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2009年9月

2009年9月26日 (土)

ヘンデル「オットーネ」:またの名を「愛と裏切りのローマに陰謀の嵐が吹くのだ」

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日本ヘンデル協会コンサートシリーズ14
舞台総監督:藤江効子
指揮:ローレンス・カミングズ
会場:北とぴあ
2009年9月23日

日本ヘンデル協会の去年の公演『忠実な羊飼い』に続き、今年はヘンデル・イヤーということでスケール・アップ。本場英国より専門家を招いて『オットーネ』を、会場も大きな北とぴあで上演である。

では、まず粗筋を紹介しよう。
【第一幕】
えーっと、あたしテオーファネ、東ローマ帝国の皇女ですう 今度神聖ローマ帝国のオットーネ様のとこにお嫁入りすることになって、ローマまでやって来たんだけど、ほらオットーネ様ったら噂では勇ましくって凛々しくってス・テ・キ(#^-^#)な方らしいじゃないですか。送られてきた肖像画を見ても、上に超が付くくらいのイケメン あたしったら「本命キターッ━━━━━('∀')━━━━━!!」って叫んじゃった。
とっころが実際に対面したらなにこれ詐欺インチキ騙したわね~(>o<) 実物のオットーネはマザコンでブサイクなキモヲタ男じゃないの。しかも「テオーファネたん萌えー、ハァハァ(^Q^;)」とか言って迫ってくるの、もうイヤ~~~ッ。チョー最悪
(実はオットーネの名を騙り帝国簒奪を企むジズモンダ&アデルベルト母子の策謀であった)
【第二幕】
アデルベルトは逮捕されちゃってホッとしたけど、肝心のオットーネは……えっ、何よあの親しげにしている女は(!o!) 肩なんか抱いちゃったりしてムカツク~ あたしと婚約していながら、他に女がいたなんてっ、許せないわっ(`´メ)
もう、一人でやさぐれてやる--と海岸をウロウロしてたら、突然あのキモいアデルベルトと、オットーネに退治されたはずの野蛮な海賊男が目の前に出現 なんでよ?脱獄?ありえなーい人生最大の危機 あたし、もう気絶しちゃう。
(オットーネと親しくしていたのは、実は従妹のマティルダでアデルベルトの助命嘆願していたのであった。)
【第三幕】
野蛮な海賊男があたしをいわくあり気にニヤニヤ見てるじゃないの。きゃーっ、貞操の危機よもう自害しちゃう……と思ったら、なんと海賊は生き別れになったあたしのお兄様 えーっ!ウッソーッマジ~?
(謎の海賊エミレーノこと兄はアデルベルトをオットーネの元に突き出し、ここで陰謀と波乱は幕を下ろすのである)

あのー、ヘンデル先生( 'д')ポカーン……これって、もしかして大昔の少女マンガですかいっ(火暴)
しかしながら、当時はヘンデルの大当たり作品だったらしい。もっとも現代の人気ナンバーワンになる映画やTVの類いも似たようなもんか。エンターテインメント色強い作品のようだ。

さて、今回の公演は会場が北とぴあなんで、てっきりステージ方式でやるのかと思いきやオーケストラが舞台の真ん中に位置して、歌手はその背後を取り巻くように設置された台の上やオーケストラの前に出て歌う。これも「演奏会形式」になるんでしょうか?(オペラは詳しくないのでよく分からず(^^;) ただし衣装は本式なもんだったし、剣を持ってチャンバラもやっていたが。
字幕は背景のスクリーンに情景を表わす写真と共に映し出すというやり方。この情景写真はちょっと異論が出そう。観光写真みたいなモンではなくて、当時の絵画でも使用した方がよかったかも。

オーケストラの面子はコンマスが桐山健志、チェンバロがL・カミングズと平井み帆、チェロ西沢央子などといった陣営で、文句な~し。弦の繊細な表現が特に効果的と思えた。カミングズは先日のチェンバロ公演とは打って変わって、弾きながら椅子から飛び上がるように身体を動かして指揮していた。

歌手でピカ一だったのは脇役だけどエミレーノ役の春日保人だったようだ。北とぴあという悪条件の中、声もよく通ってキャラクター的にもピッタリ合ってカッコよかったぜいっ 海賊を主人公にしたオペラがあったら、そのまま主役にお願いしたいくらい。
タイトルロールの上杉清仁は衣装のせいもあってか、なんだかピカピカキラキラして花と星と剣を背中にしょってるみたいで、いかにも堂々とした主役を演じていた。でも、第一幕の終わりのアリアなんか難しそうで大変でしたなー。
女性陣では前回の公演同様、コワい母親ジズモンダ役の藤井あやが目立っていた。
それにしても歌手とは大変なもの--ムツカシイ歌を歌いこなして、なおかつそれにプラスして人々を感動させなければならないんだからねえ( -o-) sigh...

先日の芸大の『アリオダンテ』公演よりもオーケストラは小規模で、ステージ上とはいえ会場の特性を考えるとこちらこそ拡声システムが必要だったんではないかと思えた。
で、その他諸々を考えてみると『アリオダンテ』の料金三千円は本当に安かったなあ……と改めて感じたのであった。まあ、あちらは学校の正式行事として予算が計上されているのだろうけど。
あと、全席自由席というのは座席確保が結構厳しかったです。


ところで、休憩時間に前方の座席からヒョロっとした長身で赤い目立つTシャツ姿のガイジンさんが立ち上がった--と見たらゲルト・テュルク氏でありましたよ。
それから、目白バ・ロック祭り以来、波多野さんのコンサートやマイナーな公演でよく見かけて、さらにL・カミングズの鍵盤演奏にも来ていた女性をここでも目撃(!o!) よっぽど趣味が同じなのかしらん

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2009年9月24日 (木)

「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」:狼野郎VS熊人間、涙の友愛

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監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー
米国2009年

『X-メン』シリーズの前日譚。このシリーズの感想はこちらである……が、ブログでは最終作しか書いてないのね~。その前の二つはニフのフォーラムの方に書いてたのだった。

ここではウルヴァリンの隠された過去が明らかに--南北戦争より前から生きてたとはこりゃオドロキ(!o!) さらに兄との確執、毎度おなじみ政府の陰謀などが絡んで大変なことに。最後は原発が暴走する騒ぎになるかと思ってドキドキしてたが、さすがにそこまではいかなかった

完全なアクション指向につき、細かい背景描写も心理描写もふっ飛ばして突き進む。監督は『ツォツィ』の人で、それでもなんとか頑張っているようだけど、いかんせん脚本に何も書いてないんじゃあどうしようもない。まあ、見ている間は楽しめましたが(^-^;

最後の方はミュータント同士の戦いというよりは、『ターミネーター』風ロボットの戦闘場面の連続みたいだった。今日びのアクション物は結局みんなこうなっちゃうんだろうか。
なお、恒例となってきたエンドタイトル後の場面があるんでお忘れなく(o~-')b

忘れちゃイカンのが、プロフェッサーのビックリ特別出演。P・スチュワートのクレジットは出て来ないので、もしかして『タミ4』のシュワちゃんみたいにCG合成人物かしらんなどと疑いたくなった。
次回作はぜひプロフェッサーとマグニートーの若い頃の話をお願いします(舞台は何故か寄宿制の学校で)

兄役のリーヴ・シュレイバーは悪役だが、クマさんみたいでなんとなく憎めない感じというのが笑ってしまう。
主役のヒュー・ジャックマンはカッコエエです。脱いでもよし着てもよし、ヒゲもじゃ面もよしツルリン二枚目タイプもよし、しかも歌って踊れて達者なヒュー様であるが、実はこのシリーズ以外の出演作ってあんまりヒットしてないんじゃ……(?_?;(『プレステージ』も中ヒットぐらいだったし、『ヴァン・ヘルシング』はどうだったかな)
ということでこれからも頑張ってくれい。ガ ン o(`・ω・´)o バ レ

話題のジェームズ・キャメロン新作の予告をやっていた。こりゃ、すごーく面白いか、すごーく詰まらないか、極端に転びそう。


アクション度:8点
泣かせ度:4点

【関連リンク】
《描きたいアレコレ・やや甘口》
兄弟げんかのイラストを見て、子供の頃に隣家に年子の兄弟がいて取っ組み合いのケンカをすると、ドスンバタンと聞こえてきたのを思い出しました(^^;
薔薇をしょった主人公も往年の少女マンガ・モードでよいですね。

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「シング・フォー・ダルフール」:観た後に立ち直れず

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監督:ヨハン・クレイマー
スペイン・オランダ2007年

この映画が終わった時、私は衝撃で立ち上がれなかった。内容がショッキングだったというのではない。こんな詰まらない代物を見るために金1800円ナリ(前売券売ってなかった(T^T))と時間を費やしてしまったからだ。よりによって連休なのに!

カッコつけた映像を脈絡なくつなぎ合わせたような全編はCM関係とかアート系目指している若いモンには役に立つかもしれんが、一介の映画ファンには何の意味もないものであった。

それから、終盤に女の人が歌う場面が出てくるんだけど、あれってもしかして制作者の方は感動的だと思って作ってるのか(?_?) でも、私が思い浮かべたのは、ほら有楽町マリオンとか商店街の入口にある、一時間ごとに人形やら何やら仕掛けが出てきて音楽と一緒に時間を告げるというヤツ--あれである。どう見ても笑っちゃうんだけどさ。

ダルフールの子どもたちよ、そして大人たちもスマヌm(_ _)m もっと金と時間を有意義に使うべきであった。

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2009年9月23日 (水)

「ローレンス・カミングズ チェンバロ・リサイタル」:チェンバリストだって○○っちゃうんです

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演奏:ローレンス・スミングズ、林美枝
会場:近江楽堂
2009年9月17日

23日のオペラ『オットーネ』の指揮のために来日したL・カミングズのチェンバロ公演を行なった。
共演は弟子の林美枝という人。忘れてましたが、ラ・スフェラ・ムジカーレで鍵盤担当してたのですな。

カミングズは柔和なイギリス紳士という外見。頭はかな~り光っているが、実際は結構若いかも。メモを見ながら日本語で挨拶して演奏開始。どの曲でも椅子に座るといきなり間髪置かず弾き始めちゃって、こういうのは珍しいような気が(^^?
先日のファンハウヴェのリコーダー三本ライヴの時は同じ会場でちょっと響き過ぎるように聞こえたが、チェンバロだとちょうどいい響き……気持ちいい~でやんす(*^^*)

冒頭ルイ・クープランで、次がフランソワ--こちらは弟子との二重奏。ヘンデルの組曲を間に休憩を挟んで2曲、そしてバッハの「2台のチェンバロのための協奏曲」という構成。
彼の演奏の特徴は、技術面については分かりませぬが、奇をてらわず滑らかに整った感触だろうか。

ルイ・クープランの曲はラストのパッサカリアが壮麗な感じで聞き惚れる。一方で、ヘンデルは正直「も、もしかして私はヘンデルの鍵盤曲は苦手かも……」なんて思ってしまった。
バッハは二人が交互に引きかわす形が連続し、勢いあるキビキビした演奏に最後は客席からため息がもれたほど。
私はチェンバロの二重奏は多分生で初めて聴いたので、最後に鍵盤から手を離すのもちゃんと二人同時に合わせて、というのは知らなかった。響きがキレイに揃ってエンドとなるわけですな。

アンコールの1曲めはまたおフランスに戻ってG・ルルー。その前のバッハとは全然違って華やかな曲調に大きな違いを感じる。
2曲めは、カミングズがパーセルの曲をやります、と言って椅子に座った--途端にすぐ立ち上がって向かい側の林美枝の横まで歩いていき、彼女の演奏をバックにやおら歌い始めたのであった(^o^; 声はさわやかなテノール、といった感じですかな。しかも、歌いながらついでに譜めくりまでしちゃう甲斐甲斐しさ。客から拍手喝采を受けたのは言うまでもない。


さて、これで3連チャン+(一日置いて)2連チャンというドトーのコンサート鑑賞日程は終わった。さすがに疲れたけど、どれも満足できたのでよかった

【関連リンク】
《アリスの音楽館》

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2009年9月22日 (火)

タブラトゥーラ25周年記念コンサート:25年目のミラーボール

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会場:ハクジュホール
2009年9月16日

「結党」(と、つのだたかしは言っていた)はや25周年を記念するコンサートが催された。
25年ですか……スゴイですねえ。結党以来のメンバーはつのだ団長と田崎瑞博の二人とのこと。

今回はゲスト無しに団長の思い出話などをまじえながら粛々と(?)演奏は進んだ。メンバー紹介のところで、ビウエラ担当で団長と兄弟といってもよいぐらい似ている山崎まさし氏が、実は10歳も年下だということが明らかにされた時は、会場にどよめきが走った。恐ろしいことであ~る また「フラメンコ界の珍獣」エピソードには大爆笑となった。

休憩の後はスクリーンがステージ上に降りてきて、十年以上も前の海外ツァーの映像を今ごろになって(^^;公開。イタリアかオーストリアの会場で、レオンハルト翁と並んで公演ポスターが貼られていたのには笑ってしまった。

その後は幻の「ショータイム」復活。私がタブラのコンサートに行き始めた頃にはもう中止してしまっていたので、体験したのはこれが初めてである。
いやー、田崎氏のメロディオンの卓越した技巧には参りました \(^o^)/ 素晴らしい。メロディオン吹かせたら日本一と断言しちゃおう(多分)。
山崎氏のミラーボール・ヘルメットの威力もかなりのもんであった。

後半は徐々に盛り上がって、アンコール時にはステージ上に上がって踊る人も。ただ、前回の公演と踊ってた人の顔ぶれが同じようだったかも。常連さんたちか。
アンコールをあと一曲やったら、会場総立ち、チラシは舞い散り、靴は飛び、おひねりが舞台に投げ入れられたのではないかと思ったが、予定曲目を終えてしまったらしく、一同ロビーでの演奏へ出てしまったのは残念無念である。
ハクジュホールのロビーは狭くて、廊下で人が詰まってしまい見られなかったのも残念よ。

楽しかったけど、強いて文句付ければウンと古い初期の曲もやって欲しかったのう。
あと、配布されたファンペーパー「タブの友」の記事に名前のみ出ている「田崎楽器がありません事件」「田崎モテモテ事件」「田崎流血事件」について詳しく知りたい。今度、チケットの裏にでも印刷してくだせえ。

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2009年9月21日 (月)

今年上半期最大の話題の書を紹介!

なにっどうせハルキ本のことだろうって? 冗談ではない。ハルキなどよりもはるかに全世界規模で有名な作者の新作である。

それは……

これだっ

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ディック・ブルーナ作『うさこちゃんときゃらめる』
福音館書店、2009年4月刊

その衝撃的な内容で日本全国のうさこちゃんファン(推定約三千万人)を驚愕させたのであ~る。
ストーリーは--うさこちゃんがおかあさんと一緒にお菓子屋さんにクッキーを買いに行くのですな。と、そのお店でうさこちゃんはなんとキャラメルを

 万 引 き してしまうのです

工工エエェェ(´д`)ェェエエ工工


大変だ~~っ
( (((( ヽ(;^^)/

どうしよう
\(> <;)/ ))) ) )

エライコッチャエライコッチャ
ヾ(^^#)ゝヾ(^^#)ゝ

あの、よい子のうさこちゃんが万引きだなんて……
 _| ̄|○ ガクッ

かように衝撃的なのである。ひたすらビックリよ
その筋に詳しい人(どの筋だ?)の話によると、万引きが極めて低年齢まで進んでいるそうである。なんでも、年上の子がやっているのを見て小学生低学年や幼稚園の子が全く分からずに真似してしまうとか。
オランダでも同じなのであろうか。

それにしてもブルーナ爺さん、やってくれますなあ。
続刊として「うさこちゃんとたばこ」とか「うさこちゃん暴走する」とか「うさこちゃんとコソ泥」(←うさこちゃんが手ぬぐいでほっかむりしてる姿が表紙)も是非お願いしたい。

なお、知人たちにこの本を紹介した時にみんな知らなかったので、念のため改めて説明しておくと、福音館書店から出ている松岡享子の訳では「うさこちゃん」、講談社の角野栄子訳では「ミッフィー」となっているのである。
私σ(^_^;)はもちろん「うさこちゃん」派ですよ。
というか……「うさこちゃん」じゃなきゃイヤ~っ(>O<)

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2009年9月20日 (日)

寺神戸亮&レ・ボレアード オール・ヴィヴァルディ・プログラム:人数は少なくとも最強

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会場:紀尾井ホール
2009年9月14日

寺神戸氏率いるレ・ボレアードが「四季」をやるというので久々に紀尾井ホールへ足を運ぶ。周辺のビルや飲食店が結構様変わりしているのに驚いた。
このグループでの「四季」は北とぴあ音楽祭の時に聴いたことがあるが、編成がその時より小さくなったかなーという感じ。ヴァイオリン3、ヴィオラ、チェロならぬスパッラ、コントラバス、鍵盤がそれぞれ1という陣容で、以前聴いたラ・プティット・バンドとはコントラバスを除けば変らないぐらいの少なさだ。

最初はスパッラを聴いたことのない人のために、寺神戸&スパッラの貴公子ことD・バディアロフのペアによる二つのチェロのための協奏曲が演奏された。楽器の特質上か、ゆっくりした第二楽章が渋い響きで哀愁味あり。

続いて有田正広がゲスト出演でフルート協奏曲「五色ひわ」をやった。またも有田先生はピヨピ~ヨとひわを鳴かせてくれた。この後に「春」と「夏」が演奏されて鳥の鳴き声を模した部分が「五色ひわ」と相似であるのを印象づけていた。
第二部も同じように「夜」と「秋」「冬」の組合わせだった。ここでは、出た~ッ酔っ払いステップで寺神戸氏弾きまくり。ただ、演奏はともかくステップではレッド・プリーストに若干負けていたもようなので、今後の精進をさらに望みたい(^=^;

こうした小編成で聴いてみると、思いのほかヴァイオリンとチェロのかけ合い的な部分が目に(耳に)ついた。クイケン親爺の時はいささかヌルイ印象のスパッラだったが、バディ様だと寺神戸氏と丁々発止のかけ合いに聞こえた。
それにしても、「四季」は色んな演奏が山ほど出ているが、久々に手に汗握って聴いた緊張感ある「四季」で満足を感じた。思わず「いよっ、寺神戸!」とかけ声をかけたくなるぐらい。
問題は、ああそれなのに空席がかなりあったのは何故なのよ(?_?; モッタイナーイ

アンコールは有田先生再登場で別のフルート協奏曲を演奏であった。

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2009年9月19日 (土)

ヘンデル「アリオダンテ」:あまりのお得値にヘンデル先生もビックリか

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藝大プロジェクト’09 ヘンデル没後250年記念企画
演出:平尾力哉
指揮:鈴木雅明
会場:東京藝術大学奏楽堂
2009年9月13日

家を出遅れたため、休日の上野の人ごみをかきわけてウン年ぶりに来た奏楽堂では既に三澤寿喜のプレトークが始まっていた。
三澤先生はピアノを脇に置いて実際に曲を聞かせたりしながら、ヘンデルの魅力を「シンプル&ディープ」と強調。特に演目である『アリオダンテ』では過去の作品に比べ、レチの数が減って聞きやすくなっているとのことである。また合唱が使われるのはヘンデル・オペラにしては珍しいとのこと。

さて、本番の方は今流行の「コンサート・オペラ」形式でオーケストラはピットに入っていて、歌手や合唱は簡単ながらそれっぽい衣装を着けているし、簡単な大道具も使用していた。でも、ここまでやるなら背景に幕でも垂らしてほしかったところである(パイプオルガンがなんとなく目について邪魔だし、照明の効果が半減してた)。

芸大のプロジェクトということで、歌手は卒業生で既に活躍している人、楽器の主立ったところは教員、それ以外は学生院生で構成しているらしい。
面子は鈴木ブラザーズにコンミスは若松夏美、他に大塚直哉、前田りり子、福澤宏など豪華ではないですかっ

物語はスコットランド宮廷を舞台に陰謀・策略・愛・嫉妬が入り乱れるというもの。CTの彌勒忠史が悪役の騎士を演じてキャラクター的にはピッタリ。ただし低音はちと苦しそうだった。タイトルロールの小野和歌子は細身&長身で宝塚みた~い。でもどうせだったらもうちょっと宝塚風のケレン味があったらよかったかも。何せヘンデルですから
愛する男に騙される「愚かな女」ダリンダ役の松原典子は儲け役か。女王ジネヴラの朴瑛実は後半が堂々とした歌いぶりだったが、キャラクター的にはもうちょい若々しい感じが欲しかったかなあ。

演出家は、すっかり忘れてたがなんと以前二期会の『ジュリオ・チェーザレ』で顰蹙をかった人。今回はオーソドックスにまとめていてヨカッタヨカッタ(ただし、一部字幕に問題あり(^=^;)。
楽器陣も屋台骨を支えて安定した音を聞かせてくれた。鈴木(兄)氏は自らもチェンバロの前に座って指揮しつつ、レチの時などたまに弾いていたようである。大塚氏はチェンバロとオルガンの二刀流だった。休憩時間に近くで観察してみると、ピット内だけでなくステージ上の床にもマイクが置いてあって拡声システムを使用していたもよう。大ホールというほどの広さでもないのに、やはり古楽器ではキビシイのかしらん?

また、途中バロックダンスも入って(こちらは昭和音大の学生さん)豪華フルコース状態だった。これで金三千円ナリとは安過ぎだいっ コスト・パフォーマンスを考えるとおつりがくるほどであった。もうちょっと宣伝すればよかったのに。
また、こういう企画を是非お願いします(^人^)


ところで、開演15分前にトークが終わると、劇場の関係者(?)が出てきて、今回は「コンサート・オペラ」ということでオーケストラもよく見える位置にするためピットの床を上げたので、そのため前の方の真ん中あたりの座席の客から字幕が見えにくくなってしまった旨のお詫びがあった。でもそれだったら、字幕の電光掲示板の位置を高くすればいいんでは……(?_?)と思ったのは私だけか。それに開演直前に説明しないとプレトーク聞かないお客さんには不親切ではないかと思った。

【関連リンク】
ブログ検索してもあまり感想が見つかりませんが、以下をご紹介
《アルチーナのブログ》
《演奏会定点観測》


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2009年9月14日 (月)

「ヴァルター・ファンハウヴェ リコーダー・リサイタル」:まだまだ深かった笛世界

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ソロ&トリオによる響きの競演
会場:近江楽堂
2009年9月12日

ファンハウヴェ氏の名は恥ずかしながら知らず--なんでもブリュッヘンやK・ブッケと共に笛トリオ「サワークリーム」をやっていたらしい。しかし、ブリュッヘンというともうかなりヨボヨボなじーさん風のだが、彼の方はまだまだ元気なオヤヂという感じだった。9月後半にある福岡古楽音楽祭が今年は笛祭りで、それに出演するために来日しているようだ。
トリオの相方を務めるのは田中せい子&ダニエレ・ブラジェッティ(過去のコンサートはこちら)。経歴を見ると田中せい子がファンハウヴェの教え子らしい。

曲目はルネサンス、バロックからドビュッシーまで、トリオ演奏の間にファンハウヴェのソロを挟むという構成だ。リコーダーだけのトリオを近江楽堂のような小さな所で間近に聴いたのは多分初めてで、あまりにもよく響くのでちょっとビックリよ。

ファンハウヴェはトリオの時はアンサンブルの中に完全に溶け込んで吹いていた。特にルネサンスの曲がよくて、中でもクリストファー・タイの曲は三人の演奏する拍子が異なるというものだが、哀愁味があってしみじみと心に響いてきた。
長い曲は三人で立って一つの楽譜を見て吹いてると、楽譜に沿って三人が徐々に場所をズレていくのが面白くてちょっと笑ってしまった。最前列の人にぶつかるかと思ってしまったぞ(^=^;

一方、ソロになると豹変して極めてアグレッシヴになる。パッサーノという人の曲では何やら情念が立ち上る感じ。テレマンでは指使いで変化に富んだ音色を出していたのには感心した。よもや、リコーダーにこれほど様々な音色があったとは知りませんでした、ハイ。大きな会場ではここまでは分かりません。
アンコールの2曲目がファン・エイクの独奏曲で、やはり会場はシンと聞きいってしまったのであった。

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合間に解説というかトークが入り(田中女史が通訳)、一日2回公演だったので私が行った夜の回は客も多くなかったのは残念だったけど、ざっくばらんな気兼ねのないコンサートであった。
しかし、そこで演奏された音楽は素晴らしく、久々に「聴いた!」(なぜかガッツポーズ)という満足な気分になって帰った。
福岡周辺の方は音楽祭を是非お聞き逃しなく~(^^)/

【関連リンク】
《Music for a while》
浜松の楽器博物館での公演ご報告です。ありがとうございます。

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2009年9月10日 (木)

「3時10分、決断のとき」:とーちゃんはつらいよ

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監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル
米国2007年

以前、米国の興収ランキングに入っていて、ラッセル・クロウ&クリスチャン・ベイルという組合わせならなら公開されるだろうと思って待っていたのだがその後音沙汰なし……てっきりお蔵入りかと思っていたらようやく公開である。ただし、都内で1館のみという扱い。やはり、西部劇というジャンルなのがマイナス要因だったかね。
でも、高年齢の男性で連日満員御礼という噂を聞いて、しばらく時間をおいてから行ってみた。平日の昼間(3時10分の回)だったんでもうさすがにすいてましたな(^^)

金に困った零細牧場主が、逮捕させたギャングの一味のボスを鉄道の駅まで護送する仕事を引き受ける。
で、ラストの5分間でビックリ(!o!) ええーっ、こんな話だったんかい
一癖も二癖もありそうな、強そうな奴がどんどん退場して行っちゃってどうするのかなーと思ってたんだけど、まさかこんな展開になるとは……。

言ってみれば自他共に情けないと認定された父親が見せかけの沽券を保つために、悪漢ヒーローに泣き落としで頼む--ってな話でしょう。いいんですかい、それで(?_?;
家庭内に居所がないオヤヂな方々には満足な話かも知れないけど、私は納得できませんなあ~(+_+)

ラッセル・クロウはカッコエエ悪漢を好演。こういうのをやるとピッタリである。対照的に鬱屈した男をクリスチャン・ベイルがウツウツと演じてこちらもハマリ役である。しかし、この主役二人とも米国人ではないという指摘を見かけたが、確かに象徴的なことかも。
部下のチャーリーはエキセントリックで目立つキャラクターで、演じたベン・フォスターはもうけ役でしたな。
特出ピーター・フォンダは「老兵はあっという間に消え行くのみ」みたいな感じでしょうか。

冒頭の馬車襲撃のシーンは見ごたえあってスタントの人オツッ(^^)/で、つかみはオッケーだったが、終盤の街中の銃撃戦はなんかマカロニウェスタン(←どうも苦手)ぽくて今イチだった。今日びのアクション映画じゃないんだからさあ。銃弾消費量多過ぎよ
ついでに音楽もマカロニ系でしたな。
折角の久し振りの西部劇だったけど、結局最後に梯子を外された印象だった。リメイクということでオリジナル作も見たくなった(WOWOWでやったのに見損なってしまったのよ(T_T))。


悪漢ヒーロー度:8点
親父情けなさ度:4点

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2009年9月 6日 (日)

「フランス・バロック宗教音楽の夕べ」:気分(だけ)は王侯貴族風

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第3回コンセール・スピリチュエル
演奏:花井哲郎&合唱団フォンス・フローリス+コントラポント
会場:杉並公会堂大ホール
2008年8月28日

フォンス・フローリスは花井哲郎が指導している幾つかの合唱団やアンサンブルの合同グループである。合唱だけでも五十人以上の大所帯で、おフランス・バロックの演奏会を定期で行っている。
過去の2回の演奏会の感想はこちらこちら

今回はリュリとその後輩ド・ラランドのモテットを2曲ずつというプログラム。
独唱者には花井尚美、上杉清仁、春日保人など。楽器隊の方は、ヴァイオリンは小野萬理、大西律子が中心で(先日聴いた小林瑞葉もいた)、通奏低音は西澤央子(チェロ)、金子浩(テオルボ、会場が大きいせいか最前列の中心に位置)など。

前半のリュリのクラン・モテ「ミゼレーレ」はバリトン、バスの二重唱にヴァイオリンの二重唱が重なるところが印象的
後半は同じくリュリで合唱なし、女声6人と通底のみという小編成の「サルヴェ・レジーナ」は特に後半部が美しくてウットリよ(*^^*) ラストはド・ラランドの大曲「テ・デウム」。テインパニ、トランペットも入って壮麗であった。
ルイ14世の宮廷生活を髣髴とさせてくれました。

一つだけ文句を言えば、会場は立派でデカい公共ホールだが音楽向きではないように聞こえたのは残念無念よ。
とはいえ昨今は小規模編成が多く、純粋古楽仕様でこれほどの大合唱を聴けるというのは滅多にない機会なので、これからも続けて聞かせて下せえ

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2009年9月 5日 (土)

「キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語」:貢献者か収奪者か?

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監督:ダーネル・マーティン
出演:エイドリアン・ブロディ、ジェフリー・ライト
米国2008年

実はこの時代の音楽には全くうとい。何せマディ・ウォーターズの音楽を耳にしたのが『ラスト・ワルツ』を観た時だってんだからどうしようもない。
かような私σ(^_^;)であるからして少しでも知識の足しになるかしらん--なんてことも含めて興味があったので行ってみた。
……のはずだったが「かなり事実と違う」という情報を事前に聞いて早くもちょっと期待度減

第二次大戦直後に音楽業界に足を踏み入れた、東欧系移民であるユダヤ人のレナード・チェスが自らの名前を冠したブルース・レーベルを設立。一世を風靡するも1969年に経営権を売却して死去するまでを描いている。
といっても、実際の主人公はチェスよりも、ジェフリー・ライト扮するマディ・ウォーターズの方だろう。映画のほとんどは彼の視点から描かれている。

この期間というのは社会的に価値観の大きな変動があり、音楽的にも様々なジャンルが勃興した時期であった。前半ではそういう部分が描かれていたんだけど、後半になってエタ・ジェイムズ(ビヨンセ)が登場するとチェスとの恋愛話が中心になってしまい、スタジオの外界のことはあまり出てこなくなってしまう。公民権運動など色々起こった時期だと思うのだが……(?_?)

その恋愛話も描写がぬるいというか、判然としないというか、一体二人の関係がどの程度のものだったのか見ていてよく分からない。業界雀がやかましく噂するほどだったのか、それとも世に忍ぶ恋だったのか まだ存命している関係者がいるから遠慮したのかしらん。
しかも、そのシーンの描き方が二人の顔の大ドアップの切り返しが延々と続くもんだから飽きてしまった。私はこういうのを見せられると「ああ、もう尻の穴でも何でもいいからとにかく顔以外の映像をみせてくれい」とか思っちゃうのである。

この時期は音楽的には黒人ミュージシャンが全米的に人気を得てきたとはいえ、当然ビジネスは白人が握っていたわけだから、そこをどうとらえるのかは難しい問題である。宣伝ではミュージシャン達にチェスがキャデラックをプレゼントしたのを美談としていたが、映画の中では「ギャラから差し引いた」とか言ってたぞ。それじゃプレゼントとは言わないんじゃあ……

作中での歌は実際に役者達が歌っているそうでビックリ。達者なもんである。先日観た『セントアンナの奇跡』同様、中堅~若手のアフリカ系役者の活躍ぶりが見られる。
もっとも、ビヨンセはさすが本業だけあって(演技はともかく)やはり抜群に歌が上手いのはナットクです。

それにしても、マディがこんなにいい人とは知らなかった(ただし、女ぐせを除く)。実物のイメージからは想像できません(^^;
最近出た「レコーディング・スタジオの伝説」という本を立ち読みしたら、ストーンズがチェスのスタジオを訪ねてマディに初めて会った時、彼は天井のペンキ塗りをしていたという(これはよく知られた逸話らしい)。なんでこんな面白い話を映画で使わなかったのかはこれまた不明である。

ということで、全体の結論は『ドリームガールズ』同様「芸達者な美男美女が活躍する歌絵巻」ということでよろしいかな。
教訓は「酒癖・女癖はトラブルの元」ってとこか。

音楽度:9点
歴史度:5点

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2009年9月 2日 (水)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 9月版

夏休みモードが終わった9月はドトーのようなコンサート日程が! 身体が幾つあっても足りねえ~(@_@) とても全部は行けません。

*3日(木)「フランチェスコ・ペトラルカ カンツォニエーレ」ラ・フォンテヴェルデ
行きたいが忙しくて行けそうにない。

*4日(金)「ルスト・ホッファーズ 楽園の情感」
これも行けそうにないかも。

*10日(木)「不安定の中の安定 2 ヴェネツィア ヴィヴァルディとその周辺」向江昭雅ほか

*12日(土)「ヴァルター・ファン・ハウヴェ リコーダーリサイタル」田中せい子&ダニエレ・ブラッジェッティ共演

*14日(月)ヴィヴァルディ「四季」寺神戸亮&レ・ボレアード
有田先生、バディ様特出らしい。

*15日(火)「セバスティアン・マルク&宇治川智雅 リコーダーデュオ」

*16日(水)「タブラトゥーラ 25周年記念コンサート」
*  〃   「フランス音楽の彩を楽しむ 4」アンサンブル・レ・ナシオン
これは是非聞きたかったのに~(T_T) なんでタブラと同じ日なのよ。

*17日(木)「ローレンス・カミングズ チェンバロリサイタル」
ヘンデル「オットーネ」の指揮者のソロ公演。

*19日(土)「2台のバロックリュートによるドイツ音楽」佐藤豊彦&美紀

*23日(水)ヘンデル オペラ「オットーネ」日本ヘンデル協会
待ってましたっ!

*26日(土)「光のスペイン 日本に渡来したすべてのスペイン人宣教師に捧ぐ」杉本ゆりほか

*30日(水)「メディオ・レジストロ2009 メールラを中心とした17世紀の器楽作品」古橋潤一ほか
これも是非行きたい演目。しかし、クレマン・ジャヌカン・アンサンブルと重なっちゃってるんだよねえ◆

なお、芸大のヘンデル「アリオダンテ」はBCJのメンバーの大半(?)が出演。もはやマイナーではないので割愛しました(^J^)
他にも「SWISS WEEK」というのがあったが、知らないうちに完売でした。
それにしても、気がつくと一週間の間に5回もコンサートに行くことに……(!o!) こんなことは、北とぴあ国際音楽祭にサヴァールが来た時以来か。果たして大丈夫なのか、自分でも心配よ

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