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2008年12月21日 (日)

結城座「破れ傘長庵」:江戸のワイドショー騒がす極悪人

081221
平成のぞきからくり
原作:河竹黙阿弥
脚本・演出:山本清多
会場:世田谷シアタートラム
2008年12月10日~14日

あやつり人形芝居の結城座、今回の演目は幕末から明治にかけて活躍した河竹黙阿弥の歌舞伎狂言である。正式なタイトルは『勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり、通称・村井長庵)』というらしい。『破れ傘長庵』というのは1963年に勝新太郎主演で映画化された時のもののようだ。
「人間」の役者に串田和美を迎え、加えて高橋悠治が音楽担当でピアノ生演奏にて客演というメンツも豪華なもんだ。

江戸・麹町の医者村井長庵は金に困った義弟(妹婿)に娘を遊郭に売るように斡旋。その直後に義弟を殺して金を強奪。自分の患者の浪人に罪をなすりつける。さらに何も知らず、娘に合わせてくれと上京してきた実の妹を手下に命じて殺害--と悪行三昧を繰り返す。

まあ、これがひたすら悪の道を突っ走り続けるだけの男が主人公という話である。原作はかなり長いもので怪談話や浪人の妻子をめぐる人情話もかなり入っていたと推測するが、その部分は結構はしょっているのだろう。
ここでは悪に邁進する長庵の人物像はもはや「不条理」に近い。

ただ、見ていて不思議だったのは串田和美が長庵と手下の三次の二役をやっているのだが、同じ場面に出ているにもかかわらず声の調子や話し方を変えるわけでもなく、ほとんど二役の態を成していないことだった。
あと、結城孫三郎もやはり同時に舞台に登場する二つの役をやっていて、片方の人形をヨッコラショと置いてもう一人の役を演ずるという現象が何度も出現した。今までの結城座ではそんな事をやったのを見たことなかったのでこれまた謎である。演出家の考えなんだろうか(?_?)ハテ

ラストは捕り物となって大立ち回り。捕り方の人形がバッサリ斬られて血を流すは、顔をパックリ切り落とされるは、とかなりアクション度・興奮度高しである。
そして捕まってもなおも全く反省なしの長庵なのであった。悪人ぶりもここまで来るともはや堅固なる信条のようだ。

こうして見ると、このような物語は現代ではドラマや映画ではなく、ワイドショーが供給を受け継いでいるのをヒシと感じた。「実の妹を殺害!」「姪をフーゾクに売り飛ばして金を横取り」「有名ディスカウントショップで居直りクレーマー」--なんて。近所の人の話「あらー、親切なお医者さんでしたよ。あんまり流行ってなかったけどね」
そういう俗悪な部分も含めて楽しめた舞台だった。

モチをのどに詰まらせた死人が息を吹き返してネコと踊る件りは笑ってしまった(^O^) ネコ踊りかわいいです。
途中で何曲か小唄(?)が歌われるが、これがピアノの伴奏と結構合っているのが不思議。
折角、結城座の先行予約でチケット買ったのに最前列だったのにはマイッタ(@_@) コンサートならともかく、芝居で最前列はないでしょう。これじゃ、ぴあで座席選んで買えばよかったよ
NHKの収録あり。そのうち芸術劇場あたりで放送か。それで再見すれば、舞台全体を見渡すことができるだろう。

なお、次回は写し絵芝居で江戸川乱歩をやるとのこと。美術担当は宇野亜喜良ということで、こりゃ楽しみよ(^^)

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