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2010年7月17日 (土)

「ジョングルール--音の旅びと」:まぼろしの楽師たち

100717
中世ヨーロッパの放浪楽師
演奏:ジョングルール・ボン・ミュジシャン
会場:絵本塾ホール
2010年7月11日

中世楽師の扮装をして当時の音楽を奏でる四人組は、今はなき目白バ・ロック祭りで聴いたが、その後は公演の中心がライヴハウスなのでなかなか行けず、今回小ホールでやるというので行ってみた。なんでも、満員御礼で予備椅子まで出たそうである。

冒頭、イチローにちょこっと似たヴォーカルの辻康介が登場して、木製ブブゼラみたいな楽器(名称不明)を吹いて開幕を告げた。続いて、「聖母マリアのカンティガ」や「カルミナ・ブラーナ」などから当時の放浪楽師たちの痕跡を留める12-13世紀の曲を中心に演奏された。

歌ものは日本語の歌詞や語りが入るのでユーモラスな内容がよく分かって、会場の笑いを誘う。「躍り出たステーキ」という曲ではなんと実際にステーキが宙を舞ったりした(^o^;

放浪楽師は音楽だけでなく「語り」も演じたということで、グリム兄弟の「ハリネズミのハンス」なんてのもやった。
また宮廷で吟遊詩人の伴奏をやることもあったらしい。彼らの作品が3曲歌われたが、ギロー・ド・ボルネイユの「栄光の王」で上田美佐子が弾くフィドルの嫋々たる音色には驚き、かつ引き付けられた。こんなフィドルは初めてだー(!o!)と断固言いたい。

歌なしの舞曲もよかった。使われた楽器は他にハーディ・ガーディ、バグパイプ、ハープ、鍋など。リーダーの近藤治夫は何種類ものバグパイプを取っかえひっかえしていた。中には動物の毛がフサフサ生えているのもあって触ってみたくなってしまったぞ。

当時の放浪楽師たちの世界の一端を垣間見る(聴く)ことができたコンサートで楽しかった。これからもライヴハウスでが中心らしいが、中央線沿線はちょっと行きにくいんだよねー。できれば○○線とか××線沿線ならいいんだけど。もっとも、××線にライヴハウスなんてものがどれほど存在するのか極めてアヤシイ(^○^)
ただ、ここでも楽器の保護のためエアコンをガンガン効かしていてこれにはマイッタ。音楽聞くのも命がけである

なお、近藤氏がプログラムの解説にちょっと過激なことを書いてしまった--などと言ってたので、何かと思ったら「宗教音楽や宮廷音楽だけが当時の音楽ではない」という意味のことなんだろうか。
確かに庶民が酒場や祭でどんな歌を歌い音楽を聴いていたのか、などというのは記録に残っていないのだから知りようがない。知りようがなくても存在しなかったわけではない。
だが、例え楽譜が残っていても当時どのように演奏されたのかは本当のところは不明である。現代の人間はその怪しげな断片をかろうじて耳にしているに過ぎない。
記録が残っていようといまいと当時の地位がなんであろうと、それを蘇らせるのは現在に生きる演奏家である。それに期待したい。「音楽に貴賎なし」ですよ(^_-)☆


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