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2009年6月 8日 (月)

「ポチの告白」:警察の警察による警察のための警察

監督:高橋玄
出演:菅田俊
日本2006年

公開は1月からされていたのだが、あまりの長尺に(3時間15分超)ズルズル迷って、遂にこの時期になってしまった。東京での(?)最終上映日にエイヤッと駆け込み鑑賞である。
内容がかなり直裁な警察の内情暴露&批判のため、2005年頃には完成し映画祭で上映されたが、その後一般公開の目処が立たなかったという。映倫も通っていないとのこと。

交番に立つ実直な「おまわりさん」である主人公がひょんなことで上司に気に入られて刑事に昇進。そこから彼が荷担するようになる警察内部で公然行われる「悪事」の数々が実録風に描かれていく。
その幾つかはこれまで雑誌などで目にしたものだった。ここ数年話題となっている組織ぐるみの裏金作り。意図的に作り上げられる交通違反。暴力団と組んだ拳銃摘発のヤラセなどである。また、事件の中心人物か「自殺」するのは、警察の不祥事だけに関らずよく起こることだ。
その他にも、これでもかっ!というぐらいに次々と出てくる。多分、特別出演もしている寺澤有などが取材した細かいエピソードをつなぎ合わせたものなのだろう。「善事」とか自浄作用みたいなことは一つもない。悪に始まり悪に終わる。救いは何もないままだ。

最初は昇進させてくれた上司の恩に報おうと懸命に働いていただけの主人公が、やがて積極的に悪事を担っていき、遂には--という過程は見ていてゾゾッとしてしまう。三時間超の長さはあまり気にならなかった。
……のではあるが、やっぱりチト長過ぎ。もうちょっと編集などで短くして欲しい。おまけに会場のアップリンクの椅子はどうも体に合わん。尻が痛くなってしまってラスト30分はモゾモゾ動かしてしまったゾ。

権力を行使する者がモラルを持たなければ、それは封建時代となんら変らない状況だろう。少なくとも「民主主義」とは言いがたい。民主主義社会に生きる者としてはモラルが存在すると信じたいが、残念ながらかなりアヤシイのである。そして組織はただ自らを維持するためだけの組織となっていく。
それにしても告発が全く日本のメディアでは取り上げられず(マスコミの批判的な描き方も相当なもんだ)、結局は外国特派員協会頼みしかないとはいささか寂し過ぎ。結局は「黒船」が来ないとなんも動かないのはお国柄か伝統か(^o^;

しかし、一番ゾッとしたのは「夜に若いヲナゴは絶対一人で交番に行ってはイカン」ということだろう。いや~、マジにこりゃ怖い(>y<;) 昼間でも交番に近付くどころか、自転車に乗ったおまわりさんやパトカーを見たらサッと身を隠さなくちゃ。年頃の娘を持つ親御さんも是非注意しましょう

主人公を始め中心人物の役者さんたちは熱演で文句ないのだが、「告発側」の二人はいささか物足りん。
また、録音器材のせいなのかセリフが良く聞き取れないのも参った。一番よく聞き取れたのが、韓国マフィアのカタコト日本語だというのではしょうがないぞ。
あと、立てこもり事件を見物するオバサン達がどこからか引っ張ってきたトーシロの方々なのか、ただ立ってるだけなのには笑ってしまった。私σ(^-^;)に言ってくれれば「興味津々のあまり黄色いテープを破らんばかりに身を乗り出す野次馬根性のオバハン」を熱演したのに~。


感想とは別に思ったのは、これほど告発調でなく上映時間がもっと短くてもこの映画が順調に公開できたのかということ。社会派映画というジャンル自体、日本だけでなくハリウッドあたりでもかなり減少しつつあるからだ。


告発度:10点
カタルシス度:3点

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