« 例え偽りでもデカい声で1000回繰り返せば真実になる罠 | トップページ | 「ダウランドの真夜中」:ハクジュホールにてメタボ男を呪う »

2009年7月12日 (日)

「レスラー」:止めてくれるな、女たちよ! 背中のスプリングスティーンが泣いている

090712
監督:ダーレン・アロノフスキー
出演:ミッキー・ローク
米国2008年

最近の映画の中では群を抜いて高評価。しかも映画系のブログや掲示板で大規模公開作品並みの言及数である。上映館数は少ないというのにだ。
あの!ミッキー・ロークが落ちぶれたプロレスラーを演じるimpactとあれば映画ファン(ある程度の年齢層以上の(^^;))は注目せざるを得ないだろう。しかも、オスカー・ノミネートやゴールデン・グローブ受賞は大きな話題にもなったし。私の知人にも熱狂的なファンがいた。

しかし、奇妙な映画である。
主人公のレスラーの背後を淡々と追いかけて日常を描写するパートはドキュメンタリー的で面白い。また、試合の前に出場者一同、頭を突き合わせて「ここはクギを使おう」とか「なに、そっちでクギ使うならこっちの試合は別のにしないと」とか段取りを決めているのもビックリ。ここまで、完全にヤラセというか八百長というかショーというか--とにかく知らなかった。
それらの描写のトーンは熱狂する観客席も含めてすべて抑制されている。

一方で、心臓をやられて引退を決意した彼が馴染みの中年ストリッパーに思いを寄せ、疎遠だった一人娘と復縁しようとする件りはあまりに陳腐である。二人の女優(マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド)が上手いせいもあるからあまり気に障らないのだろうが、こんなの他の映画で見たらあらん限りの罵倒力ngを振り絞ってケナシ倒してやるところだ。

かように食い違う要素が入れ子状態になってるのを見ているうちに、思い至ったのは「こりゃ、芝居の当て書きみたいだなあ」ということだった。
まさしく(多くの観客が感じるように)没落した花形レスラーとM・ロークの身の上は重ね合わせることができる、完全に!
と同時に、この話自体がプロレスの一つの試合のようであるなあとも思えた。キャラクターが決まっていて、役割が決まっていて、ここぞというところで繰り出す必殺技もストーリーも予想できる。そんな試合を見せられた気分。だったら、文句を付けたところで仕方あるまい。
そのせいか、ラストのスプリングスティーンの歌までナニワ節spaっぽく聞こえるのであった。

こんなことを考えてしまったのは《OnFire》のこの感想「「レスラー」について追記」を読んだからだ。
これを読んでもう一つ別の映画を思い浮かべた。『ギャラクシー・クエスト』である。栄光の過去と現在の対比、一種の「ファミリー」として見なされるメンバー、ファンとの関わり、サイン会の場面も出てくるし(^^;) もっとも『ギャラクエ』の方が数段ひねくれまくっている話だが(しかも前向き)。
しがない現実と奇天烈なSFドラマがそのまま一体となってしまう終盤の展開には、元SF者であった私は思わず「ウギャ~ッ\(^◇^;)/」と歓喜の叫びを上げてしまうほどにコーフンしたものだ。

とすれば、『レスラー』では冷静なドキュメンタリー的流れと浪花節場面が遂に一体化するラストを、プロレスファン(及び往年のM・ロークのファン)はやはり熱狂して観るのだろうか? プロレスファンならぬ私には理解しかねることだが--。
この監督の以前の作品を観た時にも感じたことなんだけど、この人は破滅願望があって、そういう状況を陶酔的に描くのが好きなようだ。

途中に出てくる、ガンズ&ローゼズに代表される80年代の米国ハード・ロック談義は興味深かった。80年代は楽しく盛り上がっていたのに、90年代になってニルヴァーナが登場して全てブチ壊した--って、そんな事を言われちゃカート・コバーンもあの世で浮かばれめえ(^_^メ)


プロレス度:9点
熱狂度:5点

【関連リンク】
《映画と出会う・世界が変わる》
人は現実にもドラマを求めてしまうもんなんざんしょかねえ。

|

« 例え偽りでもデカい声で1000回繰り返せば真実になる罠 | トップページ | 「ダウランドの真夜中」:ハクジュホールにてメタボ男を呪う »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/82416/45607134

この記事へのトラックバック一覧です: 「レスラー」:止めてくれるな、女たちよ! 背中のスプリングスティーンが泣いている:

» レスラー [☆彡映画鑑賞日記☆彡]
 『人生は過酷である、ゆえに美しい。』  コチラの「レスラー」は、80年代に人気を博したスター時代から人生のどん底をなめた主演のミッキー・ロークが、自身の人生とオーバーラップするような老レスラーを演じ話題となり、全世界の映画賞54冠に輝いた6/13公開のR-15指....... [続きを読む]

受信: 2009年7月12日 (日) 15時04分

» 「レスラー」痛い作品 [再出発日記]
「俺にとって痛いのは 外の世界だけさ」監督:ダーレン・アロノフスキー出演:ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド勘違いしていた。過去の栄光にすがった落ち目のレスラーの話かと思っていた。たとえば今はほとんど試合もなくて再起をかけて...... [続きを読む]

受信: 2009年7月29日 (水) 18時29分

» 「レスラー」祝!ミッキー・ローク完全復活!! [シネマ親父の“日々是妄言”]
[ミッキー・ローク] ブログ村キーワード  ミッキー・ローク完全復活!“第66回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞受賞”“第65回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞”ほか世界の映画祭で受賞多数の感動作「レスラー」(日活)。何で、アカデミーはノミネート止まりだったのか?非常に残念!  ランディ(ミッキー・ローク)は、“ザ・ラム(=お羊)”のニックネームで知られるプロレスラー。かつては、マジソン・スクエア・ガーデンを満杯にしたこともある人気レスラーだったが、年老いて盛りを過ぎた今は、地方のドサ廻... [続きを読む]

受信: 2009年8月 2日 (日) 00時50分

» 「レスラー」(THE WRESTLER) [シネマ・ワンダーランド]
「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」「ナイン・ハーフ」「エンゼル・ハート」などの作品に出演し、主に80年代に活躍した米俳優、ミッキー・ローク主演のヒューマン・ドラマ「レスラー」(2008年、米、109分、ダーレン・アロノフスキー監督、R-15指定)。この映画は、M・ロークがかつて、脚光を浴びた人気プロレスラーの孤独な後半生を自らの役者人生と重ね合わせながら、哀愁に満ちたものとして描いている。本作はベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、オスカーでは主演男優賞や助演女優賞にノミネートされた。... [続きを読む]

受信: 2010年2月21日 (日) 05時34分

» レスラー [映画、言いたい放題!]
ミッキー・ロークが話題になった映画です。 明るい内容ではないと聞いていたので、 体調とか、観るタイミングを伺っていたら いつまで経っても、、、という状況に。f(^^;) いかん、いかん。 かつては“ザ・ラム”のニックネームで 一世を風靡したレスラー、ランディ。... [続きを読む]

受信: 2010年7月21日 (水) 00時30分

» レスラー(感想172作目) [別館ヒガシ日記]
レスラーはWOWOWでし鑑賞したけども 結論は予想より [続きを読む]

受信: 2010年8月29日 (日) 12時17分

» 『レスラー』'08・米 [虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映...]
あらすじかつて人気を集めたレスラーのランディは心臓発作のため、医者から引退を勧告される。それをきっかけに、長らく会っていなかった娘のステファニーのもとに向かうが・・・。... [続きを読む]

受信: 2010年9月23日 (木) 17時30分

» レスラー [RISING STEEL]
レスラー / THE WRESTLER ミッキー・ロークを完全復活させたこの映画の監督ダーレン・アロノフスキーは鬼才中の鬼才なのです。 今回の「レスラー」で監督の作品は全部見ることが出来ました。 2008...... [続きを読む]

受信: 2011年2月 7日 (月) 22時48分

« 例え偽りでもデカい声で1000回繰り返せば真実になる罠 | トップページ | 「ダウランドの真夜中」:ハクジュホールにてメタボ男を呪う »