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2009年11月29日 (日)

第7回ヘンデル・フェスティバル・ジャパン「ヘンデル・オペラの名アリア」:ヘンデル先生は歌謡曲プロデューサーか?

0901129
チェスキー・クルムロフ城内劇場 真正バロック・オペラ招聘公演
会場:トッパンホール
2009年11月21日

ヘンデル・フェスティバル・ジャパンの実行委員長である三澤寿喜はかねてよりヘンデル・オペラの現代的演出に違和感を持っていることを表明していたが、今回の企画は当時の上演方法の一端を再現しようとするものだった。

チェコのチェスキー・クルムロフ城にはバロック劇場が残っていて、一度荒廃したものを復元したとのことである(←これってNHK-BSでドキュメンタリーやってた?)。
そこから当時の衣装の複製を持って来て、照明もフットライトを中心に使用(上方からの照明は使用しなかったらしい)。また、歌う時のジェスチャーも当時の様式を完璧に再現しての演奏となった。

演奏者は、城内劇場の音楽監督のオンジェイ・マツェクが指揮とチェンバロ、女性のチェリストとソプラノ、メゾ・ソプラノが各一名ずつが来日組。残り弦4人は日本人だった。それと、演出&ジェスチャー指導のズザナ・ヴルボヴァーが、前半と後半の始めに出て来て解説をしてくれた。マツェク氏もヴルボヴァー女史も結構若い人なんでちと驚いた。

プログラムはそれこそヘンデル名曲集で、「オンブラ・マイ・フ」や「私を泣くがままに」など有名どころをつなげて一つの物語風に構成している。前半と後半それぞれ締めは二重唱である。二人の歌手は華やかで派手な部分ははないものの着実な歌を聞かせてくれた。

ジェスチャー付きの歌は、極めて抑制され様式的な印象を受けた。感情を爆発させるのではなく、定まった動作の中に織り込むという感じである。
そういう意味では『アルチーナ』のアリアが一番興味深かった。愛する男に「裏切り者!」と怒りを表わした直後に「愛していたのに」と全く正反対の感情を歌うが、動作によってその相反した感情がキッパリとアクセントを付けて表現されている。当時はジェスチャーのうまさも歌手の人気に入っていたのだろうか。ただ、一番ジェスチャーがキマっていたのは歌手お二人よりも、当然のことながらヴルボヴァー女史でしたな(^^;

正直なところ、その様式化した動作にアイドル歌謡のアクションを思い出してしまった--と言ったら怒られるだろうか 歌と身体とスター性のつながりの中に何か関連するものがあるかも知れない。
やはり由緒正しいバロック劇場でこういうのを聞いてみたいと思った。まあ、日本では無理な話ですが……(\_\;

というわけで、やや学究的な地味だったものの興味深く聞けたコンサートだった。ただ、現代でのバロック・オペラの上演にこういう手法が向いているのかは判断がつかない。シェイクスピアの芝居だって様々な現代的なアレンジをされて今も上演され続けているんだしさ。もっとも、演出に気を取られてしまって音楽を聞く耳はお留守というのでも仕方がないけど。

個人的には、しばらく前から鼻かぜをひいていてこの時に悪化。鼻炎の薬を飲めばいいのだが、呑むとたちまちに眠気虫の大軍が押し寄せて来るのでコンサート前には使いたくない。鼻ジュルか眠気虫か--究極の選択だ~い(>O<)
仕方なく薬を飲んだけど、眠りはしないものの特に後半は頭がボーッとした状態での鑑賞となった。何か月も前から楽しみにしてきたのにトホホ(@_@)である。

【追記】
書き忘れてましたが、カメラ(NHK?)が入っていたので、そのうち「芸術劇場」あたりで放送があるでしょう。

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コメント

なるほど、それで真正バロック・オペラという看板を掲げたわけですか。やっぱり、蝋燭や松明の明かりだけの照明とか、舞台装置もせり上がりや宙乗りなどケレンミのあるものが、真正っぽいんでしょうかね。
ジェスチャーが重要だそうですが、一定のものだけにこだわると、様式化ー>形式化ー>形骸化の道を辿ることになり、墓穴を掘りそうな気がします。
まあ、ひとつのアプローチとしては面白いけど、これ一辺倒で行くのは、無理があり、すぐに飽きられそう。

投稿: レイネ | 2009年11月30日 (月) 18時43分

今回はほんの一部だけだったんで、実際のところ当時はどうだったのかというのはよく分かりませんでした(^^ゞ
しかし、その時の観衆を夢中にさせたものがどういうものだったのかは興味があるんで知りたいですね。

ということで、買ったまま見てないル・ポエム・アルモニークがリュリをやったDVDを早く見なければ……正月休みの宿題かな

投稿: さわやか革命 | 2009年12月 1日 (火) 07時12分

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