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2010年4月13日 (火)

「ハート・ロッカー」:爆弾こそわが命

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監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー
米国2008年

うーむ、感想を書くのが難しい作品である。少なくとも「アカデミー賞獲得祝いbell」と言ってポップコーンとコーラ片手に見に行くような映画ではないことは確かだ。

軍の爆弾処理班の活動を淡々と追った擬似ドキュメンタリー風のタッチは、好戦映画ではないが反戦を訴えるわけではなく、退屈ではないが刺激的でもなく、兵士に肩入れしているようで実は突き放しているようにも見える。

視点は一貫して米軍兵士の側にあり、周囲にいるイラク人はみなテロリストのようで疑わしい。班の中で爆弾処理の作業をもっぱら行なう主人公はたまたま基地の前で商売をする少年を可愛がるが、実際には他の子供と顔の判別もできていない。
兵士はみなストレスを抱え、敵にやられる前に自己崩壊してしまいそうだ。

また、ある時は賞金稼ぎと共に砂漠でテロリストを狙撃する。しかし、敵を本当にせん滅できたのかどうかさえよく分からない。ダラーっと時間がただ流れるのみ。
このさりげなく現われた「賞金稼ぎ」はいわゆる軍事請負会社のメンバーだそうだ。いくら占領下とは言え、他所様の国でこんなことしてていいんかね……というような実情もさり気なく描かれる。

でも、これまた2時間超!で長過ぎる。特に、部屋の中で延々と殴り合いする場面は長くて退屈してしまった。いくら、ドキュメンタリー風たってさ。
もっとも、その室内場面でほとんどまともな照明を使ってなくて薄暗いのには驚いた。ここまでやるかっ、である。

さて、ラストをどう解釈すべきだろうか。兵士を誉め称えていると考える人もいるようだが、冒頭に「戦争は麻薬だ」という一文を引用しているからにはそうはとても思えない。むしろ、これはシニカルな笑いに満ちた場面で、観客はあの後ろ姿をどうしようもないなーと笑って見るのが本当のところだろう。
「自らの命をかける」こと自体が崇高であるとは限らない。病をわずらってもなお大酒を飲む者は自らの命を危険にさらしているが、決してほめられはしないのと同じである。
そして、マッタリと続く戦場の緊張の中でそんな「依存症」にはまり込んだ人間を描いたものと言える。

ラストはタイトルバックにミニストリーの曲が流れる。この歌詞も字幕で流して欲しかった。そうしたら、もう少し分かりやすかったかも知れない。

ところで、レイフ・ファインズやデヴィッド・モースなど有名な役者がチョイ役で出演していたとのこと。でも私には判別がつかなかった(後で確認)。情けなや~(@_@)トホホ

オスカー大量受賞はもしかして「J・キャメロンの喜ぶ姿を二度は見たくない」票が集まったというのもあったのかも--って言ったらダメ(^^?


監督男前度:9点
祝オスカー度:7点


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