「最後の音楽」
著者:イアン・ランキン
早川書房2010年(ポケットミステリ)
長く続くシリーズの小説の登場人物には二種類のパターンがある。
一つはリアルタイムでの時間の流れに関係なく、『サザエさん』のように同じ年齢で歳をとらないもの。ただ、これだと人物の背景や経歴が現実と合わなくなってきてしまう。かつて読んでいた米国製ハードボイルド・ミステリでは主人公が「朝鮮戦争帰り」から、いつのまにか「ベトナム帰り」に変わっていたことがあった。
もう一つは現実に合わせて人物も歳をとっていく。これだと整合性はあるが、長く続くと70歳になってもアクション物のヒーローができるかという問題が起こる。
さて、スコットランド警察の警部であるジョン・リーバスを主人公にしたこのシリーズ、後者の方のパターンである。
で、二十年前の第一作では部長刑事であった彼は、本作では遂にめでたく定年退職を迎えた。最終作は彼の最後の十日間を描く。ちゃんと警察の「営業日」十日分で章立てされている(^^;
なにせもう最後で退職日をひかえて寂しいリーバスは頑張って、単に強盗殺人で行きずりの犯行かと思われた事件を強引に「何かあるっ」と大ごとにしてしまうのであった。
続いて起こる事件?事故?陰謀……と複数の謎が絡んで行くのはいつもどおり。あるものはさらに謎へと、またあるものは意外な結論へ、あるいは肩すかしに収斂していくのだった。
当然、彼の宿敵マフィアのカファティも登場するが、途中で予想外の展開に これには読んでいて本当に驚いた。
しかし、これで終わりですか。私も寂しいっ(;_;)
同じ作者の新しいシリーズも是非訳して欲しい。あっ(!o!)その前に未訳のリーバスものが先か
このシリーズについては、最初に訳されたのが途中の7作目の『黒と青』で、またこれがどちらかというと、他の作品とは異なるカラー(過去のシリアル・キラー事件を探る)なのであった。しかも、その後もハードカバーになったり、ポケミスに戻ったり判型も色々だ こういう事はハヤカワでは結構あるような。なんとかしてくれい。
それから、これまで主人公リーバスの容貌についてはほとんど記述がないのが謎だった。M・コナリーのボッシュもあまり外見が分からないが、リーバスほどではない。これまで大柄でメタボ体型らしき描写はあったけど、今回ははっきりデブの大男いうのが分かった。
最後にこういう風に描写を出してきた--というのは、もしかして、映像化の際にはヴィンセント・ドノフリオをご指名するつもりか(@∀@)なんて勘繰っちゃうぞ。
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