結城座「乱歩・白昼夢」:新しい時代はいったいどんな恐ろしい生きにくい時代であろうか?
作・演出:斎藤憐
美術:宇野亜喜良
会場:東京芸術劇場
2009年8月19日~23日
創立375周年を迎える結城座の新作は、なんと江戸川乱歩だ~……ということで、事前に行われた展示会にも行ってきたし、準備万端。
糸あやつり人形と写し絵を組合わせた公演は、既に宮澤賢治の『注文の多い料理店』でもやっている。
その昔、乱歩は結城座の写し絵を見たそうで、感想を書き残しているとのことである。恐らく当時のスペクタクルな娯楽で人々はワクワクしながら見たんだだろうと思われる。
舞台は大正の浅草。木馬館の回転木馬が狂言回しとなって乱歩先生の初期短編を4つ紹介するという趣向。従って怪人二十面相は出てきません、残念
歓楽&享楽の時代と並行して日清・日露戦争→関東大震災→軍国主義へという当時の世相に作者の斎藤憐はこだわり、浅草という地にその象徴を見ているようだ。
「芋虫」は写し絵(宇野亜喜良が原画)の特徴をストレートに生かした上演で、予想よりも、エログロというよりは人間というものの悲哀を幻想味をまぜて描いたような印象だった。
一番気に入ったのは他愛のない艶笑譚のような「一人二役」。こういうバカバカしい話が結構好き。孫三郎氏は人形を二つぶら下げて二役やって、大変そうだ~(^O^)
とはいえ、人形を愛する夫に妻が嫉妬をメラメ~ラ燃やす「人でなしの恋」では、その人形の「八百屋お七」を孫三郎が実際に演じて見せたのだから、これは一番の見物に間違いなしで得した気分。そのお七の迫力には圧倒された。乱歩の登場人物が人形と心中したくなる気分も分かるかも知れない。
音楽担当は黒色すみれという二人組のユニット。知っている人は知っている、その方面では有名らしい。彼女たちの音楽は今回の舞台とよく合っていたように思う。ただ、私が個人的に好きかというと微妙であるが……。
震災の時の群集(の人形)を操るエキストラに小学生くらい(?)の男の子がまじっていて、場内の微笑を誘っていた。成長して、立派な操り手になるといいですね(^^)
私が見に行った日は満員御礼だった。やはり乱歩先生の変態精神は時代を越えて人気があるってことですかな
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