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2009年4月27日 (月)

「ウォッチメン」:洪水の後で

090427
監督:ザック・スナイダー
出演:マリン・アッカーマン、ビリー・クラダップほかスーパーヒーローの皆さん
米国2009年

ハードボイルド・ミステリにしてサイコ・サスペンス、さらにアクションたっぷりのスーパー・ヒーローもので、平行世界ものにして思惟SFで、三角関係の入った恋愛もの、かつ親子の絆について考えさせられ、おまけに米国近現代裏面史でもある……これだけの要素をすべて備えている作品なんて一体存在し得るだろうか?
しかし、間違いなく『ウォッチメン』はこれら全てに当てはまるのだ。上映時間が3時間近いのもこれじゃ致し方なし。

平行世界とおぼしき1980年代半ばの米国。ニクソンが五期連続の大統領を目指す独裁政治体制下、米ソの冷戦は極限状態まで来て、核戦争の恐怖が世界を覆う。
--という設定だが、なんだかヒーローもののパロディっぽくもある。大体にしてヒーローに世襲やら「二代目」とかあるんですか(^^? 例えば目の前でいたいけな子どもが危機に陥ってても「あたしはもう引退しましたから」って助けないの? そのうち「本家」とか「元祖」とかも出てきたりして(^o^;
登場するヒーロー自身たちも「はて?誰かのバッタモンか」と思うようなヤツばかりで、これまたパロディっぽい。

さらに、「ヒーローの正義」もかなり怪しい代物として描かれる。その時の「正義」に基づいて彼らの何人かはケネディ暗殺を実行し、ベトナム戦争でベトコンを降伏させ(何せスーパーヒーローだから無敵なのだ)、返す刀で国内ではラブ&ピースを掲げる市民デモをぶちのめすのである。

そんな元ヒーローの一人の殺害事件を発端として、ぶっ飛んだキャラクターに加え、実在の人物(キッシンジャーやらアイアコッカとか、カメラマンのウィージーも)が入り乱れ、背後にはロック・ポップスの名曲が流れ(ジミヘン、ディラン、ネーナ←チョ~懐かし過ぎnotesシメはレナード・コーエンと来たもんだ)、破天荒な展開を見せる。
おまけに、暴力についての問答を繰り返しているわりには、アクションシーンはグロ度バイオレンス度スッキリ度高くて笑っちゃったし、またヒーロー同士の三角関係の描写はくどくて大半の観客には退屈だろう。しかも、神に比類する超人になっても三角関係でもめるとはこれ如何に(?_?) そんな超人になったら女など分子の固まりにしか見えんと思うがどうよ?

最後に登場する「真の悪役」の意図は、正しいんだか悪いんだか判然としないままに終わる。その論理は汎地球的な規模で考えれば正しいように思えるが、個人的なレベルでは到底受け入れることは出来ないものだ。ここら辺のところは観客の見方にゆだねているのだろうか。
私には、終盤近くの飛行船が浮かんでいる平和な光景の描写は、いわゆるパクス・アメリカーナを皮肉って表現しているようにしか見えなかったが……。
そう考えれば「今時、なんか冷戦とか核戦争とかズレてねえ?」という疑問も納得行く気がしなくもない。

そのせいか、ネット上の解釈は人によってすべて異なる。また、そもそもこの物語のどの側面に注目するかも違っている。
それにしても、「思惟SF」というジャンルに久々に接して軽く驚きを感じると同時に、このジャンルが過去のものになってしまっていることを痛感した。

もっとも、血塗られたスマイル・バッジ、頻出する飛行船、ラストの新聞社の場面などの意味は原作を読まないと分からないそうである。そりゃ、困った(~_~;)

ネットの感想が様々だと書いたが、ただ一つ多くに共通していたのは「ロールシャッハかっこエエ \(^o^)/」であった。「ドクター・マンハッタンみたいな超人に憧れます」とか「非モテ男に希望を与えるナイトオウルばんざい」とか書いてるヤツは一人もいないぞ(当たり前か(^^;)。
私もロールシャッハ断固支持。いよっ、漢の中の漢fuji 最初から最後まで正統的なハードボイルド・ヒーローである。イーストウッドを小粒にしたような素顔(ジャッキー・アール・ヘイリー)も良ok
原作では、本人の感情によってマスクの模様が変るとされているらしいが、そうするとホレた女の前ではheart01模様になったり、ぶん殴られて気絶する時はtyphoon印になるのでしょうか? 恥ずかしいミスをした時は (^^ゞ とか可笑しい時は (o_ _)ノ彡☆ギャハハハー とか--え、そりゃロールシャッハじゃなくてフェイスマークだろってbomb
ということで、頭からモニターをかぶったフェイスマーク・マンの登場を希望(^-^)/

と、まあツッコミどころはいくらでもあって長文の感想を連ねられるわけではあるが、だからといって評価が高いかというと……うーむ。
別の監督がやったら、もうちょっとうまく演出できたんでは?という疑念はぬぐい切れず。ラストの判然としなさもあって、点数減。問題作だとは思うけどさ。

ところで「引退した元・悪役」の役をやっていたのは、これまたお懐かしや『マックス・ヘッドルーム』のマット・フルーワーだった。見てる間は全く分からなかった。


主観点:7点
客観点:7点

【関連リンク】
三者三様の意見をご覧ください。
《Badlands》
《まどぎわ通信》
《ノラネコの呑んで観るシネマ》

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コメント

はじめまして。ウォッチメンの検索で来ました。
じつはアメリカのヒーローコミックでは、ヒーローの世襲や代替わりはごく普通のことで、アメリカ人はナイトオウルやシルクスペクターが二代目になっていることに疑問を抱かないのです。
有名なところで、バットマンの相棒のロビンは四代目までいます。バットマン本人も、ブルース・ウェインが重傷を負ったときに、別のヒーローが一時的にバットマンになってました。
引退していた先代が復帰して、同じ名前のヒーローが同時に二人いることもあります。

投稿: any0ne | 2009年4月28日 (火) 06時33分

米国ヒーロー事情についてありがとうございます。そういうヒーロー観というのは門外漢にはなかなか理解しがたいところがありますね(^^;

|引退していた先代が復帰して、同じ名前のヒーローが同時に二人いる

や、やはり「本家」と「元祖」……bomb

投稿: さわやか革命 | 2009年4月28日 (火) 07時03分

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