「冬のライオン」:野蛮なる時代の野蛮な芝居
監督:アンソニー・ハーヴェイ
出演:ピーター・オトゥール、キャサリン・ヘプバーン
英国1968年
*DVD
「ロビン・フッド」を見た時に「冬のライオン」を見たくなったと書いたのだが、我がビデオ&DVD棚をゴソゴソ漁ってみたら、なんと未開封のDVDが出てきたではないか!
入手できなくなると困ると思って買うだけ買ってあったらしい……自分で忘れちゃってたのよ(^^ゞ
この作品、もともとは芝居だったらしい。作者本人が映画の脚本も担当している。
中心人物は「ロビン・フッド」でも登場したリチャード獅子心王とジョン王の母エレナー王妃(アリエノールとかエレアノールとか読み方色々あり)、そして父ヘンリー2世である。
この二人の結婚はフランスの半分とイングランドを占める広大な領地をもたらしたそうな。(←『スキャンダルの世界史』の受け売り)
そうなると次の王様は誰にするか(@_@;)というのが大問題。しかも、王妃はなんと軍を起こして王に反乱したかどで十年にも渡り幽閉中だ
そんな中、クリスマスということで王妃と三人の王子、さらに若いフランス王も城に来て一堂に会するのであった。
ここでエレナーが船に乗って川岸の城に現れる光景が非常に鮮やかで美しい。
三人の王子--リチャードは豪胆かつ勇猛のはずだがその実は脆弱、ジェフリーは陰湿な策謀家、ジョンは猜疑心に満ちた愚か者、と一癖ある者ばかりなのだが、その彼らが「怪物」と呼んで憎んでいるのが他ならぬ父母のヘンリーとエレナーであった。
彼らの周囲には不義密通、近親相姦、謀殺、男色などなんでもあり。互いにそそのかし合い、騙し、かつ裏切りながら、何事もなかったかのように振る舞っている。
12世紀となればまだまだ野蛮な時代、たとえそれが王侯貴族であってもだ。国王たちが城の前に出て挨拶するのにニワトリやら犬を蹴散らして出てくるのには笑ってしまった。歴史ものとしては『バリー・リンドン』以前に、当時の王族の世界をリアルに描いたとして評判になったという記憶がある。
キャサリン・ヘップバーンとピーター・オトゥールはその野蛮な時代の怪物的な夫婦を文字通り怪演している。数十年にもわたり愛憎半ばする二人の関係は寝台の中で抱き合いながら互いに剣を突き付けあっているようなもんだろう。
役の上では二人は11歳違いだが、実際には25歳の差があった。
ヘップバーンはこの作品で三つ目のアカデミー主演女優賞を獲得した。一番印象に残るのは二人の兵士が殺しあうのを冷酷な無表情で見守る場面。コワすぎです……(>y<;)
P・オトゥールはやはりこの時もノミネートのみで主演男優賞を逃した。どうすりゃエエんだよ(*`ε´*)ノ☆ってなもんだろう。
一方、アンソニー・ホプキンスはP・オトゥールとは現実には5歳しか離れてなかったが息子のリチャード役だ。ジョン王子には後に「エクスカリバー」主演やデレク・ジャーマン作品の常連だったナイジェル・テリー。実に陰険でさえない若者をうまく演じている。
それからフランス王役のティモシー・ダルトンは、まだ若くてピカピカしていて驚くほどの美しさよ。背中に花やら星を背負っているようだ。
このように曲者揃いが140分弱の間、火花を散らし合って手に汗握る迫力。目を離すことができない。
先日亡くなったジョン・バリーが音楽を担当、オスカーの作曲賞を受賞している。「007」シリーズのジャズっぽい作風から一転して、合唱を使った重々しくクラシカルな曲調だ。特に王が剣を振り上げる場面で呪詛のようなコーラスが入るのが禍々しい。亡くなった時にまだ七十歳台だったのが意外である。若い頃から活躍してたのねー。
さて、冒頭でジェフリーが指揮する海岸の戦闘場面は「ロビン・フッド」が参考にしたのではないかというぐらいに似ている。もっとも、こちらの方はカッコ良さなど微塵もない殺し合いであるが。
ということで「ロビン・フッド」を見た方に是非オススメ--はしません(^O^)
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