「モーリス・シュテーガー リコーダー・リサイタル」:リコーダーを持って全力疾走した、とせよ。
名前も聞いたことのないリコーダー奏者であったけど、例の如く武蔵野市民文化会館のチラシの「超絶技巧のリコーダー、世界が驚愕する名人芸を遂に日本で披露」などという惹句につい浮かされてチケットを購入してしまった。チェンバロ共演が北谷直樹氏だしね(フォス・ムジケの一員として来日した時の記事はこちら)
で、実際に聞いてみてチラシの宣伝文句は大袈裟な煽りではなく、まさに事実であったことが判明した。
チェンバロが3台並ぶステージに登場したシュテーガーは細身のイケメン青年。1971年生まれということだが、もっと若く見える。外見は典型的日本人の北谷氏と並んで立つとデコボココンビみたい……なんて言っちゃいけませんね(^^ゞ
この日は「ヴィヴァ・イタリア!」とサブタイトルがついていて、イタリア人作曲家の作品を演奏した。前半はヴェラチーニ、ロッシなど一曲ずつ。シュテーガーは複数の笛を取っかえひっかえし、北谷氏もチェンバロを曲により使い分けていた。
リコーダーを吹きながら膝を曲げたり伸ばしたり、左右に身体を揺らしたりしてもう吹きまくり状態。華麗にしてスピーディーな演奏で会場を圧倒したのであった
一方、北谷氏も負けじと頑張り、前半最終曲のパンドルフィ・メアッリのソナタでは二人交互にソロを吹きまくり弾きまくったのであった。北谷氏の解説文によるとそのチェンバロ・パートは即興で演奏するそうである。そしてまさに「音楽的な内容はインスピレーションに富み、シンプルで分かり易いのだけど、部分的に高度な演奏技術を要求」されるのを見事に聞かせてくれたのだった。
後半は「ロンドンのイタリア人」ということでコレッリ、ヘンデルの弟子筋のバベル、そしてサンマルティーニをやった。
コレッリはロンドンに居たわけではないけど、大変人気があったそうで、なんとパブでも演奏されてたという解説にはビックリした(!o!) でも、落ち着いて考えればバッハとコーヒーハウスの関係みたいなもんかと納得。
この日は彼のソナタを本邦初演の装飾音をつけて演奏とのこと。当時のロンドンで実際に演奏されたものだそうである。その装飾音がシロートの耳にも複雑そうでなんだかすごい。音がダンゴ状どころか数珠状になってウネウネと連続する(=_=;)
アレグロを吹き終わった時には、シュテーガーは息継ぎがさすがに大変だったのか、大きく息をしていた。一方、最後に加えられたヘンデルではない作曲家によるシャコンヌはゆるやかで哀愁を感じさせるものだった。
その後の北谷氏のチェンバロ・ソロはヘンデルの『リナルド』の曲をバベルがアレンジしたもの。これがまた素晴らしかった。前回聴いた時にはヴィヴァルディを「一人時間差協奏曲」で弾いたのだが、今回はまさに「一人オペラ状態」だっ \(^o^)/
独奏でも壮麗にして華やかな序曲、そして名曲「私を泣かせて下さい」ではまさに客を泣かせたのであった。いやはや、もう降参です
それにしてもシュテーガー氏の演奏スタイルは、先日のファンハウヴェとは全く異なるものであった。まだまだ笛世界は広くて深いのであるのう( -o-) sigh...
以前に小池耕平がやってたリコーダーを一瞬、膝で支えて吹くというのを彼も2回ほどやったのでちょっとビックリ。あれは実は底穴を膝でふさいで高音を出していたというのをこちらで読んでようやく何をしてたのか理解できた。
最後に、一つだけ注文をつければもうちょっと小さな会場で聞きたかったですな……。
【関連リンク】
《チェンバロ漫遊日記》
当日は変な天気(昼間は薄ら寒い雨模様で、夕方は雨が上がったらムシムシしてきた)でご苦労様です。
| 固定リンク | 0
コメント