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2010年5月 3日 (月)

「カラヴァッジオ」:暗き影の巨匠

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監督:デレク・ジャーマン
出演:ナイジェル・テリー
イギリス1986年

先日観た『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』の評価がキビシクdownなってしまったのは、恐らくこの作品のせいだろう。
デレク・ジャーマンの映画で初めて観たものであり、さらにそれまで私はカラヴァッジョのカの字も知らなかったのだ。もっとも、この画家が再評価されてからそれほど歳月が経っていたわけではないので仕方ないかも--と弁解しておこう。

それにしても既に公開時より二十数年sandclock そんなに時間が経ってしまったとはとても信じられない。俄かに自分の歳を感じたりして( -o-) sigh...
本家イタリアの伝記映画を観たのを機会に、古いビデオを引っ張り出して再見した。

通常の伝記としてはかなり規格外れである。人物の服装は20世紀初めぐらい(?)のイタリアの田舎町風だ。さらに自動車(と言ってもクラシックカー)が登場し、町の雑踏にはバイクの音が聞こえ、豪奢な衣装をまとった枢機卿たちは金色のカード式電卓を優雅に叩いて美術作品の値ぶみをする。
ただし、仮装舞踏会の場面に限っては時代どおりのようだ。
もっとも、カラヴァッジョ(に限らないが)の宗教画でも、人物がそれぞれ異なった時代の衣装を着ていたりするのだから、別にこれは奇異なことではないとも言える。

映画は流浪の旅のさなかに熱病に倒れた寒村で、画家が過去を回想する形で始まる--ん?なんかイタリア版と同じじゃないのさthunder というより、向こうの方が真似したんかい(?_?;
道端で絵を描いては売っていた若い時代から、時間が行きつ戻りつ進むが、登場する作品は必ずしも実際の製作年と合致するわけではない。

注目すべきは、画家がカンバスに描いている絵は実物よりもややモダンで荒っぽいタッチなの対し、モデルたちの姿の方こそ完璧に彼の絵画が再現されていることである。さらにアトリエ以外の場面でも作品と同じ光景が何度も出現する。
実際に画集と見比べてみると(^^;細部が違っていたりするのだが、光線の射し具合といい色彩といい、作品と同じ世界を見ているような気分になるのだ。

当然D・ジャーマンの作品だからゲイ・テイストが全編に満ちあふれている。酒場で気を引かれた男を聖マタイの処刑人のモデルにするが、これを演じているのが今よりもずっと細いショーン・ビーンだ。若く美しく、そしてチンピラ~spaという感じで、当時もカラヴァッジョはこんな若者を町で拾って来てはモデルにしてたんかしらん、などと思ってしまう。また、男と闘う場面はイタリア版ではテニスだったが、こちらでは拳闘だ(ボクシングではなく、まさに「拳闘」というのがふさわしい野蛮さ)。
男の恋人がティルダ・スウィントン。これがやはり若い! 以前、最近の彼女が昔とほとんど変わっていないように見えると書いたが、この頃は若さがお肌全面からピカピカと照り輝いているかのようだ。やはり若さというのはいつか失われてしまうのね~heart03(何故かヨヨと泣き伏す)

高級娼婦となった彼女は急死し、その遺体をモデルに『聖母の死』を描く。そして彼は男を殺害して逃走する。
愛した女を殺され、愛した男を自ら殺した揚句、全てを失った漂泊の果てに「また一人になってしまった」と彼がもらす独白は非常に心を打つ。言葉にならない悲しみがひたひたと押し寄せて来るようだ。
さらにカラヴァッジョの臨終の場面は圧倒的な迫力をもって描かれる。土地の実際の風習なのかは知らないが、巨大な蝋燭を持った村人たちが寝台の脇で彼を送るのだ。

エピソードの多くはジャーマンが作品や事件から想像したもので、正確な伝記映画にはほど遠いだろうが、亡くなった時の状態はイタリア版よりもこちらの方が実際に近いそうである(別に船から投げ捨てられたわけではないのよ(^^;)。
他にも音楽面ではデル・モンテ枢機卿がヴァージナルらしき楽器を弾いている場面もあるし、背景にはリュートやチェンバロの音が流れる(サイモン・フィッシャー・ターナーが音楽--というより「音」を担当)。それから『リュート弾き』に描かれている楽譜(アルカデルトの曲とのこと)についても言及されている。

今回再見してみて感じたのは、何気ない小物--コイン、机の上に広げられた布、絵筆、アクセサリーなどが実に細心をもって映し出されていることである。まるで、丹念に描かれた静物画のように。何一つ無駄なものはない。そして指や手を捉える繊細なタッチ。肖像画家が顔と同等に手の表情を念入りに描き出すのを連想させる。

公開時のパンフを物置から取り出すのは大変なので、代わりにサントラ盤を引っ張り出してみた。ジャケット裏にジャーマン自身による解説文が載っていて、そこではカラヴァッジョのことを「暗き影の巨匠」と紹介している。よく言われる「光と影」ではないのだ。
思えば、彼の絵画は美しいというよりはむしろいかがわしく俗っぽく醜悪なイメージも受ける。そして光ではなく影をこそ描いたという主張はジャーマンの映像の中に正しく表現されているのである。


なお、タイトルロールを演じているのはジャーマン作品の常連のナイジェル・テリーだが、これがまた(^Q^)ヘッヘッヘッ(恒例の下卑た笑い)カコエエです。他には『エクスカリバー』や『冬のライオン』が印象に残っているかな。
しばらく前にミステリ・チャンネルでやってた「法医学捜査班」という連続ドラマの第1回目に出演していたが、さすがに老けていたのよ(v_v)

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←このヴィジュアルに圧倒される。


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