「ずっとあなたを愛してる」:文科系映画
監督:フィリップ・クローデル
出演:クリスティン・スコット・トーマス、
フランス2008年
よれたコートを着た中年女が一人、タバコを吸いながら佇んでいる--。
クリスティン・スコット・トーマス、歳取ったとはいえ相変わらず美人 こういう場面が似合うんであったよ。
女は実はムショ帰り。そこへ長年疎遠だった妹が迎えに来る。妹は夫の反対をよそに自分の家へ住まわせるが、なかなか打ち解けては来ない。職探しもなかなか思うようには進まず。
ヒロインを中心にヒリヒリした人間関係の描写が続く。頂点は妹夫婦の友人たちと別荘へ遊びに行った件りだろう。酔っぱらった声のデカい男が彼女は今までどこにいたのかと囃し立てる。このエピソードの顛末は極めて皮肉だ。
また、アルツハイマーの母親と再会する場面も興味深かった。頑固で強大な母親に限って、さっさとボケて弱くなっちゃうのはどういうことよ。腹立つんだよねーなんてここで言っても仕方ないことですが(^o^;
ただ、様々なエピソードで引っ張った割にはラストは予定調和に収束してしまったような印象がある。最後に明かされる女の「犯罪」が情状酌量できるものだったというのも大きいだろう。もっと極悪非道なモンだったらどうしようかとドキドキして見ていたのだけどね。
途中退場の刑事のエピソードはやや唐突。効果的だったのかは疑問だ。
監督は人気のある作家とのこと。これが監督一作目らしい。そいうい面では良くも悪くもいかにも文科系映画という感じであった。
とはいえ、やはりC・S・トーマス絵になります。これがプヨブヨしたオバハンだったら、男も構ってくれないよね~。妹役のエルザ・ジルベルスタインは早くも最優秀妹賞決定か。
別荘に家族連れで集まり庭を子どもが走り回ってワイワイやってる場面は『夏時間の庭』を思い出させた。もっともあれは友人でなく、親戚で集まっていたのだが。
M・ハネケの『隠された記憶』では自分の家に友人たちを招いて手料理を出して、食卓で議論する場面があった。フランスの知識階級はああいう場で会話でやりあう、みたいのをよくやるんだろうか?
情状酌量の余地ある犯罪というつながりで、見ていてM・マンの『ジェリコ・マイル』も思い出した。こちらの主人公は父親を殺した罪で終身刑だったのだが、模範囚で仮釈放の候補となる。しかし、審査の場で「もう一度同じ立場になったら、同じ行為を繰り返しますか」という問いに答えられず、監獄に逆戻りしてしまうのである。
主観点:7点
客観点:7点
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《まどぎわ通信》
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