「アバター」:最新技術を駆使した力作を阻むラスボスは「あの人」?
監督:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン
米国2009年
ジェームズ・キャメロン十ウン年振りの新作! もはや、興行成績は「ダークナイト」を越えたとか越えないとか。ということで見てきましたよ……2Dで。
なぜシネコンの同じ時間帯に3Dもやってたのに、敢えて2Dにしたのか--その理由は単に私がひねくれ者であるという以外にはない(火暴)
あ、でもメガネの上に3D用メガネなんてかけてられっかと思ったけど、今はちゃんと通常のメガネに取りつけられるのがあるんですねー(有料だけど)。知らんかった。
次からは「ひねくれ者」を止めて、素直ないい子になります(^^ゞ
物語はニューシネマ以降の西部劇(先住民に対する侵略行為を反省した)を設定だけSF版にしたと言っていい。
惑星の先住民ナヴィの村落の地下にはお宝の鉱山が眠っている。それを狙う企業に軍隊……。
主人公はさしずめ騎兵隊崩れというところか。先住民との融和を図る「女教師」がシガニー・ウィーバー扮する学者だろう。
しかし、それだけでなく観た多くの人が感じるだろうが、宮崎アニメの影響大。私は特に「ナウシカ」を連想した。だって、惑星ではマスクをしなければ人間は生きていけないって、まんまじゃないですかっ(!o!) 他にも似た場面多数あり。
他にも、主人公が「戦士」であるから受け入れられるというのは、ジョン・ブアマンの「エメラルド・フォレスト」を思い出した(息子じゃなくて、パワーズ・ブース扮する父親の方)。他作品の連想が相次ぐのは「カールじいさん」以上か。
異星の動植物や光景を一から造形したのは見事だ。大昔、B・オールディスの『地球の長い午後』を読んでその描写に感心したことがあったが、それが今や映像で作り上げたのだから大したモンである。ただ、ロジャー・ディーンのイラストに似ているという指摘が方々から上がっていて、言われてみればなるほどだ。
青い先住民も最初は不気味な感じだが、だんだんと慣れて来る。でも、主人公(のアバター)が口の端を曲げて笑うのはどうも慣れなかった。それとも中の人が地球人であることを強調するためにわざとやってるのか?
実際の役者の動きをトレースしてCGで作っているとのこと。完全に架空の生物であってももはや実写との境がないほどである。
しかし正直なところ、前半の平和で美しい異世界の描写はいささか単調で飽きてしまった。代わりに、後半の戦闘場面になると一気に興奮へと突撃だー(3Dでも見せ場か)。なぜ、破壊と暴力の光景は常にこのように美しく刺激的なのであろうか? ウットリして見ている自分がチョビッとイヤよ(^^;
かように視覚面では細心に作り上げられているのだが、お話の方は、となると……。
後から考えると辻褄が合わない部分が続出。それどころかそもそも基本の設定である、しち面倒くさいアバターなんてモノを作って先住民と接触するという事自体あまり説得性がないような(?_?; 一応、もっともらしい説明を付けてるけど。
さらに、心理描写はあって無きに等しい。どうして、M・ロドリゲスの女兵士(「エイリアン2」のバスケスを髣髴とさせると評判)が主人公たちに味方をするのか全く説明がない。「彼女がきっぷのいい姐御だからだ」ということ以外には思い当たらないのだ。
視覚的描写の労力の百万分の一でも心理描写の方にさいて欲しかった。(これって贅沢な要求か?)
それから、食事の場面がほとんどないという指摘をしていた人がいて、思い返すと確かにそうだった。銃撃ってる時以外は飯食ってるジョニー・トー作品なんかとは格段の違い。もしかして、さすがに食生活まで創造するのは手が回らなかったか
戦争終了の後はあっけなくてこれも少し意外だったが、キャメロンはどうやら三部作にする構想を持っているらしい。となると、当然続編は「資本主義帝国の逆襲」だろう。
この作品は最新技術を駆使したJ・キャメロンの渾身の力技であることには間違いない……が、力技であることが果たして面白いことを保証するかというと、その限りではないのであった。
なお、ラストに出た出た出た~っ字幕担当者の名前は「冥王の回し者」こと「あの人」ではありませんか! 完全に凶となった(>_<) 勝手に「ダイナマイト」とか訳さないように。
映像度:10点
納得度:5点
【関連リンク】
《水曜日のシネマ日記》
的確な感想です。確かに主人公の設定が弱い--というか何をどう感じているのか分からないんですなあ。
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