バッハ・コレギウム・ジャパン第84回定期演奏会:主よ、我が箸は宙に虚しく舞い(ソプラノ・アリア風に)
バッハ=メンデルスゾーン「マタイ受難曲」(1841年上演稿)
会場:東京オペラシティコンサートホール
2009年4月10日
今年の聖金曜日のコンサートは、歴史的なメンデルゾーンの「マタイ」復活演奏を復元するという試みであった。
バッハ先生が忘れ去られて幾年月……ようやく若きメンデルスゾーンがなんとかして「マタイ」を復活させようとするもそれは容易ではない。パンフの解説を読むと、そもそも楽譜を入手するのも簡単ではないし、演奏者のメンツを揃えるのも難しい。おまけに使われなくなっちゃった楽器もあるし~(T_T)グスン、という次第。それで、かなり改変・省略を加えて演奏されたらしい。
しかし、このメンデルスゾーンの熱意がなければ、今のバッハ先生の地位と人気はなかったはず。「バッハ?はぁ(~д~;)どこの田舎者よ、それ」などと2ちゃんあたりでクサされるのが関の山であろう。
そんな訳で、バッハファンはメンデルスゾーンの墓の方向には足を向けて寝られないのであ~る
えーと、でも実は彼の墓ってどの方にあるのかよく知らないんですけど(^^ゞ
とはいえ、個人的にはメンデルスゾーンは完全守備範囲外…… だが、定期公演だからチケットがあるし行かねばならぬ。大丈夫かしらん(=_=;)
--などと心配しつつ京王新線に駆け込んだのであった。
さて、楽器を見るとヴァイオリンは弓を時代に合わせたものに変えているもよう。管楽器はクラリネットが入っていたが、第1曲めでは「ええ、クラリネットってこんな音だったっけ?」みたいな意外に鋭い高音が聞こえた。
エヴァンゲリストは常連テュルク氏だったが、いつもよりさらに感情を大きくこめている感じ--ロマン派風に合わせたんでしょうか(^^?
イエス役のドミニク・ヴェルナーはちょっとつんのめるような歌い方がどうも好きになれず、さらに語尾のtの音がすごーく気になってしまった。
近年、常連となったレイチェル・ニコルズはさらに外見の貫禄度アップして登場。いつも通り安定した歌唱を聞かせてくれたが、特に49番のソプラノ・アリアが泣けました。
ペテロを指弾する「女中」役というのはオリジナル版では合唱の中の一人が歌うのだが、この日はニコルズ女史がやった。で、今までこの役というのは聴く度になんだか下手くそに思えるというか、変な風に聞こえて謎に感じていたのだが、彼女が歌うとさすがにまともに聞こえた。やはり、歌うのが難しい所なんざんしょか(トーシロには分からず)
アルト独唱は加納悦子という人。初登場だと思うけど、この人選は何故?? 演奏時代を意識したのでしょうか。
冒頭、鈴木(兄)氏が登場して事前解説したように、かなりのアリアやコラールが省略されていた。全体の時間が短くなったのはいいが、言わばおいしい部分、感動のツボがかなり無くなってて、ガックリ感は否めず。
例えば、ゴハンを食べる時にまずお味噌汁をすすり、ご飯を一口食べ、さておかずは--と箸を伸ばしたら
オ カ ズ が ね え ~ ~ っ (>O<)
状態なのであった。
余計なアリアを飛ばして受難のストーリーを優先させたということらしいが、樹村みのりの名言によれば「人はパンのみにて生きるにあらず。オカズもいるんよ」なんである。こりゃ、あんまりだいっ
ということで、第一部はエヴァンゲリストとイエスの対話劇のようになってしまい、イエスが引っ込む第二部の前半になるとエヴァンゲリストの一人芝居状態になってしまったのであった。だから、テュルク氏大活躍で大変だ~ 終盤には、歌の途中で咳き込んでしまう場面もあった。
一方、イエスの死の直後のコラールが完全に無伴奏だったのは、ネット上の感想では賛否両論状態だが、私には新鮮な感じに聞こえてよかった。
ただ、弦を重ねた通奏低音の響きには最後までどうも慣れることができなかった。
最終的な結論としては--
名曲はいかなる演奏形式でもやっぱり名曲であった。
フライング拍手が全く無しでメデタイ \(^o^)/
それにしても、チケット取ってないラ・フォル・ジュルネの「ヨハネ」に猛烈に行きたくなった。でも、時間が遅いんで万が一爆睡してしまうとなあ……(・・ゞ
他の感想を読んでると「マタイを初めて聴いた」という人が何人かいた。やはり鈴木(兄)氏が事前に解説をしたのは正解です
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コメント
こんばんは
ワタシはいくべきか迷った末、やめました^^;
が、記事拝読するとなかなか面白そうで・・
クラリネット入りかあ・・
しかし、マタイ初体験がメンデルスゾーン版というひとがいるなんて、スゴい事ですよねえ!
投稿: manimani | 2009年4月20日 (月) 00時07分
私も実際に聴くまではどーなることかと思いましたが、終わった後には若きメンデルスゾーンに「あんた、ようやった!ペシペシ(←肩を叩く音)」と言いたくなりました。
ただ、BCJの楽器陣、合唱陣はさることながらG・テュルクの存在は大きかったと思います。他のエヴァンゲリストだったらどんな風になってたか……。
|マタイ初体験がメンデルスゾーン版
ワハハ(^o^)、当時の聴衆そのままですね。
投稿: さわやか革命 | 2009年4月21日 (火) 05時59分
今回の上演はマタイの異稿の一つとして、1841年版を取り上げたような印象で、鼻息も荒くメンデルスゾーンの演奏を復元する!と、意気込んだものではなかったようですな。
投稿: Pilgrim | 2009年4月22日 (水) 22時00分
|復元する!と、意気込んだものではなかったようで
あ、そうだったのですか。そこら辺の裏事情は全く知らなかったもので。
私としては全く期待して無かった分、予想より良かったのでホッとしました。
ということは、本気で「復元」したら聞けた代物ではなかったということですかね
投稿: さわやか革命 | 2009年4月23日 (木) 00時53分