「ジョン・ダウランド物語~あるリュート弾きの生涯」:「流れよ、わが歌」とダウランドは言った
音楽・詩・影絵による物語
演奏:佐藤亜紀子ほか
会場:浅草聖ヨハネ教会
2009年3月28・29日
*新年度で忙しくてなかなか記事を書くヒマがありません、トホホ(+_+) これもかなり遅れてしまいました。
ジョン・ダウランドの波乱の生涯を歌と演奏、朗読、さらに影絵で辿るという豪華企画である。会場は文化財に指定されている由緒ある浅草聖ヨハネ教会だ。
メンツはリュートの佐藤亜紀子を中心に、リコーダー、歌手は広瀬奈緒、上杉清仁など四人、ナレーターと、さらにダウランド役のティモシー・ハリスである。
ナレーション担当の森紀吏子は音大を出ていて、さらに芝居もやっているという人らしい。ハリス氏はムジカーザでのモンテヴェルディ「オルフェーオ」の演出を担当もしていた。
内容はダウランドの生涯を影絵やナレーションで紹介し、それに合わせてその時に作られた曲が演奏されていく。また彼の欧州の旅に合わせて同時代のマレンツィオ、カッチーニの曲も歌われた。
そして合間に当時の衣装を付けたハリスによるダウランドの手紙や歌曲集の序文などの英語の朗読が挟まれる。ラストはシェイクスピアの詩でしめくくりだ。
--というような大変盛り沢山で贅沢な趣向で、女王付きのリュート奏者になれずに遥かデンマーク宮廷まで出稼ぎし、さらにはクーデター計画に巻き込まれそうになって焦ったり……と「いつも泣いちゃうダウランド(;_;)グスン」な一生が綴られた。
演奏は申し分なく、しみじみとしたリュートの独奏や四人の歌手の歌も聞き応えあるものだった。
特にソプラノ+バス二重唱の「流れよ、わが涙」がよかった。また、上杉氏独唱による「暗闇に僕は住みたい」はかなり劇的な歌い方でいささか意外。あんまり盛り上げ過ぎに歌わない、というのがダウランドの定番だと思ってたんだが
最後に佐藤亜紀子が、この企画は長年の夢で台東区の支援制度を受けてようやく実現したという話をした。アンコールはなんと日本語で客席も一緒にダウランドの曲を歌うというものだった。
古い教会が会場だというので、目白の教会みたいに靴を脱ぐのかと思ったら、靴カバーが配給された(^^;)
私は「アントレ」誌の公演情報欄で発見しただけで、他ではチラシも見かけなかったのに会場は満員御礼だったのは驚いた。補助席も出たようだ。客は音楽関係の同業者も多かったみたいで、「スパラの貴公子」ことバディ様も来ていた。
さて、最後に関係者の努力の賜物でこのユニークな公演が実現したというのを承知しつつ、幾つか問題を上げさせて頂きたい
会場は残響が少ないもののなかなか聴きやすかったが、ステージにあたる部分(祭壇がある場所)が奥に引っ込んでいるのと床が平らなので、単純な楽器のアンサンブルならともかく、このようなパフォーマンス性のある公演には向いていないと思った。私の位置からだと説教に使う演台?みたいなもので半分ぐらいの歌手が見えなかった。またハリス氏が床に座った時は全く見えず。
さらに影絵、ナレーション・朗読、生演奏と盛り沢山過ぎて、客はどこを見ていいのやらワカラン(?_?;な状態になりがち。おかげで、なにか中途半端な感じになってしまった。
私はてっきり「影絵」と聞いて、結城座の写し絵公演のように影絵をドーンと真ん中に据えて投射して、脇で演奏したり時折演者が現われるのかと思っていたのだが、そうではなかった。影絵は脇のスクリーンに映されるだけでいささか添え物っぽい印象だ。投射装置を持ちあげて周囲や後方の壁に映したりしてたけど、あまり効果的ではなくて残念である。
--とケチつけてしまったが、また素敵な企画をよろしくお願いします
【関連リンク】
浅草聖ヨハネ教会についてはこんなニュースがあった。
これが頭にあったので周囲は住宅街かと思ったら、殺風景なビルと駐車場などが続く典型的東京の裏町だった。
ここにも「壁」が存在するようである。
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