「トゥルー・グリット」:少女の夢は荒野に開く
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:ジェフ・ブリッジス
米国2010年
なんだかどうも変な映画だな~と思いながら見ていた。
終盤でとなり、さらにエピローグの部分に至っては、そう来たのかー、ありゃオドロキよ(@_@;)となってしまった。
ジョン・ウェインがオスカーをようやく獲得した西部劇「勇気ある追跡」(見てない)のリメイク--というか、同じ原作を映画化ということでてっきり正統派西部劇かと思ってたらどうも違ったようである。
主人公の少女が異様にこましゃくれている。大人たちと対等に渡り合ったかと思うと、酔いどれの保安官を雇って父親を殺したならず者の追跡の旅に出る。
しかし、J・ブリッジスの保安官にしても同行するテキサス・レンジャー(マット・デイモン)にしても妙に人物描写の輪郭が曖昧である。なんだか紗の幕を通して眺めているようだ。
それから終わり近くで少女を保安官が運ぶ場面もなんか変。なんであんなギックリ腰になりそうなことするかなーと判然としない気分だった。
それに少女が悪人たちが捕まるという展開だと当然予想される「へっへっへっ(^Q^)可愛い娘っ子じゃねえか→落花狼藉、あわや貞操の危機」な定番の場面が出て来ないのも謎である。
しかし、《映画生活》の議論(ネタバレの方なので未見の人は見ないように)を読んでようやくその変な部分が分かったような気がした。フロイト風の性的暗喩や少女のロマンス願望として見れば、これは正しく男たちではなく少女が主人公の物語なのである。
だから、J・ブローリン扮する父親の仇も含めて男たちの描写が今一つ曖昧なのも納得だ。全ては彼女の願望の影に過ぎないのだ。
とすれば、保安官が彼女を運ぶ場面は、なるほど「お姫様抱っこ」に他ならないのである。少女の夢ですかね~(^_^;
それと「狩人の夜」からの引用があると指摘されているが、リリアン・ギッシュが子どもを運ぶ場面をなぞっているとも考えられる。
とはいえいくら変な映画だと言っても、「狩人の夜」のような怪作・奇作にして何十年も後に評価される傑作になるかどうかというと甚だアヤシイのであった。
さて、アカデミー賞で10部門ノミネートされて一つも獲得できなかったとして話題になったわけだが、敵が多過ぎたというか今イチ決め手に欠けたのか。
ヘイリー・スタインフェルドの助演女優賞(「主演」にしなかった経緯も色々あったようで)と、またも取れなかった撮影賞のロジャー・ディーキンスはご苦労さんですかね。
スタインフェルドについては、冷静で大人ぶった面に対しレンジャー男に懇願する場面では妙に色気があってドキドキしてしまった。ノミネートは伊達じゃないってことか。
ジェフ・ブリッジスは前年に貰ったからもういいじゃろう(^0_0^)
西部劇度:5点
怪しさ度:7点
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