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2010年7月20日 (火)

「ザ・ロード」:太った略奪者よりも痩せたホームレスになれ

100720
監督:ジョン・ヒルコート
出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー
音楽: ニック・ケイヴ
米国2009年

「暗い、暗いな……」見ている間中、ずーっと心の中でつぶやいていた。それぐらい暗い。道理で沢木耕太郎が朝日新聞で紹介したにもかかわらず、空席が目立つはずである。

原因は明示されないが、突然の天変地異によって滅亡した世界。生き残った人間には二つの道しかない。主のいなくなった建物の中を漁って加工食品や飲料を漁る「ホームレス」か、銃を持って人を襲いついでに食っちまう「略奪者」である。まさに弱肉強食の世界だー
主人公の父と少年は、陽光のささぬ厚い雲に覆われた荒廃した世界を、暖かさを求めて南へ歩く。息子が元気な悪ガキならまだしも、自死した妻によく似た(実際に母親役のシャーリーズ・セロンにクリソツ)繊細な子どもである。このままでは、とーちゃんはお迎えの時が来ても、死んでも死に切れねえ(T^T)クーッ

基本的には父と子、二人だけの描写がほとんどを占める。しかも、ラスト・クレジットを見て一人を除いて人物に名前がないことに気付いて驚かされる。
さらに終末の世界のヴィジュアルは圧倒的ではあるが、灰色のドヨ~ンとした光景ばかりで(回想を除く)、どうしても単調に感じざるを得ない。睡眠不足の時に観たら、主人公たちと一緒に寝てしまいそうだ。
その単調さを払拭するためか、前半はスプラッタ・ホラーもどきの描写が出てきて閉口した。ピュリッツァー賞受賞という原作(『ノーカントリー』の作者でもあるC・マッカーシーの小説)もこんなんなのかね。

後半では他者が登場して会話を交わす。そして父子の齟齬--。人形を抱えていた少年は全く別のものを手にして終盤を迎える。この物語の意図は明らかだろう。
エンド・クレジットのバックに流れる「音」は少年が「善き者」に出会い平穏を手に入れた証しだろうか。でなければ、彼が決して体験できない過去の平和な時代のものとも考えられる。

もっとも自分を顧みると、例え世界の終末が訪れたとしても、私には「善き者」と「悪しき者」など見分けることは出来そうにない。せいぜい「強き者」と「弱き者」ぐらいだろう。あ、それだったら現在の日本で十分に見分けられるか((>y<;)

結局のところ、個々では印象的な場面が幾つもあるが、全体的にはどうも好きになれない作品だった。
よれよれ父親のヴィゴ・モーテンセンや美少年な子役は達者なものである。音楽はニック・ケイヴ担当。


終末度:9点
善人度:6点


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