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2009年3月15日 (日)

「ヴァイヒェンベルガーとバッハの音楽」:職人奏者と万能作曲家の間に

090315
CD「ヴァイヒェンヴェルガー」第46回レコードアカデミー賞受賞記念
演奏:佐藤豊彦
会場:近江楽堂
2009年3月13日

サブタイトルにあるように世界初録音であるヴァイヒェンベルガーというリュート奏者の作品集(正式なCDのタイトルは『華麗なる様式』)の受賞記念コンサートである。過去にこのコンサートでも演奏されたことがある。

--といっても、あまりにマイナーな作曲家のせいか会場は満員御礼とはいかず、残念ながら4分の3くらいの入りであった。
ガット弦のため始まるまでは空調が生暖かい温度に設定され、開始直前に切られてしまった。空調の風と乾燥が弦に致命的だそうだ。そのせいもあってか、今宵のリュート様はCDで使用された齢400歳の「グライフ」ではなかった。

佐藤師匠の前説によるとこの作曲家(バッハより10歳ぐらい年上)は、本業を別に持っているリュート奏者(当時はそういう人がほとんどだった)であり、音楽専門の職業にいたわけではなく、ただリュート一筋にやっていた音楽家とのことである。
つまり、その楽器の世界だけに通じた職人だったそうだ。その良さはガット弦を使うようになってから気づいたという。
もっとも、ヨーロッパ各地で楽譜が見つかっていることから、当時の人気作曲家であったことは間違いない。

一方、バッハは彼に比べて遥かに作曲家として格上で、どんな楽器でもオールマイティでいかに崩して演奏しようとやはりバッハの作品であり続けるが、リュート曲を見るとこの楽器の特性があまり生かされている作品とは言えないという。(以前から「バッハは本当にリュートを弾いたのか疑問」説がある)

そこで前半のプログラムは、CD収録の曲とバッハのチェロ組曲第3番を編曲したものが両作曲家の違いを比較するように演奏された。
このように二人の作曲家を比較するように並べてみると、なるほど両者の違いがよく分かった。
後半はCD録音後に手稿譜から見つかった曲が中心。そしてアンコールはやはり同じ手稿から発見された、作者不詳だがヴァイヒェンベルガー作と推定される「シチリアーナ」だった。
どの曲にしても近江楽堂のような極小ホールでしか聴けないような('-')味わいであったよ。


さて同じ夜、オペラシティのコンサートホールでは「ウルトラセブン」の音楽会(?)をやっていて家族連れで大盛況だったし、リサイタルホールではスペインのギター音楽の公演あり、新国立劇場では『ラインの黄金』、中ホールの方ではプーランク……と極めて狭い区域の中で各種の西欧音楽が同時に演奏されていたのだった
す、素晴らしい文化国家(!o!)--というより、なんかよくよく考えると奇妙な感じを受けるのは私だけか。

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