「息もできない」:予告を作った奴を連れて来~い!
監督:ヤン・イクチュン
出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ
韓国2008年
予告に騙された!詐欺!!金返せ……とは言わんが、予備知識ナシだったのを予告見て行く気になった。だが、いざ実際見てみたら全然イメージが違っていたのは事実なのであ~る。
なんか予告はドトーのように進行する物語、みたいな感じだった。おまけに使われてた音楽はヴィヴァルディの『四季』だ!
だけどそんなんじゃなくて、最初の方は主人公のチンピラが仕事(借金取り立て)でふるう暴力がモッサリとしたテンポで描かれる。そこら辺は北野武作品を連想させた。おまけに、私は韓国語はほとんど知らないが、それでもかなりの(他の韓国作品では聞けないような)罵倒語が使われているようなのは分かった。映像もセリフもよい子には厳禁のものばかりだ。
音楽はノイズ・ギターを使ったミニマル系である。これはこれでいいけどさ(^=^;
主人公は父親の暴力で家庭を破壊され、そのために父親を憎悪している。ひょんなことから女子高生と知り合うが、彼女も実は家庭で大きな問題を抱えているのだ。
二人の関係は失われた家庭への「共感」であろうか、多分。
ありえない二人の結びつき--そういう意味では一種のファンタジーに近いとも言える。
主人公の父親への憎悪はあまりに強くて、もはや彼の一部--背骨に組み込まれているかのようだ。彼の根幹をなしているので、それなしには生きていけないのである。
しかし、そのような過去のいきさつを除けば、現在の彼は結構いい境遇にあると思うのだが、どうだろう。仕事こそ暴力的だが、社長兼彼の旧友は「もっとカネ集めてこいゴルァ」などと言ったりせずに、生暖かく見守ってくれているし、姉は「あんたのようなチンピラはウチの息子に悪影響与えるから近付かないでちょーだい」なんてことも言わない。職場の後輩は表向きはちゃんと礼儀正しく従ってくれる。おまけに、カワイイ女子高生とも知り合いだ。なんの文句があろうかっつーの(\_\;
だが、それでも彼は満足できないのだろう。そして彼の一部である憎悪が崩れた時、彼自身も倒れてしまうのである。
それにしても、新人でこれだけのものを作ってしまうとはかなりの才能だ さらに監督が脚本だけでなく、主役も演じているのにはビックリよ。来日時の写真なんか見ると、ヲタクっぽい映画青年みたいなんだけど……作中では目つきといい、ちょっと背中の曲げ方といい、チンピラ以外の何ものでもない。役者としても大したモンである。恐るべし韓国映画界だ。
今回は自分自身がかなり投影されているらしいが、次作がどうなるか期待したい。
難を言わせてもらえば、警官二人をぶち倒した主人公や、終盤の女子高生の弟がなんにもおとがめナシというのはちょっと納得できんな
それと、最近手ブレと顔のドアップ連続で2時間以上の映画ばかり見ているような気がする。もう勘弁して欲しい。
ところで、あの予告を作ったのは誰なのだろうか? うまく騙したそいつにも点数をあげたいぞ。
暴力度:9点
救いのなさ度:8点
| 固定リンク | 0
コメント