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2009年10月 4日 (日)

クレマン・ジャヌカン・アンサンブル:やかましさと気概は変らず

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フランソワ1世とカルロス5世~16世紀スペインのカンシオンとフランスのシャンソン
会場:王子ホール
2009年9月30日

デビュー時より「やかましい」「うるさい」「お下品」とされ、語れば必ず賛否入り乱れるクレマン・ジャヌカン・アンサンブル。前回の公演の時もこんなイチャモンがあったんだよねえ。もう忘れてましたけどfoot

それでも、来日する度にコンサートに行ってしまう。以前、行った回数で多かったのは一にタリス・スコラーズ、二に彼らだと書いたことがあったが、タリスコはなぜか途中でもう一生分聴いた気になってしまい突然聞くのを止めてしまった。しかしECJは今もコンサートを聞き続けている。
CDの保有枚数もタリスコは多い。数年前の引っ越しでかなり捨てたのにまだ十数枚残っているということは、昔に相当数買ったということだが、一方でECJのCDはそれほど多くない。なぜかというと、ライヴと録音では彼らはあまりに差があり過ぎて、熱心に聴く気がなくなってまうからだ。
ハッキリ言って、録音では彼らの生の魅力の十分の一も伝えていない。体験するとボーゼン(~○~;)としてしまうほど。以前、NHK-FMで古楽祭でのライヴを幾つか放送していたが、それでさえ半分ぐらいの迫力減である。何せ声の発する波動みたいなものが全く違う。

で、今回の公演も正しくそれを再確認することとなった。演目は、同時期に対立したカール5世とフランソワ1世にちなんでそれぞれ当時のスペインとフランスの宮廷に関わった作曲家たちの作品を取り上げている。

前半はスペインもの。おなじみリュートのE・ベロックが端に、その横にドミニク・ヴィスを始めとする歌手5人がテーブルに座って楽譜をめくりながら歌う。
ヴィスは前回よりもさらに額の前線が後退(^^; 長髪もいよいよ真っ白だし、ベロック氏も髪が灰色っぽくなって年齢を感じさせている。が、しかし一旦歌い始めれば王子ホールの壁を揺るがさんばかりに声がやかまし~くimpact響き渡ったのであった。

後半も同様だったが、最初と最後に長めの曲を演奏し、間に短い曲とベロックのリュート・ソロを挟むという構成である。
1曲め、戦争をコミカルに歌ったマテオ・フレーチャの「戦い」は以前にも聴いた覚えがあるけど、大砲の音を真似して歌うところはやっぱり笑ってしまった。同じ作者の「ポンプ」は遭難した船乗りたちが神に祈って救出されるという、これまた笑える曲。救われた後にギターを伴奏に歓喜の歌を歌おうとするが、ギター弾きが調弦に失敗してベロ~ンngという音を出すのまで真似て歌い、さらにその度に歌手たちがベロックの方を見る。この趣向は客にウケていた。
他方、「涙は私には慰め」という歌詞だけだとダウランドみたいな曲は、限りなく濁った響きのポリフォニーがますます憂鬱をかき立てるものだった。これもまた聞き惚れました。

この手の短い声楽曲を連続してやる時は拍手を入れないのが普通。下手に拍手すると「野暮の極み」「無知」などと言われてしまう(^^; この日は聴くとつい拍手してしまいたくなるためまぱらに起こっていたが、ヴィスが「拍手したい時にしていいですよ」みたいなことを言った(多分)ので、会場は一気にリラックスした雰囲気(←なぜか変換できる)になった。

後半は彼らの十八番であるフランスのシャンソンなので、ますます賑やかに……。ジャヌカンの「狩」は何度聴いてもやかましくってバカバカしい楽しさ。みなさん真面目な顔をして犬の吠える声やらラッパの音(^レ^;)を歌ってみせてくれました。
それからジョスカンの「オケゲムの死を悼む挽歌」を聴けたのは嬉しい限り。

ベロックがP・アテニャンの短いリュート独奏曲を弾いている時に、プログラムの曲名を見たら「1529年編」とあった。他の作曲家を眺めてもほとんどは1500年代前半に活躍した人ばかりである。ジョスカンに至っては1440年生まれだ。500年も昔の音楽が今もなお目の前で演奏され、そしてそれを聴いている--などと考えると何やら言葉にできぬ感慨が湧き起こってくるのであったよ。

アンコールは最新作の「雄叫び」を集めたアルバム(-o-;)の収録曲だと思われる現代曲と、ルジュヌの酔っ払いの歌。最後は一同酔っぱらってグーグー眠りこけて幕となった。
近年は同じような守備範囲の若手の古楽グループが次々登場してきて彼らのような老舗はどうなんだろうと思っていたが、元祖「トンデモ古楽」の気概を見せつけたコンサートだった。

ただ一つ残念だったのはテノールがオリジナルメンバーのボルテフ氏でなかったこと。あ、もちろんS・グビウも文句はなかったですけどねnotes
次回は「雄叫び」コンサートを是非お願いしたい。


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コメント

 ブルーノ・ボデルフって、名前は知らないけどフランス映画で良く見かける、脇役俳優に似てますよね。

 さわやか革命さんに、思い当たる名前はありますか?

投稿: Pilgrim | 2009年10月12日 (月) 17時22分

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受信: 2009年10月12日 (月) 17時21分

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