「誰がため」:欧州大戦暗黒裏面悲話(●女子妄想付き)
監督:オーレ・クリスチャン・マセン
出演:トゥーレ・リントハート、マッツ・ミケルセン
デンマーク・チェコ・ドイツ2008年
『カティンの森』に続き、ナチス・ドイツ占領下のヨーロッパの話である。こちらもまた陰鬱な実話に基づく作品でウツウツとするのは必至だ。最近、こんなのばかり観ているような気が……(^^;
さて舞台はデンマーク。レジスタンスのグループに所属する二人の男が、対独協力者を次々と暗殺していく。そこに謎の女が現われたり、妻が他に男を作ったり、さらには偽の指令によって無辜の人間を殺害してしまったのではないかという疑いが生ずる。
まあ、悪い奴というのはどこにでもいるもんで、国家存亡の危機にあっても金儲けを企むなんてのは、恐らく敗戦時の日本でもあったはずである。国民がみんな窮乏状態だろうとガッポリ儲けるヤツは儲けているのだ。そういう卑劣漢がここにも登場する。
組織末端の二人は愛国心や正義感によって殺していくだけなのだが、連合国やら逃亡政府(でいいのかな?)やら複数の勢力の思惑が入り乱れて、邪魔者扱いされたりする。もっとも、これはデンマークだけでなくて、レジスタンス活動がさかんだった国は似たような状況だったようだ。歴史の暗黒面といったところだ。
虚無的な雰囲気の中、ラストは破滅へと転がっていくのを避けられない。果たして二人は英雄だったのか、利用された殺し屋だったのか、数十年の時を経ても容易には決められないだろう。
時代が時代だからか、主人公に懸賞金がかかっているのに平然と父親の元を訪ねたり、地下に潜ったりせずに下宿に居続けたり……その頃は悠長だったんでしょうか(^^?
もっとも見方を変えて、時代や設定を別にしてみると、マフィアもののノワール映画として見ることも可能だろう。すなわち--組の命令で裏切り者を次々と葬っていくヒットマン、しかし実は内部抗争に利用されていただけだったのだ~っ(!o!)
スタイリッシュな暗殺場面、定番ファム・ファタール出現、組織の非情、ゲシュタポの隊長はさしずめマフィアの首領か、そして熱い男の友情もあり。
そうなると、壮絶なラストはなんとはなしに香港ノワールを髣髴させるような気も……。(敵方の数がやたらに多いところとか)
ということで、ノワール系が好きな方にもオススメだろう。
難は相手役の女優さんがイメージ的に今イチ「運命の女」度数が低いこと--演技は問題ないんですがね(~_~;)
主役二人は対照的なタイプだが、それぞれカッコエエです。年長のシトロン役は今『シャネル&ストラヴィンスキー』も好評なマッツ・ミケルセン。要チェックか
それにしても、この二人あまりにもフ女子の妄想に燃料を注ぎそうな取り合わせではある。特に、二人で地下室でグダグダしてる場面なんざ妄想大暴発という感じ。まさか、狙って……るわけはないですな┐(´~`)┌
男の友情度:8点
暗黒度:8点
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