「ブッシュ」:大統領になっても不肖の息子
監督:オリヴァー・ストーン
出演:ジョシュ・ブローリン
米国2008年
ハリウッド最強のオヤヂ監督(←無論ホメ言葉である)オリバー・ストーンが大統領選直前に超スピードで撮りあげたというウワサの作品。
ブッシュ前大統領(と言っても、これが米国で公開された時はまだ現職だったんだが……)の青年期から、大統領となってイラク紛争の泥沼へはまり込むまでを辿るという作品。名優たちが実在の政治家を演じているが、これが再現フィルムというか毎度おなじみ年末の隠し芸大会みたいな印象である。全く重厚さはなくて極めて軽い。
スタッフとの重要会議も全く緊張感ナシ。TVの『ザ・ホワイトハウス』に比べると雲泥の差である。もっとも、向こうのバートレット大統領はノーベル賞受賞者だしなあそもそも、そこら辺の違いかしらん。
しかし一方でSNLとか日本のザ・ニュースペーパーみたいな笑いや風刺テイストもなく、かなり真面目なトーンなので客の方はどう見ていいのか困っちゃうのだ。
強大なパパ・ブッシュにいつも優秀な弟と比べられ、学生時代のバカ騒ぎや女性トラブルを尻ぬぐいしてもらい、仕事をしても長続きせず……というようなボンクラ息子状態をO・ストーンはかなり同情を持って描いている。なんでも彼の父親もかなり強権的だったそうで、そのあたりかなり共感しているようだ。
結局、大統領になっても認めてもらえず、パパがやっつけられなかったフセインを叩きつぶしてやるんだいと始めた戦争は収集もつかぬまま……。
ということで、大統領選直前の「2時間で分かるイラク戦争の泥沼への道」という復習として見るには最適で、よーく分かった(^_-)b
父子の悶着も普通の家だったら別にいくらやってくれても構わないが、大統領一家となると地球規模で迷惑だからやめて欲しいのう(^○^;)
しかし、日本で公開するにしても大統領選直後ならまだしも、今になってなぜという感はぬぐえない。さらにどうも脚本か編集か演出が悪いのか、全体にテンポが間延びしていて、なぜかクラシック・コンサート並みに白髪の頭の多い客席はモゾモゾしている人が多かった。
それにしても、ホントにパウエルはチェイニー副大統領に「くたばれ」と言ったのだろうか(?_?; それから、やたらと飲み食いしている場面が多くてビックリよ。
日本でも二代目、三代目の政治家は多いし、一年交替で首相は代わるし、この手のネタには事欠かないと思うが映画にするヤツはいないだろうなあ ザ・ニュースペーパーでも見てガマンですな(^=^;
役者さんは全員お見事なモン。副大統領を嬉々として演じるリチャード・ドレイファス、怖いパパにはジェームズ・クロムウェルに、パウエル役はジェフリー・ライト、いかにも怪しさ漂うカール・ローブにはトビー・ジョーンズ、悪役だけどやっぱりカッコええスコット・グレンはラムズフェルド役--と、これも何気にオヤヂ萌え映画なのであった。萌えさせてもらいます(*^-^*) 二代のブッシュ嫁を演じた女優陣もよかった。
しかし、なんと言っても一番はタイトルロールをやったジョシュ・ブローリンだろう。これほどに空虚な役柄を空虚なままに演じ、しかも嫌悪感を感じさせず空虚なるがゆえの悲哀を表わすというのはなかなかに出来ることではない。
『ミルク』でオスカーの助演男優賞にノミネートされたのを疑問視する意見も多かったようだが、実際にはこちらでの演技も評価に入っていたのではないかと思われる。まさかブッシュ役でノミネートするわけには行かないだろうしね(^^;
クリソツ度:9点
緊張度:4点
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