「旅する楽士~時をこえて西へ東へ」:古い洋館にあやしいオバサン出没
演奏:チパンゴ・コンソート
会場:旧古河庭園・洋館
2010年11月20日
チパンゴ・コンソートは「イタリアの偉大なアーティスト、エンリコ・オノフリ氏の命名により2007年に発足」したというグループ。
リーダーの杉田せつ子は5年前まではモダン・ヴァイオリンをやっていたが、オノフリに出会って古楽へ転向したという経歴の持ち主らしい。
この日は彼らの得意技イタリアものに加え、「邦楽界のプリンス」こと尺八の藤原道山をスペシャル・ゲストに招いて共演という趣向である。
他のメンバーはチェロの懸田貴嗣、チェンバロ桑形亜樹子だった。
この季節にしてはポカポカと暖かい日で、洋館の一室には日が差してちょうどいい気候である。
杉田女史はオノフリを師と仰ぐだけあって、楽器を首に巻いたスカーフで止める方式を採用。オノフリ以外にこの方式をやっている人を見たのは初めてだ。でも、見る度に疑問なんだけどツルッと手がすべったりしたら楽器の重さで首が締まったりしないのかしらんなんて思っちゃう(^=^;
最初から彼女はウッチェリーニやカステッロの激しい曲を激烈に弾きまくった。
途中より藤原道山が登場して、バッサーノやカステッロのソナタを共演した。ここでの尺八の音はひなびたトラヴェルソみたいな印象だった。
古楽器とやるのは初めてらしいが、モダンのピアノやチェロとはグループを組んだりして西洋音楽は既にやっているらしいので、ほとんど違和感はなく耳になじんで聞けた。もっとも、これは奏者の腕前も関係あるだろう。
曲間のトークでは、西洋の古楽器同様に和楽器も時代によって変化して来たという。例えば琴の糸は昔は絹を使っていたが、今は合繊だとか。
そして今回最大のききもの八橋検校の「六段」は、尺八パートは原曲通りに吹き、その他のパートを道山氏が新たに付け加えるという意欲的な試みだった。ただ、追加パート自体は別にバロックの修辞で書かれているわけではないので、「六段」の成立時代が初期バロックと同じということはあっても、ある部分は現代音楽っぽく、またある部分は時代劇映画の劇伴音楽のように聞こえたのは仕方ない。
ラストのコレッリ「ラ・フォリア」はまた三人での演奏だったが、これまた杉田女史の演奏は激越だった。これまでこの曲の色んな人の演奏を聞いてきたが、ここまで激しいのは他にないというぐらい。ただし、だからこそ聴く人を選んじゃうかも
演奏よりも驚いちゃったのは客について。9割が中高年の女性である(!o!) 1割を占める男性もほとんど白髪頭で、黒い頭の人(^^;にいたっては二、三人しかいなかった どうもバロック系ファンより道山氏のファンが大半だったようで、だいぶ勝手が違った。
なにせ、杉田女史にしても道山氏との一曲が終わって「わたくしが一番近くで聞けてウットリしてしまいましたわ~」(←演奏とは正反対におっとりした喋り方)みたいなことを喋ると、周囲の客席のオバサマ方がウンウン(’’)(..)(’’)(..)と頷くという状況であったのだ。
しかしっ古楽ファンの私としては、やはり尺八のプリンスよりも古楽界の未来を背負って立つホープを断固支持したいのであ~る(・∀・)b
というわけで、私はチェロの懸田氏の背後方向の座席に座り、後ろから覗きこむようにして「カケタン、がんばれ~」と念波を送っていたのであった。なに(?_?;そりゃあやしいオバサンだって? ほっとけ(`´メ)
終了後は庭園のバラを観賞。ただ季節的に遅いのと、さすがに日が傾いて寒くなってきたので早々に退散した。
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