「シリアの花嫁」:出戻り禁止!情無用の国境線にヨメの涙は渇く間もなし
監督:エラン・リクリス
出演:ヒアム・アッバス
イスラエル・フランス・ドイツ2004年
題名や宣伝からてっきり「花嫁」が主人公かと思っていたら、そうじゃなかった。主人公は花嫁の姉の方だったのだ(!o!)
元は一つの地域だったのがイスラエルの占領により二分され、親類縁者も分断されて会うこともできぬ村が舞台の物語である。このような歴史的背景については全く知りませんでした(・・ゞ 無知です、反省。
その村のとある家族の娘がシリア側に嫁に行くことになったが、一度国境を越えたら二度と戻っては来れない。しかも、この家族には色々と過去のトラブルがあって、一家が集まるこの機会にまた噴出しそうな雰囲気なのだった。
花嫁は会話から推測するとどうも出戻り(?)らしい。長女である姉はダンナとうまく行ってない(だから余計に妹には幸せになって欲しい)。その弟は異教徒と結婚して勘当状態、父親は政治犯で警察に目をつけられてる--などなど。
というのが前半で、後半はようやくイスラエルの国境を越えて緩衝地帯に出るが、手続き上のトラブルと両国の担当官とシステムのせいでシリアに入国できなくなってしまって右往左往という羽目になる。
膠着した状態で何の解決策も見出せない時に、打開するために花嫁はある行動を取る。それを見た姉もまた決意して新たな行動を取る。二人の歩む方向は全く正反対であるが、実質的には全く同じなのだ。
こう書くと二人の女性の生き方の話のようであるが、国境で右往左往する中の一人であるフランス人赤十字職員をまじえると、同時に中東問題で困惑する西欧諸国への皮肉も入っているという解釈も成り立つとのこと。
まことに、国際紛争なテーマを扱いながらユーモラスで、一人の登場人物も無駄なことなく生きているし、自国の政策への皮肉な部分もあるが、泣かせる場面もあり(終盤で鼻をすすっている人が結構いた)よくできていて文句は全くない作品である。
……とほめた所でナンなのだが、だからと言って個人的にこの作品が好きかというと、困ったことにそういうわけではない。ひねくれ者にはよく出来過ぎた映画なんだよねー。もっとブチ壊れたヤツが好きさ
やっぱり岩波ホールは鬼門かね(x_x)
で、結局は「まー、あの花嫁さん向こうのゲートは通れるのかしらねえ、心配だわー」という近所のおばさんモードの感想にまたも落ち着くのであった。
主観点:6点
客観点:8点
【関連リンク】
《遥か遠くへ》
背景が色々と分かります。どうして国境の向こうに別の弟がいるかなーと疑問だったが、納得しました。
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