「フロスト×ニクソン」:敗因分析なき再現試合
監督:ロン・ハワード
出演:フランク・ランジェラ、マイケル・シーン
米国2008年
1977年に実際に行われたニクソンへのTVインタヴューを元にした芝居を、さらに映画化したものである。アカデミー賞にもノミネートされた。
『ウォッチメン』にも登場していたニクソン。日本だと一般的には「そんなヤツもいたよなあ」というイメージだが、こうしてみるとアメリカだとやはり象徴的存在のようだ。すなわち「不正」と「誠実」についての、である。
片や政界復帰を狙う大物政治家(演じるF・ランジェラは顔がご本人に似ているというわけではないのが面白い)、片や人気に陰りが指すTV司会者(M・シーンはまさにTV向けニッカリ顔でいつも笑いを浮かべて見せる)の顔合わせ。劇中では明らかにこのインタヴューはボクシングの試合に例えられている。
ランキングも経験も違い過ぎる二人の選手、しかも若い方は無理してウェイトを増やして挑戦しているようだ。格の差も甚だしい……
それを取り巻く調査スタッフやプロデューサーはトレーナーやセコンドか。リングサイドから応援する恋人の存在も欠かせない。一方ニクソンには将校上がりの忠実な部下がいる。
試合の結果はもちろん若い挑戦者が最後に必死の一発を放って大逆転するのだが(そうでなくては映画にする価値はない)、それをまた周囲の人間がまるで擬似ドキュメンタリーのようにカメラに向かって当時のことを解説するという形式を取っている(語り手の氏名のテロップまでそれらしく出る)。
しかし、にもかかわらずなんでニクソンが敗退したのかよく分からない。深夜の電話のエピソードは実話ではなくて創作らしいが、そうでもしないと納得の行くような辻褄が合う話に出来なかったのだろうか。
そのせいか、肝心の「試合」より周辺の状況やエピソードの方が面白いのはちと困ったもんだ。
一体、作り手は世紀のインタビューを描きたかったのか、それともニクソンという政治家として複雑なキャラクターを分析して見たかったのか、それともメディア論を「絵」にして見せたかったのかとっ散らかった印象だった。
それぞれの役者は文句なかったけどね(^o^)
オリヴァー・プラットお肉がさらに増えていた。サム・ロックウェルいかにも生意気そうなインテリのジャーナリストを好演。
主観点:7点
客観点:7点
余談だが、TVドラマの『ザ・ホワイトハウス』が滅法面白くなってきている。外交ネタは「オレ様アメリカ」みたいな感じでどうも敬遠したくなったが、大統領の任期が残り一年となって候補者の予備選挙も始まり、見えざる陰謀やら駆け引きやらのウラ話が出てきて「そんなこともやるかー」で口ポカン(~o~)状態だ。
米国では大統領選候補こそが、ひたすら握手して回り顔を売るどぶ板選挙をしなければならない、というのは初めて知ったですよ。
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