「カンタービレ様式の至芸」:リュートの音に過去・現在・未来を聴く
ラウフェンシュタイナーの音楽
演奏:佐藤豊彦
会場:近江楽堂
2010年4月9日
CD発売記念として行われたバロックリュート・リサイタル。
今回取り上げられた作曲家は現在のオーストリアにある町で1676年に生まれたヴォルフ・ヤコブ・ラウフェンシュタイナーである。正直言って、初めて名前を聞きました(^^; 当時のバイエルン公に仕えたそうだ。様々なジャンルの曲を作曲したが、現在ではほとんど残っていないとのこと。
そのラウフェンシュタイナーの組曲形式の独奏曲が演奏された。楽器はもちろん齢400歳の正真正銘オリジナル楽器「グライフ」である。リュート様のためにエアコンは切られ、さらには加湿器もしっかり稼働。さもなければたちまちにリュート様はベリッと壊れてしまい、修理屋行きなのだ。人間どもはひたすらガマンなのよ。
それにつけてもこの楽器、今回の作曲者の生年よりもさらに何十年も前に作られているのだ(元はルネサンスリュート)
佐藤豊彦の話によると、よい楽器というのは装飾も少なく繰り返し使われ続けるもので、やがていつか壊れて消えていってしまうのだという。従って、博物館に保存されているようなものは、そもそも貴族がポロンとたまに弾いてみたぐらいで、キレイで傷もないが、実際に演奏してみるとどうもあまりよくないとのこと。
その証拠に「グライフ」様は装飾のソの字もないぐらいに誠に地味~なお姿なのであった。
何年かおきに修理に出せば、代々使い続けていくことが可能であり、私がいなくなってもこのリュートは残ってずっと演奏され続けるんでしょうなあ--と佐藤師匠は感慨深げにそしてちょっと寂しげに「グライフ」様をナデナデしたのであった。
一体、作曲家も演奏者も聴き手も全て塵と化し忘れ去られた後も、楽器は残り聴かれ続ける--とはどういうことだろうか。
この夜、聴衆はその気分を味わった。ラウフェンシュタイナーの音楽は派手でもなく、華やかでもなく、名曲!と持ち上げるものではないが、まさしくそれが生きている時代を感じさせたのである。
【関連リンク】
《ガット・ギターと共に》
| 固定リンク | 0
コメント