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2009年1月22日 (木)

「チェ 28歳の革命」:少年老い易く革命成り難し

090122
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ベニチオ・デル・トロ
米国・フランス・スペイン2008年

チェ・ゲバラが書いた手記を元に作られた伝記映画。2部に分けられていて両方とも130分強あるので時期をずらして公開するという形を取っている。原題はパート1・2とそっけないが、日本では異なる邦題をつけているところがうまいですね。

さて、その前半は1964年の米国での国連本部での演説やインタビュー場面で始まるが、本筋は1957年からのキューバの山間部でのゲリラ活動である。さらに冒頭と終盤に1955年メキシコでのカストロとの出会いのシーンが入る。
それより前の、どうしてゲバラが革命を志すようになったかという描写は一切ない。過去の『モーターサイクル・ダイアリーズ 』(2003年、ガエル・ガルシア・ベルナルがゲバラ役)にすべて任せたぜいっというわけか(?_?)

そのトーンは極めて淡々として地味である。しかも、ゲバラの内面に踏み込むような描写は一切ないので、その時彼が何を思っていたかとか何故そうしたのか--というようなことは観客が推測するしかない。こんな感じである。

○月×日 政府軍と交戦
○月×日 カストロたちと合流
○月×日 仲の悪い部下たちの仲裁をする
○月×日 医者として村人たちを診察
○月×日 敵基地を襲撃

--なんて、まるで再現ドラマと言ってもいいくらいだ。ただし、米国での場面がランダムに挿入されて時制が飛ぶので、そういう意味では分かりやすいとは言えないが、決して詰まらなくはない。もっとも、あまりの地味さに飽きてしまう人もいることだろう。若いカップルが客の半分以上を占めていたが、デート・ムービーには全く向いてないと思いまーす(^^;)/
また、当然あったと思われる冷戦下のパワーゲームのあれやこれやみたいな国際情勢や、イデオロギー対立については全く出て来ない(反政府勢力同士での対立は出てくるが)。つまりは「革命は現場で起こっているんだ!」に終始しているのであった。

終盤は山間部から都市部へと進軍、サンタクララを制圧し次は首都だ~と気炎が上がったところで終わる。
監督の意図では、本来は続編の方が中心のパートだったらしいので、点数は続きを見てからつけようと思う。後半はどうなるかな(^^? (続編の感想はこちら

タイトルロールのB・デル・トロはベルナルみたいな若々しさはないが、頼りになる「兄い」ぶりを十分に発揮。カッコエエです
ところで、これを見た翌日に『アラビアのロレンス』を見たのだが、T・E・ロレンスがトルコ相手にアラビア半島で戦闘を仕掛けてたのも、この時期のゲバラと同じぐらいの年齢のようだ。この若さで世界を揺るがし歴史に残るようなことをしでかすとは大したモンであるよ。( -o-) sigh...
もっとも映画自体のタッチは全く異なるんだが……。

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