「天使の眼、野獣の街」:犯罪中はケータイ所持禁止
監督:ヤウ・ナイホイ
出演:レオン・カーフェイ、サイモン・ヤム、ケイト・ツイ
香港2007年
ジョニー・トー監督の『エグザイル/絆』が昨年の各種ベストテンに入ってるのには、ちょっと驚いた。そもそも脚本もなしにかなり力を抜いてシュミで作ったという作品である。笑って楽しむのはいいとしても、ベストに入れるようなモンかい(?_?;--というのが、正直な感想だ。
さて、私同様『エグザイル/絆』にご不満の諸氏に是非オススメしたいのが、この作品。トー組で脚本を書いていたというスタッフの初監督作であるとのこと。これがなかなかの出来だった。
冒頭、学生風の若い女が中年男を尾行するのと並行して、別の男たちが宝石店の周囲をウロウロし始め、何事か起こりそうな気配である。しかし犯罪が行われるまで、誰がどういう立場なのか見ていて分からない--と、つかみはオッケーだぜ
途中に派手な銃撃戦やカーチェイスもあるが、描写のほとんどは地味な尾行や張り込みに費やされている。しかし地味とは言え、ディテールの細かい積み重ねによって緊張感が途切れることはない。伏線の張り方もうまい。
物語は新米の女性捜査官の成長譚でもあるが、そのヒロインを演ずるのはミス香港だったというケイト・ツイ。ブスっつらの女子大生風の外見でとてもそんな風には見えないが、ラストでOL風のいで立ちで登場すると……な、なるほど(^o^;と納得する美人ぶりでありました。
映画初出演とのことで、早くも今年の新人賞候補出現かも。
彼女の周りを取り巻く捜査官&犯罪者はトー組の常連役者ばかりで、特に『エレクション』でのサイモン・ヤム×レオン・カーフェイの対決復活が嬉しいぞっと \(^o^)/
ヒロインの上司役サイモン・ヤムは最初に登場した時、すごいメタボ腹になってたんでビックリしてしまった。しかし、役の設定として詰め物をしていたらしい(;^_^A 焦ったぜい。とはいえ、役柄は打って変わって「理想の上司」役であります。
感傷的な場面になると俄にテンポが遅くなったり、物語の細部がおかしい所(隠しマイクがあるんだから、さっさとそれで救急車呼んでもらったら?)も若干あるが、警察もの犯罪ものとしては満足できる水準なのは間違いない。
とにかく突出したヒーローものではなくて、捜査側も犯罪者側もプロとして共同作業に徹している話なのがいい。
それなのに映画館に客がまばらだったのは何故だ~
チラシにも書いてあったが、日本でリメイクされるとのこと……(>_<)今からイヤ~な予感。
ところで、捜査官が隠しマイクを通して例え話を警察側全員にする件りが登場するが、これは元々よく出てくる設定なのだろうか? もしそうでなかったら、恐らく元ネタはTVドラマの『クローザー』だろう。第2シーズンの最終回でヒロインが張り込み中の部下たちに隠しマイクを通して「国王に仕えるか教会に仕えるか」という例え話をする場面が登場するのだ。
さてもう一つこの映画の中で詳細に描かれているのが、監視カメラやカード使用チェツクなどによる監視体勢である。中でも携帯電話の位置をリアルタイムで追跡する一連の場面には驚いた。フィクションでここまではっきり描いたのは、少なくとも私は見たことがない。
以前読んだ斎藤貴男のルポによると、特定の携帯電話をある時点から追跡を開始することはもちろん、過去に遡って場所を調べることも可能だそうである。
しかも、携帯は電源を切っても微弱な電波を発信しているので、オフにしていてもバッテリー切れにならない限り分かるそうだ。
--ということで、皆さん悪いことをする時には必ずケータイは置いていきましょう。あ、もちろんスイカの類いも使っちゃダメですよ(^o^)b 履歴がバッチリ出るそうですからね。
主観点:8点
客観点:8点
【関連リンク】
《OnFire》
邦題についても、批判が多いようです。
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