーレイ・ラーナー、ポール・クラウダー
出演:ザ・フーの関係者の皆さん
米国・イギリス2007年

ザ・フーのディスクって実は一枚も持っていない。そんなのに、何故このドキュメンタリーを見に行ったかというと、一つは欧米での人気に比べて日本では今イチ、いや今サンぐらいで、その落差が長年の謎で気になっていたためというのがある。確か、かつてとあるベテラン評論家が「ザ・フーなんてどこがいいのか分からん」とクサしていたほどだ。

それから、以前ロック・フェスの記録映画で2回(ワイト島と……えーと、あと一本は何だったっけ? 思い出せない)彼らのライヴ場面を見てあまりの壮絶さに呆然と口アングリ状態になってしまったことがある。その前に、モンタレー・ポップ・フェスのドキュメントでも見ていたのだが、こちらは淡々とした様子の演奏でなんてことなく見過ごしていたのだった。
だが、彼らのライヴが常にあんなテンションで行われていたのなら、なるほどその後の出番だったジミ・ヘンは対抗するには、もうギターに火をつけて燃やすしかできないよなあ、と妙に納得してしまった。
そういう面からも興味を持っていたのである。

さて、そんな彼らのドキュメンタリーを見に映画館の客席を埋めているのは、大半が団塊オヤヂ、そして残りは今時のロック小僧だろう……と決めつけて実際行ってみたら違っていた(!o!)
なんと大多数が女性、それも三十~四十代なんでビックリ。フーのファンだという女なんて今まで一度も出会ったことがない(それを言うなら男も、ですが)ので、これは意外だった。残りは若い男性--ってことで、観客層は予想とは完全に違ってた。もっとも団塊オヤヂ風の人は予告が始まってから何人か入って来てたようだが。

映画の内容の方は、デビューから今年で43年という超ベテラン・バンドの足跡を時代ごとにインタヴューで辿っていくというオーソドックスなもの。映画全体をLP(CDではない、念為)二枚組になぞらえてサイドAからDまで各曲名(それぞれ彼らの歌詞の一節を使用)をつけて章立てに使用しているところが心憎い。
当然、話し手の中心は現存メンバーのピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーで、他にマネージャーやスタッフ、家族、さらにはスティング、U2のエッジ、パール・ジャムのエディ・ベダーなどの後輩ミュージシャンも登場。
さらに当時の映像が頻繁に挿入され、そのテンポのよい編集のせいで見てて飽きることはない。

ロック・ファンなら誰でも知ってる二人のメンバーの死について、バンドの創設者&大将のはずだったロジャーの追放(未遂)劇、ドラッグ・アルコール問題、これまた有名なピートの新興宗教のめり込み問題など、バンドの暗黒面についても忌憚なく語られている。
パンク/ニューウェイヴ勃興時代についてはあっさり通り過ぎている。当時のベテランバンドにとっては、かなりの脅威だったと思うが。
ケン・ラッセルによる映画『トミー』はみんな否定的なコメントをしていたのは意外。ロック界でどう思われていようと、映画ファンから見れば映画版『トミー』は傑作・名作・怪作・珍作・奇作……dangerとにかく二つとない作品に違いないのであ~る(~ ^~)

中でも印象に残ったのは、
*ピートがロジャーの事を「他の三人は天才だったのに、彼はただのシンガーだった」と評したこと。そこまでハッキリ言いますか……(-o-;)
*キース・ムーンが最初は目ん玉クリクリしたカワイイ美少年だったのに、あっという間にオヂサン化してしまったのが悲しいdown
*有名なピートのギター壊しパフォーマンスは、金がないんで2台のギターを必死に修理しながら一晩置きに使用していたとのこと。思わず笑っちゃいました(^^ゞ
*モンタレーでのライヴをエッジやE・ヴェダーが「破滅的」(?だったかな)などと否定的な形容詞を並べつつほめていたんで、もう一度見たくなってしまった。
*1964~65年の初期のライヴ場面は、実にトンガッテいてカッコいい(メンバーは若くてみんな針みたいに痩せていたし)。あんなの自分が十代の頃に見ていたらキャーキャーhappy02言っちゃう。で、部屋にポスター張りまくって、透明下敷きに雑誌の切り抜き入れて、カバンにシール貼って……でも、今の私にはそんな気力も体力もない。これが年取るってことですかねえ( -o-) sigh...

まさに「人に歴史あり」ならぬ「バンドに歴史あり」という内容であった。ピートが「(音楽以外)なんにも共通点がない4人がずーっと一緒にいるんだ」と述べているように、下手すりゃ家族よりも長い時間をバンドのメンバーと過ごさなければならない。色々なことがあって当然か。

しかし、終盤近くでアコギ抱えたピートがロジャーと二人きりで『ティー・アンド・シアター』を演奏する場面は、山あり谷あり浮気・別居・離婚の危機など全てを乗り越えて和解した年老いた夫婦のような滋味がにじんでくるものであった。感動です(ToT)

久し振りに我がロック魂がメ~ラメラfullと燃え上がって高揚した気分になったぜい。ザ・フーのファンに限らずロック・ファン必見と言ってよいだろう。


主観点:9点
客観点:8点

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投稿: 日本インターネット映画大賞スタッフ | 2008年12月22日 (月) 14時54分

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