「ファニーゲーム U.S.A.」:観客の期待に応えて--やるもんか!
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ナオミ・ワッツ、ティム・ロス
米国2007年
不愉快!不愉快!!不愉快!!! 徹頭徹尾不愉快
頭からしっぽの先までどの場面取っても不愉快(>O<)
まるで、不愉快さがムギューッと詰められた飾り巻きずしのよう。
図解するとこうなるだろう。
------------------ ←海苔
不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快
不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快不愉快
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いや、それだけじゃない。こうなるか。
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不愉快嫌がらせ不愉快不愉快不愉快不愉快
不愉快不愉快不愉快不愉快嫌がらせ不愉快
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時折、監督の嫌がらせ(もちろん、観客への)がまざっている。
オリジナル版(1997年)をカンヌ映画祭に出したそうだが、上映された時観客に殴りかかられなかったのだろうか?
「こんなモン見せるな、バカ~(*`ε´*)ノ☆」とか。
M・ハネケの旧作は渋谷ユーロスペースでのハネケ祭りとCS放送でのハネケ特集やDVDボックスでほとんど網羅されていたのだが、ただ一つ『ファニーゲーム』だけはそのどれにも入っていないので見られなかった。上映権とか契約か何かの関係だろうか?
そのせいか、ハネケが自分自身で米国版をリメイクしたのがこの作品である。役者と舞台は変更したが、それ以外のシナリオやカメラの位置など全て同じままだそうだ。
平和な湖畔の別荘地に休暇でやってきた家族。そこへ「卵を分けてくれ」と若者二人が闖入してくる。そして、繰り広げられる乱暴狼藉--もはやこれは不条理としか言いようがない。
直接的な暴力描写はないが、どの場面も不愉快にして暴力的な感触が覆っている。救いようがない。被害者家族の努力は全て無駄になり、観客の期待は完全に裏切られる。
おまけに、犯人がスクリーンのこちら側の観客に向かって喋るという掟破りな場面まである。こりゃ、明らかに嫌がらせである。
暴力的なエンタテインメント映画とそれにカタルシスを求める観客を風刺する意図があるのだろう。だが、にもかかわらずそれらの娯楽作品よりも群を抜いて暴力的だという始末に負えない作品である。まさに、ハネケお得意の嫌味さバクハツというところだ。
音楽もヘンデルに突然ジョン・ゾーンがかぶさるというイヤミな使い方
一番イヤだったのはラスト近く「伏線」が回収された場面とその後のヒロインの顛末。現実の犯罪においても、このように淡々と「暴力」は成されたのだろうか。そう思うと、ホントに身体全部からエネルギーが抜け落ちて行くような脱力感に襲われた。
あと、なんとなく落ちた卵を片付ける場面も非常に印象に残った……(~_~;) なんだか、モノの撮り方がいかにもハネケっぽい感じ。
観た後もずーっとこの不快感は残り、その夜の夢にまで不快な感触だけが出てきた(映画のシーンとかが出てきたわけではない)。
それにしてもこんな映画を花のクリスマス~正月期間に上映する興行側の蛮勇には恐れ入る。これも観客への嫌がらせですかっ
夫婦役のナオミ・ワッツ&ティム・ロスを始め、役者には文句なし。アクの強いT・ロスが温厚にして平凡なる父親を演じていたのはやや意外か。一方、N・ワッツの鼻水垂らしての熱演には、参りました<(_ _)> おまけにプロデューサーの一人に名を連ねているのだから、かなりこの役に熱が入っていたに違いない。女優魂とはこのことかっ!てなもん。
ただ、若いモン二人については、オリジナルの方はもっとイヤ~な感じなんじゃないかなと思えた。ということで、オリジナルの方も見てみたいが……中古DVDに十倍の値段が付いてるんじゃどうしようもない(´Д`)トホホ
ところで、年齢制限は日本だけが12歳と一番低い(米国ではR指定)。他のネット上の感想を見ていたら、バカな若いモンが真似すると困るから25歳未満お断りにしろという意見があって笑ってしまった(^O^;が、そんなことしなくても客席を見渡したところ25歳以下の客はいなかったようなので安心だろう。
なお、パンフを買ったがハネケとN・ワッツのインタビュー以外は読むべきところはなし。700円ムダにしたぜいっ(~_~メ) 卵持って暴れてやる~。
主観点:9点
客観点:7点(オリジナル見てたらどうかな? 他人には薦めないよ)
【関連リンク】
《我想一個人映画美的女人blog》
オリジナルとの比較(画像付き)あり。
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