
磯山雅presentsバッハの宇宙完結編
音楽監督:磯山雅
指揮:ジョシュア・リフキン
演奏:ケンブリッジ・コンツェントゥス、くにたちiBACHコレギウム
2009年6月14日
あのリフキンが「マタイ」をやるという。場所は京王相模原線の橋本という所にある「杜のホールはしもと」だという。
なに~(?_?; 橋本?聞いたこともねえぞ。そりゃどこの地の果てだ???
しかし、あのリフキンである。腐ってもリフキン(いや、別に腐ってるわけではありませんが(^-^;)、例え地の果てだろうとこれは万難を排して聴きに行かずばなるめえ。
橋本住民の皆さん、すいませんm(_ _)m
橋本は立派な都会でした
たどり着くのに2時間かかるかと思ったけど、さすがにそんなにはかからずに行けた。そしてホールは駅前ゼロ分にある、500人ほどの規模ながらバルコニー席もある立派なものであった。
素晴らしいぞ
羨ましいぞ
相模原市民ヽ(^^)/\(^^)、
この「マタイ」の売りの一つ目は「日米の若手が結集」して、それぞれが第一・第二グループに分かれて競演ということである。もっとも、日本側の器楽奏者はヴァイオリンが桐山健志、大西律子、荒木優子など、オーボエは尾崎温子、通奏低音にはダブル西澤、大塚直哉が入ってるんだから、こりゃ中堅~ベテランと言っていいくらいだ。看板に偽りありか
歌手はホントに若手のようだけど。
それから、二つ目は舞台上の配置。これは驚いた。そもそも普段見慣れているのとは左右逆で、日本人による第二グループが左側にいる。で、米国人の第一グループは右側なんだけど、これが左右対称ではない。真ん中にいる日本の通奏低音グループのすぐ隣りに米国のヴァイオリン・トップが来る。だから左端の一番客席の近い方には第一グループの通奏低音が来るのだった。
しかも歌手はさらにその両端に第一と第二に分かれて並んで、互いに向かい合うように立っているのだった。その数なんと4人ずつで計8人……。リフキンによると、バッハの指示通りだと女中やユダ、ピラト役の歌手は合唱には参加しないのだという。それで後ろの方でさらに3人控えていた。
だとしたら、当時は出番の多いピラトはともかく、他の楽器の奏者などが兼ねて歌っていたのだろうか? 実際、女中役の女性は前半では一人でソプラノ・イン・リピエーノを担当、さらにリコーダーまで吹いていたのであった。
演奏が始まった時、なんだかちょっとアンサンブルに乱れがあったような気が……。もっとも、トーシロなのでよく分からないが。あと、米国側の通奏低音が今イチな感じもした(ただ、後半は持ち直したみたいだけど)。日本側のBCの方がよっぽどキレがよく聞こえたのであった。
歌手については、第一グループのテノール兼エヴァンゲリストのジェイソン・マックストゥーツという人は、体格は豆タンクみたいながら、歌い出すとなんと意外にも明るく軽い声質でハイ・テナーか?ってなもん。マルコ・ビーズリー系のテノールなのだった。彼は他の歌手がアリアをやってる時以外は歌いっぱなしでご苦労さんです。
バス兼イエスの人もやはり明るめの声で、イエスなのに重厚さが足りん
とか言われそう。もっとも、今回の公演では却ってそれがよくハマっていた。
大柄なソプラノは文句なかったが、アルトの女性はなんだかパワー不足か楽器に埋もれてよく聞こえない場面があった。
第二グループの日本側の歌手は--よく分からないんではありますが、下手ではないんだけど、なにかスルメイカのような噛み締めれば噛み締めるほど出てくる味というようなものに欠けているようだった。まだ、若いんでこれからの精進に期待したい。
ガンバは日本人の奏者だったが、時折音がすっこ抜けたりひっくり返ったように聞こえた。肝心の名曲がトホホ(TOT)なものに……。いくらなんでも、もう少し上手い人がいたんぢゃねーの--と思ったのはナイショ
である。
ともあれ、第二グループの楽器と第一グループの歌手についてはほとんど文句はナシ、である。
さて今回のリフキン方式についてだが、二つのグループの歌手が離れて対置されてることで合唱同士の応答などはよ~く分かった。そして、これまでだと「拝聴」している感じだったが、まるで「遭遇」しているような効果があった。
それを一番感じたのは、イエスの逮捕直後のソプラノ・アルトの二重唱だった。女声二人が恐ろしさと不安に寄り添うようにして、その場にいるが如く描写して歌い、対置する第二グループの合唱が応えるのを聴いた時に、あたかも捕らえられたイエスが眼前の空間を通り過ぎて行く光景を目撃しているようなイメージが浮かんできたのである。これまで何回かマタイを聴いてきたがこんな事は一度もなかったのでいささか衝撃的だった。
ただ、全体的に見るとどうも一つ物足りない。よく料理を作って味見した時に「うーむ、何か味が足りんなあ」と思うことがあるが、この時に欠けていたのは一体、塩かミリンかかつおダシか、それとも未知の調味料か(?_?) よく分からんが。
それと、個人的にも調子が悪くて途中で頭痛薬飲んだら副作用で眠気虫
が出現したのもいけなかったのかも知れない。
だが、終演してホールを出た時に側を歩いていた中年の夫婦が「いや~感動した。音楽で感動するってなかなかない事なのに、こんなに感動したのは久し振りだ!」と嬉しそうに話していたのを耳にすると、やはり腐ってもリフキン(腐ってるわけではないが)、調味料が足りなくてもバッハはバッハ
ということだろうか。
それに、家へ帰ってしばらくの間バッハ以外の曲を聞きたくなくなってしまったのが不思議よ(?_?;
とにかく「尋常」あるいは「予定調和」ではない「マタイ」であったことは確かだろう。
【関連リンク】
《I教授の談話室》
橋本公演はほぼ満員だったようですが、大阪は客が少なかった?
《緑のクジラ》
なかなか他の人のまとまった感想が少ない。こちらは過去の名演を体験している人のブログ。