「終着駅 トルストイ最後の旅」:秘書は見た!「悪妻」の真実を
監督:マイケル・ホフマン
出演:ヘレン・ミレン、クリストファー・プラマー
ドイツ・ロシア2009年
ご存じでしょうか?世界三大「悪妻」なるものがあるそうです。誰かというと、ソクラテス、モーツァルト、そしてトルストイ--の妻とのこと。
しかし不思議ではありませんか 悪妻が存在するのなら「悪夫」だってあっていいはずですが、そういう言葉はありません。この理由は「悪い夫なんてものはいまだかつて存在したことがない」か、または「夫とはそもそも悪いものである」のどちらかでしょう。
これを翻って考えてみると「悪妻」なる概念があるからには「妻とはそもそも善良なるものである」と同時に「悪い妻が実際に存在する」ということになります。
さてこの映画、ロシアの文豪トルストイの晩年を、その悪名高き妻と共に描いたものであります。観客と共にそれを目撃するのは、尊敬するトルストイ先生の秘書に新規採用されたばかりの青年秘書という次第。
しかしここで、私はブログ読者の皆さんに恥を忍んで告白しなければなりません。
トルストイって一冊も読んだことないんです~う(>O<)ギャーッ
しかも彼の思想の支持者がトルストイ協会なんてので活動して、「村」まで作って実践していたとは知りませんでした。さらに、その思想が時代を先取りしていたのには驚きであります(!o!) なにせ「愛と自由」にエコロジー
に著作権フリー
なのです。
青年秘書は彼の屋敷で過ごすうちに、信奉者たちが作り上げたトルストイ像とは違う、もっと人間臭~い実像を知ることになります。そして、協会と対立する妻ソフィヤのことも……。
18歳でヨメ入りして以来、なんと13人もの子を産み、加えて『戦争と平和』を六回も清書したとあっては、この再生産労働の対価を求める事は妻にとって当然でありましょう。ケッなーにが著作権フリーよ(*`ε´*)ノ☆と言いたくなるのも仕方ありません。
それに、夫婦の問題ってのは他人が口を挟めるもんじゃないですよね。とりわけ、ウン十年もの結婚生活においては。
前半は、信奉者が絡んだこの老夫婦の愛憎と、ウブな青年秘書の恋が平行して描かれます。そして後半はいよいよトルストイ最期の「家出」へと突入。そこでも確執が描かれながらも感動のラストとなります。
エンド・クレジットに当時のトルストイたち実物の映像が流れるのにはまたビックリでした。
やはり見どころはなんと言っても、ヘレン・ミレンの「悪妻」ぶりでしょう。いえ、それどころかヒステリックな妻、誇り高い伯爵夫人、冷酷な母親、かわいいヨメ……一人の人間に潜む様々な面を矛盾することなく演じているのは見事としか言いようがありません。もっとも、エリザベス現女王を演じてオスカーを獲得している彼女にとっては、難しいことではなかったかも知れませんね。
相方のクリストファー・プラマーも人間味たっぷりに文豪を演じております。さらに演技派P・ジアマッティにも囲まれているとなると、まだ若手のジェームズ・マカヴォイ君はちと分が悪いですが、若いモンが尊敬する先生に対面するドキドキぶりをうまく表現していたと言えるでしょう。
ただ、役者たちの演技に比べて作品全体の印象は、良くも悪くも夫婦50割引で観るにふさわしい内容というものでした。オスカー候補になったのが俳優だけというのが納得できるというものです。
ところで、最大の謎は製作国にロシアが入っているのに、英米の役者を使って英語のセリフで撮っていることです。なんで(?_?) 往年のソ連映画の伝統は失われちゃってるんでしょうかねえ。日本だったら夏目漱石の伝記映画を海外で作るみたいなもんだと思うんですが……。
で、結論としては--これからちゃんと『戦争と平和』読みます 『まんがで読破』シリーズで、ですけど(-_*)\ペチッ
恐妻度:9点
文豪度:8点
| 固定リンク | 0
コメント