「ミルク」:この映画に理解を示すのが自らの寛容度を示す事になる--というわけでもあるまいよ
監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ショーン・ペン
米国2008年
ガス・ヴァン・サントの映画を見たのはこれで三作か四作目。だが、実はこれまでいいと思ったことがない。それでも見に行ったのはハーヴィー・ミルクを題材にしているというのと、ショーン・ペンが2度目のオスカーを獲得したという話題からだ。
ミルクのドキュメンタリー映画は今を去ることウン十年前公開当時に見た。確か旧ユーロスペースだったと記憶している。ナレーションがなく関係者の証言だけで綴っていくタイプの作品で、ラストのキャンドル行進の場面は今でもよく覚えている。
さて、「暗殺されたゲイの政治家」としての公的部分をもっぱら描いたドキュメンタリーに対し、こちらでは私的な部分も多くを占めている。ニューヨークのサラリーマン生活を捨てサンフランシスコへ移住した経緯、恋人とのドロドロしたもめ事などもシッカリ描かれている。また、主人公の活動とゲイ・リベレーションの盛り上がりが時代的に同期しているのも興味深かった。
で、役者たちの演技や当時の風俗描写(ここぞという場面以外では、あまりその頃の音楽を使ってないのがいい)は文句ないのだが、『フロスト×ニクソン』同様に演出や脚本の方に今イチのれなかった。なんだか、このままではミルクはエエ奴だったんよ風の「美談」に収斂されていってオシマイではないの。いや、別にもっとドロドロした部分とかエグい面を見たいということではないんだが。
以前、音楽雑誌でニルヴァーナの影響大らしいバンドへのインタビュー記事で、『ラストデイズ』(カート・コバーンの自殺直前の数日を描いた作品)を見たかと尋ねられたメンバーが「だって、ガス・ヴァン・サントが描いたカート・コバーンだろ。そんなの見たくないよ」と答えていたのを思い出した。
「見たくない」とか「詰まらない」とは思わんがいささかビミョ~なのは確かである。
役者はショーン・ペンだけでなくて、他も個性的な面々をうまく演じていてヨカッタ。特にエミール・ハーシュが登場する場面はあまりにうま過ぎて笑ってしまった。ゲイに限らず、ああいう若い子っているよねー
いや~、それにしても皆さんイイ男ばっかりスクリーンに続出で、目の保養をさせて貰いました(*^O^*)ヘッヘッヘッ(←なぜかまたも下卑た笑い)
そのためか、予告がやたら女性向け映画ばかりで変だなと思ってたら、客電着くと客はほとんどが女ばかりでしたな。
事前に「男同士のラブシーンには耐えられず目を背けてしまった」などという感想を目にしていたので、どんなもんかと不安にドキドキして行ったら、そんな大したもんではなかった ヤヲイ本に日ごろ慣れ親しんでいるフ女子が期待するような場面は一切ありませんのでご安心下さい(^-^)/……って、そういうことぢゃないか
ところで、主人公が市政執行委員になるあたりまで集会場所に一人だけ場違いな感じで、かなり高年齢なオヂサンがいつもいたんだけど、セリフは一言もないし……もしかして当時の実際の関係者が特出していたのか?
まあ、この映画の評価はなんであれ、自らの内部の差別意識(私にももちろんぬぐい難く存在する)や自らが属する社会の差別の存在に目を向けなければ、所詮これは「遠い国の遠い時代の悲しい美談」として消費されるだけだろう。
ちなみに、しばらく前に新型豚インフルエンザの患者が出たと報道された高校(検査の結果、該当しなかった)には嫌がらせの電話が相次いだという話を聞いた。
……これがワシらの社会ですよ。大したもんで \(^o^)/
主観点:7点
客観点:7点
←前売券買ったら貰えました(^^;
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