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2010年3月11日 (木)

「ディドーネの嘆き」:青のドレス疾走す

100311
演奏:ロベルタ・マメリ&つのだたかし
会場:日本福音ルーテル東京教会
2010年3月2日

コンサートの時はいつも自由席なこの会場であるが(というか教会によくある木製ベンチが並んでいるだけなのだ)、今回は指定席になっている--というのも驚きであったが、実際行ってみてさらにビックリ
私はB列だったもんで油断していたら、なんとBが最前列だったのだ。期せずして「ロベルタたん、ハアハア(^Q^;)」な座席になってしまった。チョビッと緊張しちゃう。いや、私は別にハアハアしませんけど。

過去にラ・ヴェネシアーナの一員としてや波多野睦美とのデュオは聴いてきたが、単独公演はこれが初めて。マメリ女史は上野での「ロ短調ミサ」と同じ、色鮮やかな青いドレスで現われた。
なお、ご当人はチラシなどによく使われている写真とは全く違う。もっと若くてスラリンとした美女である。いい加減、別のを使ってくれい。

さて、その第一声を発した時の会場の雰囲気をなんと表現したらいいだろう。あたかも一瞬にして真空状態になり、聖堂内には「声」以外には何ものも存在しないようだった。客席は気を呑まれたように静まり返り、圧倒的な歌声に気圧されるばかりだったのである。
しかし、かつてハクジュホールでもつのだたかしの伴奏で、ソロで歌ったのは聴いたはずなのになんだか迫力が数段違う。やはり、音楽とハコというのは密接な関係があるのだろうか。

プログラムの内容は初期イタリア・バロックの歌曲である。前半はカッチーニ、ディンディアなど。途中でつのだたかしのキタローネによる、カプスベルガーの演奏が入った。
公演タイトルはディンディアの曲で、パーセルが『ディドとエネアス』で題材にしているのと同じ物語である。これがまた緩急自在に歌声を繰り出し、ラストのヒロインが死に致る場面は、語るように消え入っていった。思わず聞き入ってしまう。

後半一曲目のメルラは聖母マリアが歌う子守歌という設定だが、子守歌らしからぬ激情にには驚かされる。続いてモンテヴェルディが3曲で、『ポッペア』の王妃が歌う「さようならローマ」はやはり圧巻であった。激し過ぎず、嘆き過ぎず、語りとも歌ともつかぬギリギリの所で微妙にバランスを取っていた。
その後、女性作曲家ストロッツィの作品で終了。

いやはや、とにかく圧倒されました。ただ、唯一の不満はいささかドロドロした失恋や恨みの曲が多かったかなー、ということ。もう少し軽めの曲も間に入れて欲しかった。
と思っていたのだが……。

アンコールは2曲やったが、一曲目が終わった時にマメリは退場したのになぜかつのだ氏は座ったまま。あれ、なんで(^^?と思うのもつかの間、まだ前の拍手が続いているのにやおら前奏を弾き出したのであ~る。
と、その途端に脇のドアから、マメリがドドドーッと走り出して来て必死の形相で壇上に駆け上がると、ギリギリセーフで歌い始めたのであった。
曲は、先程も歌ったモンテヴェルディのややコミカルな恋愛歌である。それをさらに今度は滑稽なジェスチャーをつけて歌ったもんで、もう会場内はオオウケだった。

当然のことながら、これは二人で最初から打ち合わせてやってるのだろうと思って見ていたのだが、歌い終わってからマメリが脇から出入りする時の様子を見ていると(最前列なんで他よりよく見える)、どうもこれは違うのではないかと感じた。
恐らくジェスチャーをつけて歌って笑いを取るというのは予め決まってたのだろうが、前奏を先に始めてしまったのは、つのだ氏が勝手にアドリブでやったように見えた。彼は、どうも雰囲気がちょっと真面目過ぎだだと考えて、それを変えようとしたのではないだろうか。
だから、必死に彼女が走って来たのは演技ではなかったのでは? それで、つのだ氏をポカポカ叩くジェスチャーは焦った怒り半分で本気がかなり入っていたと思える。

しかし、これで真面目だけでないマメリ女史のコミカルな面も引き出して見せたんだから大したモンである。思えばつのだ氏は過去に巫女系美女のロー・フュジェールを舞台上で爆笑させたということもあった。こんなことは朝飯前か。
いよっ(^_-)☆つのだ「女泣かせ」ならぬ「女笑わせ」とは憎い、ニクイぜ、このこのこの……(もはや意味不明)

【関連リンク】
《Pavane~リュートとギターに囲まれて》
京都での公演の様子。サイン会の写真が「ロベルタたん萌え~」な感じによく撮れています。

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コメント

 東京ではアンコールにモンテヴェルディもやったのですか。
京都は一曲だけで、その辺りはつのだ氏が仕切っているのでしょうか。

 マメちゃんはつのだ長老のおでこにキスしてましたな。

投稿: Pilgrim | 2010年3月15日 (月) 21時17分

アンコールは京都公演の様子を見て、増やしたんでしょうかね? こちらではリュートではなくてキタローネを使ってましたし。
京都の入りは半分だったとのことですが、満員御礼で補助席も出たくらいだったです。

つのだ氏は頬にもキスされてたかな(^^; もっとも、マメリがハイヒール脱いでもまだ彼女の方が背が高いような……

投稿: さわやか革命 | 2010年3月16日 (火) 07時25分

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» ロベルタ・マメリ&つのだたかし [オペラの夜]
<ディドーネの嘆き Lament di Didone> 2010年2月26日(金)19:00/青山音楽記念館バロックザール ソプラノ/ロベルタ・マメリ リュート/つのだたかし ジョヴァンニ・フェリーチェ・サンチェス(1600-79) 「Usurpator tiranno 他の男が暴君のように/Accenti queruli 嘆きの言葉を」 ジュリオ・カッチーニ(1551-1618)「Torna,deh torna 戻っておいで、坊や/ Amor ch'attendi 愛の神よ、何を待っているのか... [続きを読む]

受信: 2010年3月15日 (月) 21時04分

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