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2009年5月17日 (日)

「ドーヴァー海峡の向こう側 2」:ジャンルの境界の向こう側へ

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演奏:平井み帆、守安功&雅子
会場:武蔵野スイングホール
2009年5月10日

守安夫妻は最近アイリッシュ・バロックの作曲家ターロック・オキャロランの全曲録音プロジェクトを始めたとのこと。元々は音大で古楽を学んだらしいが、ずーっとアイリッシュ・トラッド畑で活躍していたようだ。
オキャロランは以前ハープ・コンソートの録音で聴いたが、今一つ面白く思わなくてそのままになってしまった。しかし、アイルランドの地ではバロック期に行われた奏法がそのまま伝承されているという。同じバロック音楽でも民族色濃ゆいものなのであった。
ということで、実際に生で聴いてみようと思った次第。

行ってみるまではよく分からなかったのだが、これはチェンバロ奏者の平井み帆が中心となったあくまでも「クラシック」コンサートという体裁を取っている。
なので、平井女史によれば「曲の後のおじぎの練習もした」とか、笛部門担当の平井氏は平井氏で「楽譜台を前に演奏するなんてウン十年ぶりぐらい」とか「普段、座って演奏しているから立って吹くだけでも大変なプレッシャー」などと言っている。どおりでよくクラシック奏者が着ている黒服が似合わないと思いましたよ(火暴)
あと、笑っちゃったのは前半が終わって、一旦引っ込んだ後に平井女史はカーテンコールで舞台に出てきたと思っていたのに、守安氏の方は「これより休憩15分です」と言いに出ていったと思ってたこと。
こんな風に演奏以外でも面白いこと続出であった。

さて、肝心の音楽の方だが最初はスコットランドの伝統曲をアイリッシュ・フルートで、続いてダニエル(弟)パーセルのソナタをリコーダーで演奏。兄のヘンリーに比べて地味な弟ではあるが、「リコーダーってこんな情熱的な楽器だったのか('-')」と驚くほどの様変わりだった。
守安氏は楽器を取っかえひっかえで、次のオキャロランの曲では伝統楽器のホイッスル(ソプラノ・リコーダーかと思っちまいました(^^ゞ)を使用。イタリアから来たジェミニアーニがオキャロランをいぢめた話などを披露した後、今度は彼がスコットランドの伝統曲に基づいた作品を演奏した。なんでも、この曲でのフルートの部分は元のトラッド音楽そのままで、ジェミニアーニは必死でそのコブシを楽譜に記譜しようと悪戦苦闘したらしい。ところが、今のクラシック畑の演奏家はそれを全く知らないで演奏しているから変になってしまうとのこと。

また、平井女史はヘンリー兄パーセルの曲をチェンバロ独奏したが、守安氏とのコラボレーションによって弾き方が劇的に変化したと語っていた。それまでは、英国音楽は詰まらないと思っていたそうな(^O^;)

後半は守安夫人によるハープ独奏が入ったり、ひねくれたイギリス気質についての解説もあり、いやはや面白かったです。
アンコールは3曲あったが、2曲めはバウロンも入って完全にトラッド・モード。守安氏は椅子に座って、床を足踏みで打楽器代わりにリズムを入れて演奏。なるほどだからいつも座っているというわけだ。

会場はジャズなどのコンサートをやっているらしい小会場だったが、完全に満員御礼だった。特に20~40代の女性が7割以上を占めている。あとは高年齢も含むカップルか。どうも、平井女史個人のファンと、守安夫妻サイドのトラッド・ファンがほとんどだったようだ。
こういう会場の熱気を見ると、普段私が見ている古楽系の愛好者層というのはホントに少ないのだなとヒシと感じた。トラディショナル・ミュージックの熱気(音楽自体と、聴衆の)を目の当たりにすると、平井女史がそっちの方に惹かれるのも当然であろうか。

ところで次回は旧古河邸で…… なんか、守安氏のエネルギッシュな演奏(と、ご本人自身)にあの優雅な空間は全くミスマッチな気がするが(^^?

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←守安氏のリクエスト通り、アンコールの曲名をケータイで撮ってみました(^o^)

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