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2011年2月22日 (火)

「ウッドストックがやってくる!」:騒然かつ呑気な時代であったよ

110222
監督:アン・リー
出演:ディミトリ・マーティン
米国2009年

『ブロークバック・マウンテン』の次には、日本占領下の上海を舞台にしたマタ・ハリもの(?)『ラスト、コーション』を作ったアン・リー監督。最新作のネタはなんとあのウッドストック・フェスティバルである。なぜに今さらウッドストック(@_@;)
--と思ったが、実際に原作となった回想録が出ているらしい。

主人公は開催場所が宙に浮いてしまったフェスティバルをひょんなことから地元に誘致した若者である(つまり、実際の開催地は「ウッドストック」ではないのだ)。その町の半分死んだような田舎ぶりたるやタダ物ではない。40年後の日本のローカルな過疎化を先取りしたようだ。そんな町でなお彼の老いた両親は頑固におんぼろモーテルを経営していたのであった。
そこへイッキに巨大イベントが降ってわいたのだから大変だ~ そのテンヤワンヤ振りを裏方の立場から一貫して描く。従って、フェス自体はほとんど出て来ない。ありゃ、遠くから聞こえてくるはジャニスかジミヘンかってなもん。

人と金が動けば欲望もまた喚起される。実際には相当ドロドロしたトラブルがあったのではないかと思うが、あくまでノホホンとした感じで綴られる。ノホホンが過ぎてゆるい所まで行ってる気もするが、監督の描きたかったのはそういうドロドロの部分じゃなかったのだろう。
一方で、開催時に押し寄せた人・車などその物量の再現振りは大したもん。田舎道を埋め尽くしたヒッピー達に当時のバイクや自動車、さらにはコンサート・フィルムでお馴染み泥すべり場面、主人公がLSDで完全にラりるところ、そして終了後のゴミだらけの会場まで……。昔懐かしの分割画面も復活だいっ(*^^)v
ここまで徹底してると、エキストラの数とか小道具大道具でとても予算と収益が引き合わなかったのではないかと心配になっちゃったりして 余計なお世話ですが。

新たな世界に触れた主人公は、ゲイであることを自覚し、さらに故郷と両親から離れる決意をする。ここに至ってどうしてアン・リーがこの話を取り上げたのかようやく分かったのであった。

登場する周囲の人物がみな存在感あるのには感心した。もちろんそれだけの役者を使ってるからだろうけど。
ヘリコプターで突然出現し混乱した現場を馬に乗って移動する主催者マイケル(演じてるジョナサン・グロフは新人とのことでビックリ)は超然としたイメージが非常に印象に残る。主人公にLSDを進めるヒッピー男はポール・ダノ。ベトナム帰りで後遺症に悩む旧友はエミール・ハーシュだ。
それから朝鮮戦争帰りの大柄な「おねーさま」のヴィルマがス・テ・キ(*^_^*)ポッ どこかで見た顔だなーと思ってたらなんとリーヴ・シュレイバーだった。私もピンクのドレスが似合う女になりたかったわん もう今からじゃ遅いがな。

しかし、一番キョーレツなのはなんと言っても母親だ。色んな映画のキャラクターで強烈なのは一杯いるが、いずれも現実離れしているのがほとんど。しかし、この母親は強烈かつ、どこにでもいそうなのがスゴイ。私は自分の祖母を思い出しましたよ。
で「イメルダ・スタウントンにちょっと似てるけど違う女優さんだよなあ」と思ってたら、やっぱり本物のイメルダ・スタウントンだった(火暴) それほどに完全にどーしようもない頑固な田舎モンのオバサンになり切っていた……。恐るべし

あ、ついでに邪魔なボカシが入ってなかったのも良かったですう(^^)


ところで、ウッドストック・フェスの頃は私は小学生だった。もちろん、リアルタイムではそんなイベントがあったことなど知らない。というか、日本でどの程度報道されてたか怪しいものだ。映画に主人公の両親がTVで初の月面着陸を熱心に見ている場面が出てくるが、こちらの方はハッキリ覚えている。もちろん日本でも中継されていた。
長いことウッドストックは名前のみ知る--であった。実際に映像を見られたのは、ずっと後に記録映画が再公開されてからだ。ライヴを収録したアルバムは出ていたが、確か3枚組だか4枚組。とても学生には買えん。もっとも日本盤が出ているだけマシ。モンタレー・ポップ・フェス(ジミ・ヘンドリックスがギターを燃やした)なんて輸入盤を必死こいて探したもんよ(~_~メ)


お祭り度:7点
鬼母度:9点


【関連リンク】
《BRUIT BLANC》
原作を読んでた人の感想。私が見た時は若い人がほとんどだったが(?_?) 私より年上そうなのは一人か二人しかいなかった。

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