古楽(2009~2012年の記事)

2012年12月31日 (月)

2012年を背負ってみる

震災直後の昨年とは一変、「叩き合おう、ニッポン」みたいな雰囲気が溢れた一年だった。大同を捨てて小異を叩く。叩いて叩いて叩きまくれ(・_*)\ペチッ
ウツである……

◆古楽系
☆公演
「ドイツ室内楽の楽しみ」
「宇治川朝政リコーダーリサイタル」
なんてったってジョシュ・チータムだった。特に前者でのバッハ独奏は素晴らしいの一言。ああ、あの瞬間をもう一度よ

フライブルクバロック・バロック・オーケストラ
ベルリン古楽アカデミー
過激派はイタリアだけじゃないんだぞっと。

「病は気から」
さすがの宮城聡であった。

*企画賞:「名橋たちの音を聴く」
ラストで盛り上がったところでそのままが船がビアガーデンに突入……ってのはどうでしょう。

*最少聴衆賞(国外アーティスト限定):「ステファノ・バリアーノリコーダーリサイタル」
会場全体の座席数と客の人数の比率において、かつてのクイケン兄弟さいたま劇場公演の記録を更新したのである。

☆よく聞いたディスク
*「マレ、サント・コロンブ」(ジョシュ・チータム)
ナマがよかったんで、録音も購入。DVDのおまけ付きでスキップ・センペの顔も見られてお得感倍増だ。

*ブクステフーデ:カンタータ「われらがイエスの四肢」(クイケン&ラ・プティット・バンド)
劇的なアンサンブル・クレンデ、官能的なラ・ヴェネクシアーナ、合唱に重きを置いたBCJに比べ、当時の地方の教会ではこんな風に演奏されていたのか--というような素朴さに満ちた録音。もう「引退してよし!」と言われつつもクイケン親父、やってくれます。
葬儀のために作られた「安らぎと喜びもてわれは逝く」も収録。沈黙の深い淵から立ち上がる歌声に、微細な光のようにガンバの音が縁取っている。

*F.クープラン:「コレッリ賛」「リュリ賛」(ピエルロ&リチェルカーレ・コンソート)
F・フェルナンデスのヴァイオリンが繊細極まりない。彼らについてはバッハの「マニフィカト」も愛聴。

*「「ピンク・ムーン」へのレクイエム」(ジョエル・フレデリクセン)
なんだか独特の空間が感じられる音である。

*コレッリ:「トリオ・ソナタ集Op.4」(エンリコ・ガッティ&アンサンブル・アウローラ)
スルメイカのように噛めば噛むほどおいしい汁がまだ出そう。


◆ロック・ポップス
*「雪のための50の言葉」(ケイト・ブッシュ)
「ロック界最大のお嬢」とはいえ、もういい年のはずだが、ここまですごいものを作れるとは。トータル・アルバムとして隅の隅まで神経が行き届いている。参りましたm(__)m

*「春夏秋冬」(ザ・ディセンバリスツ)
今年のアルバムではないが、ネットラジオで初めて聞いて気に入った!

*「至高の魂のために~ニーナ・シモンに捧ぐ」(ミシェル・ンデゲオチェロ)
トリビュートものとして高水準。

◆本
*「股間若衆」(木下直之)
本屋で見た瞬間、すぐ手に取って買ってしまった。「駅前美術」の研究としても面白い。
「毒婦。~木嶋香苗100日裁判傍聴記」(北原みのり)

「ジャコモ・フォスカリ」1(ヤマザキマリ)
「すもうねこ」「すうねこ もふり寄り」(はすまる)
職場で回し読みした。岩清水くんのその後が気になる。

◆その他
「ピーター・ブルックの魔笛」
「レヒニッツ(皆殺しの天使)」
毎年ロンドンまで芝居を見に行く知人がいるのだが、その理由が少し理解ができた気がする。

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「クリスマスコンサート 2012」:サンタがガンバ弾けば奇跡が起こる?!

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主催:木の器
会場:近江楽堂
2012年12月24日

木の器のクリスマスコンサート、去年も行ったが、今年ももちろん行きましたよ(^^)

プログラムはクリスマスに関係ある曲と関係ない曲を取り混ぜて--だそうで、ゲスト参加はソプラノ名倉亜矢子、ガンバが譜久島譲だった。

クリスマス系の曲はヘンデル、ヴィヴァルディなどの宗教曲で、それ以外には宇治川朝政のリコーダーを中心にしたクープランやパーセルといった作曲家の器楽曲が演奏された。「愛のうぐいす」は色っぽさより、ためらいがちな慎重派という印象(なんのこっちゃ)。また定番曲「忠実な羊飼い」も登場した。

名倉女史は朗々と歌い上げるタイプではないので、以前大きな会場で聞いた時はやや物足りなかったが、近江楽堂では声が美しく響いた。特にカンプラのモテットがよかったかなー。それから「グリーンスリーヴス」に歌詞を付けてクリスマスソングにした「マリアの膝で眠る子は」は、あまりこの手のコンサートでは聞いたことがないもので珍しい。

さて、アンコールでは去年と同様サンタがステージに出現 客も含めたの「もろ人こぞりて」の合唱ではガンバを弾いていたぞ(^_^;
くじ引きプレゼントコーナーでは、なんとバラバラの数字を引いたにもかかわらず、同じ列に並んで座っている3人(知り合い同士ではないらしい?)が連続して当たるというハプニングが起こった(!o!) こりゃ奇跡といっていいのかね~。クリスマスらしくめでたい出来事であった。
ただ、座席の場所の選択を間違えたので、次は注意しよう。

また来年も楽しいコンサートをお願いします(@^^)/~~~


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2012年12月30日 (日)

「フィギュラシオン--劇場音楽と舞踏」:音楽と踊り、空間と形

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演奏:ザ・ロイヤルコンソート
会場:ルーテル市ヶ谷ホール
2012年12月18日

ガンバの合奏曲を専門に演奏するザ・ロイヤルコンソート、今回はバロックダンスと共演である。上村かおりを中心とする6人のガンバ弾きに加わるゲストは、チェンバロの山縣万里とダンサーの松本更紗だった。

M・ロック、パーセル、ロウズ他の英国産の合奏曲が続く中で、舞曲にダンスが入るという趣向である。ダンサーの松本女史は仮面を付けたり花を一輪手にして踊ったりと、細かく工夫を凝らしていた。
後半の冒頭ではチェンバロによるリュリやカンプラなどフランス人作曲家による作品とダンスの組み合わせとなった。
いずれも聞いて楽しく見て楽しいものだった。ただ、ダンスは私には上品過ぎたかも。
それ以外では、フェラボスコ2世作の2人による合奏曲が印象に残った。

配布のプログラム解説で「影の目玉」作品と書かれていたのは、ピックフォースという正体不明の作曲家による「5声のインノミネ」である。5人の異なる絵筆による「一枚の抽象画」というたとえの通り、何やらミニマリズムぽく微妙に変化しつつ永遠に反復して続いて行ってもおかしくないような曲だった。

チト参ったのは、会場の空調だ。前半はものすごく暑くて汗をかいてしまった。一転、後半は涼しい風がソヨソヨと頭上から吹いて--吹き過ぎて寒くなってしまった。近江楽堂に続いてここもかい。なんとかしてくれい

共演コンサートが控えているせいか、つのだたかしの姿を見かけた。他には波多野睦美、それと辻康介ぽい人も。

もう何年も古楽系コンサートでおよそ70パーセントの割合でよく出会う人がこの日もいたので、思い切って「よくお会いしますね~」と話しかけようかと思ったけど、「え、知りません」とか言われたら涙目になってしまいそうで、勇気が出ず……(T_T)グスッ


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2012年12月23日 (日)

「クリスマス・コンサート 2012」:鎮魂のクリスマス

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スペイン・ルネサンス音楽の巨匠
演奏:ラ・フォンテヴェルデ
会場:ハクジュホール
2012年12月14日

鈴木(弟ヨメ)美登里主宰のラ・フォンテヴェルデ、毎年クリスマス・コンサートをやっているそうだが、私が行ったのは初めてのようだ。(記憶があいまい(^^ゞ)

スペインの巨匠ビクトリアの合唱曲を中心に、他にカベソン、ロボ、ゲレーロの作品も交えての演奏である。
前半はその作曲家たちの聖母子のための曲を集めたものだった。この日の歌手の人数はゲストを加えて12人と、このグループとしては多い方で、色々と編成を変えて歌われた。中には男声4人だけというのもあった。他の作品は「複合唱」という形式が多かったが、こちらは純然たるポリフォニーの世界。ウットリであ~る。

後半はビクトリアの「レクイエム」一曲真剣勝負。配布されたプログラムに、鈴木美登里がこれをクリスマスコンサートで演奏する理由について、大震災の被害がまだ未解決なのに「遠くにいるからといって何もなかったようにはしゃぐことはできないような気がします」と書いている。実に硬派である。お見それいたしましたm(__)m

12人総出で、いずれも個人でも実力ある歌手が揃い、流麗なルネサンス合唱の世界を存分に味わせてくれた。指揮者がいないので(鈴木女史が合図を出していたが)タリスコ風の端正かつ整然とした美を求める人には不満だったかもしれない。が、代わりに個々の歌手がバランスを取りつつコーラスを紡ぎ出していく、という別の形の美しさが存在したのである。

4月に彼らとザ・ロイヤルコンソート、つのだたかしとの共演コンサートが予定されているためか、つのだたかし(波多野睦美も?)、上村かおりを客席で見かけた。
こちらも楽しみであるよ


それにしてもハクジュホールは音はいいけど、この狭苦しさは勘弁である。座っててエコノミークラス症候群になっちゃうんじゃないかっていうぐらい。地震や火事が起こったら他人を踏んづけて逃げられる人間だけが生き残れることだろう。


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2012年12月22日 (土)

「ベルリン古楽アカデミー」:バッハ先生魔物説

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会場:トッパンホール
2012年12月12日

数日前に行ったイタリア・プログラムが興奮するほどによかったので、引き続いて鼻息も荒く突撃したAKAMUS単独公演である。この日の内容はテレマンとバッハというドイツ物だ。
平日夜だが、満員御礼であった。

彼らの録音でバッハ、テレマンというと前者は「ヴァイオリン協奏曲」(ミドリ・ザイラーがソロ)、後者は「ラ・ビザール」を聴いてていた。曲目はこの日のとは重なっていないが、バッハでのM・ザイラーの先鋭的演奏やテレマンでのまさに「珍奇」なイメージがバクハツして、十二分にその個性が発揮されている。もちろん愛聴盤だ。

しかし……うーむ、結果は今一つであった。なんというかね、ヴィヴァルディの出来に期待し過ぎたかなあ(+o+)

テレマンはまだよかったんですよ。一曲目の「ミュゼット」はミュゼットを模した部分も面白くケレン味もあって楽しめた。
それから「4つのヴァイオリンのための協奏曲」は実際にヴァイオリン4挺で、他には一つも楽器なし(!o!)という珍しさ。へー、テレマンはこんなのも作曲してたんだーという驚きの一曲だった。それまで、コンマスの陰に隠れてた3人のヴァイオリニストも堂々と活躍していた。

なのに、どういうわけかバッハについては今イチ冴えず……。なぜだっ 他のグループに比べたら「並」の出来だとは思うのだが。AKAMUSならばもうちょっと踏み込んでキメてくれるんではないの? そんな物足らなさばかり感じたのであった。
特にラストの「二つのヴァイオリンのための協奏曲」あたりは、なんだか演奏者同士のコンビネーションがうまく行ってない印象だった。
それともバッハ先生の作品には、いかに優れたグループでもうっかりすれば「並」レベルになってしまうような魔物が潜んでいるのであろうか? 怖いのう(>y<;)

まあ、ヴィヴァルディ公演と順番逆に聞いたら分からないけどね(@∀@)

ということで、アンコールは先日のプログラムからカルダーラとヴィヴァルディ一曲ずつ。大ウケで大喝采であったよ。

【関連リンク】
「こんなコンサートに行った~ベルリン古楽アカデミー」
札幌公演の様子。「会場はガラガラだった」--2000人の会場でやるのは、東京でも難しいと思うですよ

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2012年12月16日 (日)

「ジャン=ギアン・ケラスwithベルリン古楽アカデミー」:ヴィヴァルディ節炸裂す

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会場:トッパンホール
2012年12月8日

私の守備範囲からは完全に外れているため、ジャン=ギアン・ケラスとは何者か全く知らなかった。チラシなぞ見てみると、イケメン若手チェロ奏者みたい。ベルリン古楽アカデミー(略称はAKAMUSというのな。今度こそ覚えたぞ(^^;)のヴィヴァルディが聞けるならと、ともかくチケット購入したのだった。
会場はほぼ満員だったようだ。

今回のコンマス(全部で4人いるんだっけ?)は頭頂の輝きも見事なゲオルグ・カールヴァイトである。
編成はヴァイオリン3+3、ヴィオラ2、通底はオルガン+チェンバロ、チェロ、コントラバス、ファゴット、リュート+バロックギターだった。

冒頭はヴィヴァルディのオペラのシンフォニアから演奏。のっけから勢いが全開な調子で、おおお(!o!)来る来るとノリが高まったところで、ケラス氏が登場してチェロ協奏曲を一曲共演。彼が引っ込んでまた別の曲--という風に一曲おきに共演曲を挟み込むという構成を取って進んだ。
同時代のカルダーラの曲も二曲演奏された。

共演曲では珍しや、チェロとリュートの掛け合いや、チェロとファゴット(奏者は大柄な美女)がソロを取る協奏曲などもあって面白かった。
ケラス氏はさすが生きのいいチェロ奏者ということで、先鋭的かつ攻撃的な演奏だった。しかも楽器のエンドピンを外して心はもはや古楽といった様子である(弓はモダンのまま?)。
ただ、いずれにしても聞いてみて正直なところやはり私の守備範囲外という印象だったのは否定できない。

全体の中で一番良かったのはケラスが入ってない曲だけど、「調和の霊感」11番だったと思う。近年、「イタリア過激派」の台頭が甚だしいが「ドイツ過激派」も負けちゃいられねえ~というぐらいにドトーのような迫力である。ヴィヴァルディの俗っぽさ、大仰なところまで全てをひっくるめてプラスへと転化する演奏だった。ブラボーが飛ぶのも納得だ。
この曲でAKAMUSのチェロ奏者のおねーさんもなかなかの使い手だと判った。

アンコールはチェロ協奏曲から3曲やってくれた。
思わず興奮した満足感深いコンサートであった。

12日のドイツ篇の公演は次に書く予定。

【関連リンク】
三鷹市芸術文化振興財団HPより
ページの下方でコンマスのカールヴァイトが初来日した時の思い出を語っている。なんだよ、エエ人じゃないか。思わず涙目になっちゃったよ。


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2012年12月 4日 (火)

音楽付きコメディ「病は気から」:医者が来りてホラを吹く

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作曲:マルカントワーヌ・シャルパンティエ
台本:モリエール
演奏:寺神戸亮&レ・ボレアード
ステージング:宮城聡
潤色:ノゾエ征爾
会場:北とぴあ さくらホール
2012年11月23・25日

毎年開催の北とぴあ国際音楽祭。今回はフェスティバル/トーキョーに行ったりして、オペラ公演しか行けなかった。なお、この音楽祭についてご存じない方はこちらの記事の後半にまとめてあるのでお読みくだせえ。

さて話題はなんてったって宮城聡が加わっていること。彼が主催していたク・ナウカの芝居は幾つか見たが、オペラ&喜劇というのは初めてでどういう風に演出するのか興味津々であった。
もっとも基本は演奏会方式(「セミ・ステージ形式」となっておりますな)なので、オーケストラはステージ上にいるし、原作は舞踏喜劇となっているがダンスは無しということになる。
ところで、この一か月前に宮城聡は芸術監督をやってる静岡のSPACでも上演しているのだが、こちらは音楽なしで芝居部分だけを全部やったとということなのかね?

会場に入ってまず驚いたのはステージ上方に「医大合格 留医予備校」という看板がかかっているではないか。な、なんと自治体が運営する公共ホールの資金難もここまで極まれり遂に開演前のステージに広告を出すほどまでになったのか(>O<)……と嘆いたが、ん?待てよ「留医予備校」、留医、ルイ……14世

ということで、プロローグはオーケストラの背後に階段状に座席が設けられていて、そこに予備校生たちが座り、ルイ14世ならぬ留医予備校をヨイショする歌が始まる。
2人の学生(羊飼い)が我こそはと歌合戦をするが、そのうちの一人を歌っているE・ゴンザレス=トロが妙に学ランが似合っていて笑ってしまった。
メガネっ娘の女子高生フローラ役のマチルド・エティエンヌは、清廉ながら力強い歌声を壇上のてっぺんから響かせたのであったよ。

その後は、病を気にし過ぎの親父が娘を医者の家へ嫁にやろうとする本筋の喜劇、そして幕間劇が交互に演じられる。原作では幕間劇は喜劇の方とは関係ないそうなのだが、ここではすべて医者の話に仕立ててくっ付けてあった。
芝居の部分では日本人の役者と外人勢の歌手が日本語とフランス語のセリフで会話したり(仏語の時は字幕がちゃんと出る)、幕間劇では原語の歌と日本語のセリフの掛け合いなんてのもあった。もっとも、後半ではガイジン組も日本語のセリフで話してましたな

ラストは冒頭の予備校に戻り、医者になる怪しい儀式が行われる。インチキなラテン語が飛び交ったようなのだが、そこまで聞き分ける言語耳は当方になかったのは残念無念である。ここでも、親父役の阿部一徳(なぜか野田首相にクリソツ)が大いに笑わせたのだった。
ここでは医者は徹底的に諧謔の対象となっていて、医者への疑惑な眼差し(わけわからないこと言ってぼろ儲けしてんじゃねえの--みたいな)は国も時代も違っても、変わらないのだなあと変なトコで感心してしまった。
そして、白衣をまとった指揮者の寺神戸亮が無事に最後のオチを決めて、会場を爆笑に包んだのである。
私の後ろにいたオバサンは「寺神戸さんブラボー」と叫んでましたよ(@∀@)

全体的に見て思い浮かべたのは、歌手が曲の合間にコントを演じてた昔の歌謡番組である。能天気で統一性のないバラエティな感じがよく似ている。
そんな現代の日本人が上演するのには極めて難しい演目を、よく成り立たせたもんだと感心した。歌手と器楽と役者のコラボがよほどうまく行かないと無理だろうし、その三つのどれかに比重をかけすぎても壊れてしまう。

ク・ナウカ時代にはシリアスな劇しか見たことなかったのだが、5人の役者の笑わせぶりも達者だった。合唱で一緒に歌っていたのには驚いたけど……(!o!)
ネットで役者不要論を見かけたが、夜警たちに男が職務質問(?)される幕間劇はやはり役者が演じないと無理だろう。特にチェンバロ担当の上尾直毅がバロックギターも持ってたまに弾いていたのを、「偉そうにあんた両方の楽器同時に弾けるのか、ゴルァ」と弟役の泉陽二にいじられるところなんかこれまた爆笑であった。

ヒロイン役のM・エティエンヌは過去にこの公演で見た(聞いた)ことがある。間近では小柄な印象だったのが、舞台では大きく見えて声も外見も舞台映えするのね
日本人では安冨泰一郎が、いかにもおフランスな晴れやか系テノールで聴衆を引き付けたのだった。
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というわけでS席6000円ナリの元は完全に取れたのは間違いあるまい。
蛇足ながら、プロローグでの野々下由香里の女子高生姿可愛かったですわ(*^o^*) ポッ それとラストでは波多野睦美のメガネの女医さん萌え~
なお、お二人が「ムーア人の女」に扮して歌った幕間劇は、踊りはなかったけど退廃的な雰囲気が充満してましたな。

来年はモーツァルトか……どうしようかな(・・;)

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2012年12月 2日 (日)

ヘンデル「パルテノペ」:二股愛発覚!その時王女は

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主宰:日本ヘンデル協会
演出:原雅巳
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
2012年11月23日

日本ヘンデル協会のオペラ公演はこれまで3回行っている。「忠実な羊飼い」「オットーネ」「アレッサンドロ」である。
今回の公演日は北とぴあの「病は気から」の初日とバッティング。一年は365日もあるのによりによって何故(?_?;と思っちゃうのは私だけか。

それはともかく、この作品はヘンデルがいったん人気が落ちて休止したオペラを再開して二作目ということである。そして、珍しいことに喜劇なのであった……。

現在のナポリにあたる王国の女王パルテノペは花ムコ選定中。決定したのは王子アルサーチェであるが、なんと彼は故郷で婚約者を捨ててきたという過去を隠していたのであった。おさまりが付かない元カノは男装して追ってきて宮廷に潜り込む。
二股愛発覚か!という事態が進行する中、さらに女王には二人の求愛者が出現するのであった。

「あれ、あそこに見えるは元カノにクリソツな男じゃないの(☆o◎;)ガーン!!」と動揺してあわてふためく場面に始まり、一貫して二枚目ながらトホホなをアルサーチェ歌うのは上杉清仁である。コミカルな演技もうまいのね~。あ、もちろん歌の方もブラボー飛んでましたよ。
いかにも女王然とした貫禄ある歌唱を聞かせてくれたのは藤井あや。でも、役としておいしいのは元カノのロズミーラにして男装のエウリメーネをやった高橋ちはるの方だったかな。こちらもコミカル演技が笑わせてくれた。

ひ弱で優柔不断な草食系男子にして最後は女王の愛を射止めるアルミンドの民秋理は線が細いソプラノで、いくら草食系たってこりゃ線が細すぎじゃないの~(@_@;)と思ったが、解説を読むと当時のカストラートはか弱いのがウケたそうな な、なるほど。
辻康介の名がプログラムにあったがどこに出ているんだろう(^^?)--と思ったら、歌はコーラスに参加だけだったのね。

上演の形式はヘンデル時代さながらのカツラと衣装に、バロックジェスチャー付きだった。解説によると、その他の様式も忠実に再現しているとのことだ。一人、ダンサーも入ってバロックダンスを見せてくれた。
またそもそも、当時のオペラは舞台上の一貫した流れによる近代的な感動を求めるものではないので、アリアは芝居の進行を止めて歌われるものだということである。そういや、休憩時間中に「なんで(アリアが)こんなに長いの~」とボヤいてた客がいたが、それも道理ということか。

楽器の方は舞台の右端に陣取って演奏した。コンミスは大西律子。少人数編成で長丁場を手際よく乗り切ってた。天候不順だったせいか、頻繁に調弦していたのはご苦労さんである。

日本では上演される機会が滅多にないヘンデル先生のマイナーなオペラを見せて聞かせてくれるのはありがたい。また来年もよろしくお願いしまーす

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2012年12月 1日 (土)

聴かずに死ねるか:マイナー・コンサート編 12月版

なんだかドトーの勢いではや師走であります。

*14日(金)ラ・フォンテヴェルデのクリスマスコンサート
*18日(火)ザ・ロイヤル・コンソート
今回はバロックダンス付き
*24日(月)木の器主催クリスマスコンサート

他にはこんなのも。
*1日(土)マドリガーレの愉しみ(ラ・フォンテヴェルデ)
書くの間に合わなかった。すいませ~ん(>_<)
*8日(土)ラウデージのクリスマス
*12日(水)アンサンブル朋
*15日(土)アンサンブル室町
*16日(日)曽根麻矢子 クープラン&ラモー
*21日(金)ザ・ファースト・ノエル2012
*22日(土)&23日(日)ルネサンス・フルート・コンチェルトで奏でるヴェネチアのクリスマス
*24日(月)ケルティック・クリスマス
*28日(金)年忘れガブリエーリ祭り
こりゃ、ぜひ行きたいけど御用納めの日というのが却って微妙に行きにくいのよ

今月はベルリン古楽アカデミーがあり。また恒例「メサイア」も様々にありますな。

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2012年11月14日 (水)

「Concert a Trois」:アンサンブルの愉しみ

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演奏:若松夏美、平尾雅子、副嶋恭子
会場:近江楽堂
2012年11月6日

ベテラン奏者3人の演奏会。どういう経緯でこの3人が集うことになったのかは不明である。これからもグループ組んでやるという感じでもないようだ。

プログラムは前半ドイツ、後半はフランスと分けた内容である。ドイツ勢はややのんびりとした感じのテレマンのトリオソナタで始まった。続くクリーガーは初体験の作曲家。バッハより30年近く先輩の作曲家だが、旋律が美しく心地よかった。

ここで平尾女史が引っ込み、二人でバッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタを演奏した。これがまた迫力大だった。さすが若松女史、BCJのコンミスは伊達じゃねえ~ ナイフのように鋭く畳み掛けるような音の連鎖だった。鍵盤の方も大いに腕の見せ所あり、一瞬たりとも気が抜けない緊張の一曲だったのは間違いないだろう。

休憩を挟んでフランス勢は、平尾&副嶋でマレの組曲から。さすがベテランという調子で威厳と優雅さを兼ね備えたマレを聞かせてくださいましたのよ
フランクールという作曲家も初体験だったが、ちょっと私には上品過ぎな曲調だった。ラスト二曲はラモーのクラブサン・コンセールで副嶋女史が再び活躍。アンコールもラモーだった。

派手なところはないが、アンサンブルの楽しさ・面白さが地道に伝わってくるコンサートで満足よ(^^) またこの三人でお願いしまーす。


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